237 / 490
16
16-3
しおりを挟む
私が小学校に上がる時におばあちゃんから暇を出されたアエさんの姿を思い出していた時、一美さんの声がミツヤマのオフィスに美しく、強く、響いた。
「こんな騒ぎになってしまった原因が望さんに全くなかったわけではないとも思いますので、この段ボールの物は全て私個人に請求してください。
詳しいやり取りは弁護士を通してになりますので、後程顧問弁護士よりご連絡差し上げます。」
一美さんは私に何も聞かず、何も責めることもなく、そう言った。
恐らくこれが増田清掃の”清掃“なのだと推測したのだと分かる。
正確にはワンスターエージェントの清掃なのだけど、一美さんは私が青さんの会社で働いていることまでは知らない。
一美さんのことを起こせたことにより少しだけ生き返った私が、冷静にこの言葉を出した。
「社長・・・奥様と離婚してあげてください・・・。
学生時代から付き合って、独立して大変な時期を支えてくれていた素敵な奥様と。
“地味”でも“冴えない”でもない素敵な奥様ですよ。
奥様と離婚をして木下さんと結婚すれば良いじゃないですか。」
そう言ってから、社内にいるみんなのことを見た。
みんな死んだような顔をしているけれどまだ死んではいない。
そのみんなを殺す。
綺麗に殺す。
「それか美幸(みゆき)さんとか愛生(あおい)さんとか香奈さんとか実緒梨(みおり)さんとか、あとは・・・」
女性社員の名前を1人ずつ上げていった私に・・・
「望さん・・・っ!!」
一美さんが大きく笑いながら私のことを制止してくれ、私はパッと馬場さんのことを見た。
「社長の大本命って沙也加(さやか)さんでした!!」
三山社長がみんなと不倫をしていると、みんなに”Hatori“の物をプレゼントしていると女性陣に周知したのは馬場さんだと私は思っている。
夏のボーナスを貰うことなく退職しようとした馬場さんを止めた三山社長に、馬場さんは自分のボーナス金額で”Hatori“の物をプレゼントして欲しいと三山社長にお願いをした。
それがあれば頑張ると・・・。
きっと、頑張れると・・・。
大好きな三山社長が大好きなブランド、“Hatori”。
三山社長への気持ちを伝えることも結ばれることもないと分かっているからこそ、馬場さんは三山社長から受け取りたかった。
三山社長が愛した人である奥さんに渡しているという“Hatori”の物を、そして社内の女性社員にも渡していると“勘違い”をしていた“Hatori”の物を。
これからも三山社長の元で頑張りたいと思うからこそ、馬場さんはどうしても欲しかった。
「こんな騒ぎになってしまった原因が望さんに全くなかったわけではないとも思いますので、この段ボールの物は全て私個人に請求してください。
詳しいやり取りは弁護士を通してになりますので、後程顧問弁護士よりご連絡差し上げます。」
一美さんは私に何も聞かず、何も責めることもなく、そう言った。
恐らくこれが増田清掃の”清掃“なのだと推測したのだと分かる。
正確にはワンスターエージェントの清掃なのだけど、一美さんは私が青さんの会社で働いていることまでは知らない。
一美さんのことを起こせたことにより少しだけ生き返った私が、冷静にこの言葉を出した。
「社長・・・奥様と離婚してあげてください・・・。
学生時代から付き合って、独立して大変な時期を支えてくれていた素敵な奥様と。
“地味”でも“冴えない”でもない素敵な奥様ですよ。
奥様と離婚をして木下さんと結婚すれば良いじゃないですか。」
そう言ってから、社内にいるみんなのことを見た。
みんな死んだような顔をしているけれどまだ死んではいない。
そのみんなを殺す。
綺麗に殺す。
「それか美幸(みゆき)さんとか愛生(あおい)さんとか香奈さんとか実緒梨(みおり)さんとか、あとは・・・」
女性社員の名前を1人ずつ上げていった私に・・・
「望さん・・・っ!!」
一美さんが大きく笑いながら私のことを制止してくれ、私はパッと馬場さんのことを見た。
「社長の大本命って沙也加(さやか)さんでした!!」
三山社長がみんなと不倫をしていると、みんなに”Hatori“の物をプレゼントしていると女性陣に周知したのは馬場さんだと私は思っている。
夏のボーナスを貰うことなく退職しようとした馬場さんを止めた三山社長に、馬場さんは自分のボーナス金額で”Hatori“の物をプレゼントして欲しいと三山社長にお願いをした。
それがあれば頑張ると・・・。
きっと、頑張れると・・・。
大好きな三山社長が大好きなブランド、“Hatori”。
三山社長への気持ちを伝えることも結ばれることもないと分かっているからこそ、馬場さんは三山社長から受け取りたかった。
三山社長が愛した人である奥さんに渡しているという“Hatori”の物を、そして社内の女性社員にも渡していると“勘違い”をしていた“Hatori”の物を。
これからも三山社長の元で頑張りたいと思うからこそ、馬場さんはどうしても欲しかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる