【完】 恋した博士に名前を覚えてもらえるまで

Bu-cha

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そう思っていた・・・



そう思っていた・・・



そう思いながら、緊張しながらも嬉しい気持ちで、ホテルに入り、ランウンジに向かって・・・



向かって・・・



向かって・・・



1人の男の人が立ち上がったのに気付いて・・・



そして、こっちに真っ直ぐと歩いてくるのを見て・・・



それを見て・・・



それだけで、予想出来てしまった・・・。



だって、私に似ているから・・・。



違う、その男の人に、私が似ているから・・・。



その人を見ながら立ち止まった私に気付いて、お母さんが不安そうな顔で私を見ているのは分かった。




それでも、足は動かなかった・・・。




足が、動かなかった・・・。





そんな私の前に立ち、男の人が小さく笑った。





どうしていいのか分からず、慌てて下を向いた。






そしたら、見えた・・・。







見えた・・・。







私は、安い服を着ていた。
1,900円で買ったワンピースを、着ていた。
そんなワンピースを、私は嬉しい気持ちで着ていた。







ホテルでランチを食べるのに、私は1,900円のワンピースを着ていて・・・
足を引きずりながらここまで歩いてきたお母さんも、同じくらいの値段の服を着ている。







それに気付き、イライラした。







視界に入るこの人の綺麗な靴を見て、イライラした。
あまり良くは見なかったけど、高そうな服を着ていたように思う。








顔が、上げられなかった・・・。







顔が、上げられるはずもなかった・・・。







イライラしすぎて、顔なんて上げられるわけがなかった・・・。










そんな私に、お母さんが言った。








とっくに予想出来ていたことを言った。








「サチ・・・。サチの、お父さんなの。」
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