【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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扉の所、あと1歩で店の外に出られる所でオーシャンがそんなことを言った。
それには驚きオーシャンを見上げると、いつものように優しい顔で穏やかな空気・・・。



「俺も木葉も、お互いの名前は死ぬまで忘れないはずだから。
それに、死んだ後もきっと他の同級生達が話題にしてくれる。
だから次にまた会うのは、俺の葬式か木葉の葬式の時に。
その時にまた、会おう。」



「なにそれ・・・？」



「俺は“ゲイ”だからね。
“ゲイ”は同級生や“男友達”とは疎遠になるんだよ。」



オーシャンがそんなことを言ったと思ったら・・・



オーシャンとあたしの間にあった空気が動き・・・



一瞬・・・



本当に一瞬・・・



まるで空気が触れたくらい・・・



それくらい一瞬だけ、オーシャンの唇があたしの唇に触れた・・・。



それに驚き固まっていると、オーシャン自身も驚いた顔と空気をしていて・・・困ったように笑った。



「ごめんね、ミスした。」



「ミス・・・？」



あたしが聞いたら、オーシャンは困った顔で笑いながら少しだけ無言になり・・・




「俺は、木葉が好きなんだ。
高校1年生の時からずっと好きで・・・今も好きなんだ。」



オーシャンがそう言った。
いつもみたいな顔ではなくて、初めて見る顔で・・・。
切なそうな、苦しそうな、悲しそうな顔で・・・。
それでも、好きで好きで・・・大好きという顔で・・・。
そんな空気で・・・。



こんなに表情豊かに、色んな空気を出すのは“オーシャン”だった。
高校生の“オーシャン”もこんな感じだった。



ゲイバーにいた時のオーシャンは“ひろみ”なのだと思った。



優しい顔で穏やかな空気が一定だった。



“オーシャン”は・・・



“オーシャン”は・・・



あたしのお兄ちゃんのことが好きだった・・・。



それが分かって、再会してからの全てがやっと分かった・・・。