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「何だか元気がありませんね?」



野々ちゃんの部屋で温かい紅茶を飲みながら頷いた。



「詳しい話は出来ないんだけど、今の仕事の内容にイライラしててさ。」



「仕事をしているとイライラすることもありますよね。
・・・・・・はい、ハンカチです。」



「連絡してくれて本当にありがとうね!!
ずっと探して・・・・・はいなかったんだけど、昨日ないことに気付いて探してて!!」



「私ももっと早く連絡すれば良かったですね。
ベッドの下にあったので気付くのが遅くなっちゃいました。」



「ぜ~んぜん大丈夫!!」



そう答えながらも、青さんから貰ったタオルハンカチを胸の前で抱き締めた。



「野々ちゃんって今何の仕事してるの?
増田財閥に転職とか興味ない?」



「私は恩人が会社を経営していて、そこでお世話になっているんです。
なので増田財閥に転職は・・・。」



「いいのいいの!大丈夫!!
西川の“家”はそもそも代わりの子どもを生み育てておく役割の家で、増田財閥で直接働くとかそういう教育は昔から受けてないはずだし!!」



「・・・・その教育を受けていても他の分家も秘書の“家”も、もう何処もその教育に従っていませんよね?」



「うん、みんなで“いけないコト”をしちゃった。」



「望さんも“いけないコト”をしたいと思いませんか?
お兄さんもいるし、望さんは普通になっても加藤の“家”は大丈夫ですよね?」



私の向かい側に座った野々ちゃんが心配そうな顔で聞いてくるので、私は明るく笑いながら口を開いた。



「鶴さんはどんなおばあちゃんだった?」



「え・・・?」



「うちのおばあちゃんは“ノロマなダメ秘書の亀”って言われてたの。」



「酷い・・・。」



「私は“ダメ秘書”って言われてるけどね!!」



大きく笑った私に野々ちゃんは釣られたのか、クスッと小さく笑った。



「私には逃げない理由が沢山ある。
その理由の1つが小さくなってしまったとしても、他にも沢山の理由があるから私は加藤の”家”の秘書として頑張りたいと思える。」



「そっか・・・。」



「立派な秘書になって小関の“家”に戻って、秘書としてこの人生を終える。」



「この人生を終えたら、次はどんな人生を送りたいですか?」



「青さんの妹か、青さんの子どもかな・・・。
青さんって、私が今お世話になってる家の人で、結構クセが強い男の人ではあるけどすっっっっごく良い人で。」



野々ちゃんに青さんのアピールをしていく。



「顔も普通に格好良いし、34歳だけどたるんでもないどころか筋肉ちゃんとついてるし、性格は結構面倒ではあるけど、根が凄く凄く良い人で!!!」



「凄く良い人の所にいるようで安心しました。」



「うん!!!凄く良い人だよ!!!
青さんって野々ちゃんみたいなお顔が凄くタイプで、会ったら絶対に野々ちゃんのこと口説いちゃうと思う!!!」



「そうですかね・・・。」



「野々ちゃんにお礼をしたいって言ってたし、今度会ってくれるかな!?」



「私が会っても大丈夫なんですか?」



「勿論!!!」



「私が青さんに口説かれていても望さんは大丈夫なんですか?」



「全然大丈夫だよ!!!
むしろ嬉しい!!!
青さんと野々ちゃんが付き合ったら凄く嬉しいし、2人が結婚したら飛び跳ねるくらい喜ぶよ!!!」



死ぬ気で笑い続ける。



”今日は嫌な仕事ばっかりだな・・・。”



そう思ってしまいながら。



「望さんがそんなに言うってことは、本当に良い人なんですね。
私、そろそろ彼氏が欲しいなって思ってて・・・。」



キツい顔をした美人な野々ちゃんが照れたように笑う顔を見て、死ぬ気で演技を続けながら頷いた。
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