【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

4

4-19

そして、驚いた・・・。



「すっっっごい似合うんですけど～・・・」



ゲイバーの更衣室の中、ピカピカに磨かれた鏡の中にいたのは美しい“男”だった。
どこをどう見ても美しい・・・美しすぎる男だった・・・。



胸の谷間はちゃんと隠れるデザイン。
肩も出ているし胸やくびれだって分かるようなシュッとしたロングドレス・・・。



なのに、どこをどう見ても美しすぎる“男”に見えた・・・。



でも・・・



でも・・・



これは、きっと・・・



「女の空気を出しても似合いそう・・・」



そう思ってしまうくらい、この真っ黒なロングドレスは“あたし”を美しくさせてしまった。



どうしても見てみたくて・・・。



どうしても、どうしても・・・



“女”の自分が見たくなってしまった・・・。



今は“ゲイ”だと分かったオーシャンと再会出来たから男みたいな顔でよかったと思っているけど、あたしは本当は“女の子”になりたかったから。



お姉ちゃんや“アヤメ”のような可愛い“女の子”になりたかったから。



少し前までのその気持ちを思い出してしまって・・・



あたしは・・・



“男”の空気を消した・・・。



そして、鏡の中にいる自分に自然と大きな笑顔になってしまった。



男みたいな顔だけど、そこには綺麗な“女”が映っていたから。



こんな男みたいな顔だけど、男の空気を消したらあたしは綺麗な“女”らしい。
その事実を人生で初めて知り、少し安心した。
少しだけ、安心した・・・。



そしてまた、“男”の空気を纏う。



あたしはオーシャンに・・・“ひろみ”にいくから。



“ゲイ”だという“ひろみ”にいくから・・・。



この“男”である空気を纏ったあたしは“ゲイ”になる・・・。



お姉ちゃんからプレゼントされた真っ黒なドレスは“あたし”を本当に美しくさせた。



そんなドレスを身に纏い、あたしは今日から“ゲイ”になる。



やっぱり心の中にだけ“女”を残して・・・。



あたしは“ゲイ”になって、“ひろみ”にいく・・・。