【完】 恋した博士に名前を覚えてもらえるまで

Bu-cha

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「それでは、失礼します。」



そう言って、“博士”は私の返事を待つことなく・・・猫背の背中を向け歩いていく。



それに慌てて、“博士”を追いかける。



「待って・・・っ」



“博士”に並ぶと、立ち止まってくれ・・私を見下ろしている。



そして、無精髭に囲まれた口をゆっくりと開き・・・



「名前、なんでしたっけ?」



と、聞いてきた・・・。



「幸子・・・。岡田幸子。
さっきも合コンで自己紹介したわよ。」



「そうですね、先程はどうも。
では、失礼します。」



それだけ言って、また歩き出してしまって・・・また後を追う。



「あのゲームセンター、よく来るの?」



「1回目のゲームセンターでした。」



「それで会えたなら、凄い確率じゃない。」



「そうですね・・・。」



そう呟いたかと思うと、急に立ち止まり・・・
安っぽい鞄からグシャグシャの紙を取り出し、鉛筆で何かを書き始めた。



「何書いてるの?」



「確率を計算しています。」



「この先も計算しなさいよ。」



「この先ですか?」



「私が“博士”と一緒に、“博士”の家まで行ける確率。」



前髪や眼鏡でよく見えないけど、顔を上げた“博士”はきっと驚いている。



そんな“博士”に笑い掛ける。
優良物件ではないけど、狙った獲物は・・・確実に落としたい。



確実に、落としたい・・・。
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