【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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「明、夏休みいつ取るんだよ？」



人事部の部屋の中で剛士に聞かれた。
“夏休み”という響きにはドキリとした。
昔は大好きな響きだった“夏休み”。



子どもの頃は学校での勉強はしなくていいし、大好きなきょうだいは家にいることも増える。
そして、二十歳になったら大学の授業や課題や試験を気にすることなく思う存分ゲイバーで働けた。



それに・・・
オーシャンがゲイバーで初めて、閉店後に残ってくれた日が“オーシャンの夏休み”だった。
“夏休みだから時間がある”と言って。



“オーシャン”と・・・“ひろみ”と初めて2人きりになれた時だった。



そんなことを思い出しながら、自分のスケジュールをパソコンで見ていく。



「8月の終わり頃に取ろうかな～！！
剛士どうするの～！？」



「出産予定日付近で取りたいけどな。
そこで絶対に産まれるわけじゃねーから、どうしようかなと思ってるんだよ。」



「産休ギリギリまで働いたよね？
身体大丈夫なの～？」



「今のところ元気だな。
むしろ、会社の社員達の心配してたな。
夏休み少し時間あったらこっちの家来いよ。
あいつも明に会いたがってるしな。」



「分かった～！！
あたしも会いたいし行く～！！！」



剛士の奥さんにあたしも会いたいので、夏休みは8月の終わり頃に取ろうと決めた。
それ以外は特にこれといって予定はない・・・。



時間がある。
“夏休みは時間がある”・・・。



“ひろみ”もこんな感じだったから、あの日ゲイバーの閉店後に残ってくれたのだと思った。



“夏休み”で、“木葉”にソックリで真っ黒なドレスを着た美しい“男”が・・・“ゲイ”がいたから・・・。