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”そんな偶然ねーだろ!!“
望と鶴さんの孫はそんな出会い方だと思っていた。
だって、普通に考えればそんな出会い方なんてないはずで。
ハッキリとは分からないけれど俺の中でずっと引っかかるものがあった。



だからこの女の顔を見た瞬間、”はぁぁぁぁ!!!?“と心の中で叫んだし、”久しぶりに見たらこの顔やっぱめちゃくちゃタイプだわ。“とも思ったし、”何でお前がこんな所にいるんだよ!!?“という疑問しかなかった。



この女が鶴さんの孫ではないことは分かりきっているので、この女が何故鶴さんの孫だと嘘をついて望と出会ったのかを聞き出すことにしたかったが・・・。



「名前なんだっけ?
西川・・・ののだっけ、どんな字?
こう?」



手帳の白紙に《何してんだよ?》と書きチロに見せた。



そしたら・・・



「違います、こうです。」



チロが俺の万年筆で書いた文字は・・・



《この恋、応援に来ました》



「こうです。」



と、いうもので・・・。



こいつは守の恋を全力で応援していた女。
そして、俺の会社の掃除屋としても、主に”結ばせ屋“としてかなり優秀な仕事をする奴だった。



増田清掃に潜入させてからは「担当している清掃の詳細は話せませんが、青さんの会社にいる時とそんなに変わらない仕事をしています。」とも報告を“受けていた”。



そう、過去形。



こいつの報告はいつからか守が受けるようになっていて、守のこともこいつのことも信用していたので俺は信用し切っていた。



守から、「チロがいなくなった」と聞いたのは去年の12月25日、望が三山社長から審査を受けていた時。



チロが自宅から突然消えた。
チロの両親も口を割らなかったそうで、今思い返すとあの守がクリスマスの日に不眠不休で探し回っていた。
幸い、26日にチロから連絡があり、「増田清掃の案件で一人暮らしを始めた」ということが分かった。



インフルエンザになった望を西川鶴として泊めた場所なのだと分かる。



そして・・・



こいつが俺のことを裏切ったのだということも分かる。



”守もかよ・・・。“



”2人で増田清掃に、いや、和希の方につきやがったか・・・。“



”俺の会社を増田財閥に渡した方が良いって言いくるめられたか?“



”それとも、望と結ばれたら俺が幸せになれるとでも言われたか?“



加藤の”家“の人間とくっつくということは、増田財閥をぶっ壊さずに増田財閥側の人間になるということ。



俺は身内には望とのことも結構話しているし、和希も望から詳しい報告を受けているはずで。



望との結婚生活が終わり、俺がほぼ死んでいる状態だとは知られている。



”ほぼ死んでいる俺の所にチロを寄越したか、和希。“



”でもお前の思い通りにはなんねーよ。“



”俺はお前が思っているよりもずっと、望のことを本気で愛してる。
ほぼ死んでいようが望の望みなら俺は何でも出来る。
何でも叶えることが出来る。“



”望が俺に言ったんだよ。
俺にしか渡せない”愛してる“を、俺だから渡せる”愛してる“が欲しいって・・・。“



高速で頭を回しそこまで考えていると、見えた。



この女がめちゃくちゃ俺のことを見詰めてくる顔が。



その顔が言っているような気がする。



”それ、本当に望さんの望みですか?
望さんの本当の望みは、小関の“家”の秘書として生きることですよね?“
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