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「あったかい、ありがとう。
このまま仕事行く?」
「はあ?んなわけねーだろ。」
「望さんも私の家でお話があるんですよね?
一緒に戻りましょう。」
「こいつは何の話もねーよ。
さっさと帰って家の掃除でもしてまんじゅうでも食って屁でもしてろ。」
「ひど~い!」
「酷いのはこいつだよ、俺の家で屁ばっかりこきやがって。
俺、そういう女マジで女として無理。」
青さんは私のことをチラリと見ることもなく、大きな背中を向けて歩き始めてしまった。
「すみません、望さん!また・・・!」
青さんの大きなコートを羽織った野々ちゃんが青さんの隣まで走り、それから2人で並んで野々ちゃんの家の方へ歩いて行く。
私は、そんな2人の後ろ姿を眺めていた。
ずっとずっと、眺めていた。
足が全然動かなくて、眺め続けていた。
2人が見えなくなった後も眺め続けていた。
灰色の空からは白い小さな雪が降ってきて、それに気付いたけれど眺め続けていた。
「頑張れ・・・。」
動かない足に声を掛ける。
「頑張れ・・・。」
凍ってしまいそうな涙を流す自分を励ます。
「私は歩ける・・・。」
凍えるほど冷たい空気を吸いながら呼吸を整えていく。
「私はまだまだ歩ける・・・。」
自分自身に暗示と洗脳をかけていく。
「私は加藤望・・・。
私の身体と命は小関の”家“の為にある・・・。
一平さんと一美さんの為にある・・・。
だからどんなに死にそうでも、私は歩ける・・・。」
私の青(あお)も星も消えてしまったけれど、幸せだった思い出もなくなってしまったけれど、私は歩いた。
小さな雪が降る寒い寒い世界の中でも、私は歩き続けた。
「頑張れ・・・・。
頑張れ、加藤望・・・・・。」
見上げた空には、当たり前だけど青(あお)も星もない。
「生まれ変わったら、やっぱり猫でいい・・・。
そしたら青さんから死ぬ瞬間まで一緒にいて貰える・・・。
だから頑張れ、私・・。」
小さな雪を降らす灰色の空に願った。
そんなに猫が得意ではない私が。
得意ではないどころか、実はめちゃくちゃ苦手な私が。
青さんだって知っているはず。
昔、青さんに猫を拾って貰う約束をした数分後に、目が取れるほど痒くなり鼻水とくしゃみが一生分出た私の姿を青さんも見ているから。
それから私は猫がめちゃくちゃ苦手になった。
だから青さんと再会した時に、あの美人な女の人に私のことを猫だと説明されたことは凄く嫌だと思った。
でも、私のことをノンノンと重ねてくれていたと知り凄く嬉しかった。
今、青さんの所には本物の”ノンノン“がいるから私は生まれ変わってもノンノンにはなれないけれど・・・。
「生まれ変わったら、青さんに拾って貰える可哀想な猫になりたい・・・。」
次の人生では死ぬその瞬間まで青さんに一緒にいて貰う為、そう望まずにはいられなかった。
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このまま仕事行く?」
「はあ?んなわけねーだろ。」
「望さんも私の家でお話があるんですよね?
一緒に戻りましょう。」
「こいつは何の話もねーよ。
さっさと帰って家の掃除でもしてまんじゅうでも食って屁でもしてろ。」
「ひど~い!」
「酷いのはこいつだよ、俺の家で屁ばっかりこきやがって。
俺、そういう女マジで女として無理。」
青さんは私のことをチラリと見ることもなく、大きな背中を向けて歩き始めてしまった。
「すみません、望さん!また・・・!」
青さんの大きなコートを羽織った野々ちゃんが青さんの隣まで走り、それから2人で並んで野々ちゃんの家の方へ歩いて行く。
私は、そんな2人の後ろ姿を眺めていた。
ずっとずっと、眺めていた。
足が全然動かなくて、眺め続けていた。
2人が見えなくなった後も眺め続けていた。
灰色の空からは白い小さな雪が降ってきて、それに気付いたけれど眺め続けていた。
「頑張れ・・・。」
動かない足に声を掛ける。
「頑張れ・・・。」
凍ってしまいそうな涙を流す自分を励ます。
「私は歩ける・・・。」
凍えるほど冷たい空気を吸いながら呼吸を整えていく。
「私はまだまだ歩ける・・・。」
自分自身に暗示と洗脳をかけていく。
「私は加藤望・・・。
私の身体と命は小関の”家“の為にある・・・。
一平さんと一美さんの為にある・・・。
だからどんなに死にそうでも、私は歩ける・・・。」
私の青(あお)も星も消えてしまったけれど、幸せだった思い出もなくなってしまったけれど、私は歩いた。
小さな雪が降る寒い寒い世界の中でも、私は歩き続けた。
「頑張れ・・・・。
頑張れ、加藤望・・・・・。」
見上げた空には、当たり前だけど青(あお)も星もない。
「生まれ変わったら、やっぱり猫でいい・・・。
そしたら青さんから死ぬ瞬間まで一緒にいて貰える・・・。
だから頑張れ、私・・。」
小さな雪を降らす灰色の空に願った。
そんなに猫が得意ではない私が。
得意ではないどころか、実はめちゃくちゃ苦手な私が。
青さんだって知っているはず。
昔、青さんに猫を拾って貰う約束をした数分後に、目が取れるほど痒くなり鼻水とくしゃみが一生分出た私の姿を青さんも見ているから。
それから私は猫がめちゃくちゃ苦手になった。
だから青さんと再会した時に、あの美人な女の人に私のことを猫だと説明されたことは凄く嫌だと思った。
でも、私のことをノンノンと重ねてくれていたと知り凄く嬉しかった。
今、青さんの所には本物の”ノンノン“がいるから私は生まれ変わってもノンノンにはなれないけれど・・・。
「生まれ変わったら、青さんに拾って貰える可哀想な猫になりたい・・・。」
次の人生では死ぬその瞬間まで青さんに一緒にいて貰う為、そう望まずにはいられなかった。
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