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みんな大人になる。



嫌でも大人にならなければこの社会で”普通“には生きていけない。



高校の時、電車に揺られるオッサン達を見て”俺はあんな風にはならない“と本気で思っていた。



”あんな風に死んだ目で生きる大人には絶対にならない。“



そんなことを思っていた俺が、フッと電車の窓ガラスに映った自分の顔を見て思わず小さく笑ったことがある。



俺も漏れなく死んだ目をしたオッサンになって、電車に揺られていたから。



俺も30歳をとっくに過ぎたオッサンで。
あんなに充実した青春の毎日なんて酒のツマミにしかならないと思っていた。



でも、望といるとあの頃の自分をよく思い出す。
望との思い出は全て、俺が1番楽しくて幸せしかない時間の中にいた物だからかもしれない。



30歳になった望があの頃と同じダッフルコートを着て、信じられないことにあの頃と変わらない可愛い顔で俺の前に現れたからかもしれない。



“俺なら何でも出来る”と、“俺なら何でも叶えられる”と、信じて疑わなかったあの頃の俺。
そんな生意気なクソガキだった俺のことを見上げる望の顔が、昔も今も全然変わらないからかもしれない。



俺のことを見上げるその顔が誰よりも“嬉しい”という顔をしていた。



誰よりも“バカ”という顔をして・・・



そして、誰よりも“大好き”という顔で俺のことを見ていたと思う。



“ほぼ兄貴”として、”ほぼ友達“として、望は誰よりも俺のことをそんな顔で見ていた。



「このお店でデートですか?
有名なお店ですよね。」



「いえ、”ほぼ家族“みたいな子の”友達“の審査をしてきます。
”そんな偶然ねーだろ!“っていう出会い方をしていたので心配で。」



いつもならカードで支払うところ、何枚もある現金で支払い釣りは受け取らなかった。



チ◯コは死亡したけれど俺は機嫌が良かった。



”早く食って早く審査して、望と夢の国に行こう。“



”家族だって友達同士だって行く場所だろ。“



”俺と望が行ったって何も変じゃない。“



”全然おかしくない。“



”俺は増田財閥を必ずぶっ壊す。
だからそれまでは、気合いを入れまくって望と今の関係を続けていく。“



”俺にしか渡せない、俺だから渡せる”愛してる“を望に渡し続ける。“



「マ◯コなんて関係なく、俺は望のことをマジで愛してる・・・。」



扉を開ける直前に、自然とそう呟いた。
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