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一平さんに抱きつきたくなった衝動をグッと堪え、その代わりに両手で“一平さんの第2ボタン“をもっと強く握り締めた。



「ごめんなさ・・・っ、わたし・・・うまくできなかった・・・・っっ。
じょぉさんの、よわみっ、にぎれなくて・・・っっ。
かいしゃ、わたしてもらえなくて・・・っっ。
なのに・・・・っ、なのに・・・・・っっ」



凍えた全身が大きく震えだし、白い息と一緒に吐き出した。



「かえってきて、ごめんなさい・・・・っ」



一平さんの顔を見ることが出来なくて下を向いた。



「りっぱなひしょになれなくて、ごめんなさい・・・・・っっ」



此処まで帰ってきたのに小関の”家“には帰れていないくらいの”ダメ秘書“の私が一平さんに謝る。



「ごめんなさい・・・っっ」



一平さんと貴子さんが幸せに暮らすあの家に、私の居場所はやっぱりなくて。



立派な秘書になれていない私の居場所なんて何処にもなくて。



「ほんとうは・・・っりっぱなひしょに、なって・・・っ、かえってきたかった・・・っっ」



白い息と一緒に吐き出した私の本心に、視界の中にある一平さんの足は一歩、私の所に近付いた。



そして・・・



「また行っておいで、青の所に。」



そんなことを言ってきた。



「また頑張っておいで。」



一平さんが優しい優しい声でそう言った瞬間、フワッッッと一気に身体が温かくなった。
何となくだけど知っている香りに包まれた。



一平さんの香りに包まれた・・・。



一平さんの身体ではなく一平さんのスーツのジャケットだけど、私の身体が一平さんの温もりと香りに包まれた。



一平さんは凄く温かくて・・・。



凄く良い香りで・・・。



思わず顔を上げたら、見えた。



一平さんの凄く凄く真剣な顔が。



「青の弱みを握り、青の会社を渡して貰う為に頑張っておいで、望。」



私のことを”望さん“ではなく”望“と呼び、一平さんが優しい優しい顔で笑った。



「次にこの家に・・・、俺の所に帰ってくるのは望が立派な秘書になった時だよ。
俺は望が立派な秘書になる日を楽しみにしているから。
そのジャケットはその時に返してくれれば良いから、今日は羽織っていって。」



一平さんがそう言った時、聞こえた。



聞こえてきた・・・。



この曲がり角の向こう側から、夜の黒の中でめちゃくちゃ煩い声が。



「こんな所で俺が待っててもしょうがねーし、俺も探しに行くって言ってるだろ、うるせーな!!!!
そんなことよりも鶴の孫の女の住所はまだ分かんねーのかよ!!!!
お前は和希の友達だろ!?
和希の女とも銀は同じクラスだっただろ!?
その女でも何でも使って鶴の孫娘の住所を早く聞き出せよ!!!
女なんて1回チ◯コ挿れておけばそれなりに言うこと聞くもんだから、兄貴の為にチ◯コ挿れてこいよ!!!」







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