【完】この夏、人生で初めて海にいく(カットページ掲載済2023.5.30)

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「ごめんね、怖い感じで話してたね。」



オーシャンが少し焦りながらあたしに謝るのであたしは笑った。



「“友達”にはどんな姿を見せてもいいんだよ！！
それでも離れていかないのが“友達”なんだから！！」



あたしのお兄ちゃんともう会えなくて、連絡出来なくなってしまったオーシャンにそう言った。
離れてしまったということは、あたしのお兄ちゃんとオーシャンは“友達”ではなかったから。



“あたしのお兄ちゃんの友達”ではなかったから。



「あたしは女だけど、お兄ちゃんに顔はソックリだから！！
“アヤメ”を守るために男の空気を纏ってたから、その空気はもう纏えないけど。
見た目も空気も心も女になっちゃったけど、あたしはオーシャンの“友達”！！」



「木葉と顔は似てるよね。
でも、明ちゃんは女の子だから。
明ちゃんは昔から可愛い女の子だったよ。」



オーシャンがそう言ってくれたけど、あたしは悲しくなった。
可愛い女の子ではないけど、綺麗な女の人になれたと思っていた自分が悲しくなった。



「あたし、男に生まれればよかった。」



そしたら、すぐにでもオーシャンを救えた。
こんなに死んでしまいそうになっているオーシャンを救えた。



可愛い女の子ではなくて、あたしは“男”になりたかった。



それが無理だと分かっていたから、それならあたしは“可愛い女の子”になりたいと思っていた。



小さな頃から“可愛い女の子”になりたいと思っていたし、昔オーシャンも“可愛い女の子が好き”と言っていたから。



でも、可愛い女の子にもなれなかった今思うことは・・・。



あたしは“男”になりたかった。



ゲイバーで働いていた時、何度もそう思っていた。



あたしは“男”になりたかった・・・。



この顔で、あたしは“男”として生まれたかった・・・。



暗くなってナイトプールの幻想的な明かりの中でも、極上に良い男ですっっっごいイケメンのオーシャンを見て改めてそう思った。



あたしは・・・



可愛い女の子ではなくて・・・



“男”になりたかった・・・。