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「社長・・・!!!」



木下さんのヒステリックな叫びに三山社長は「冗談だよ。」と軽く笑いながら答えられている。



そして・・・



め~・・・・っっっちゃ、ゆっくりとした動きで一美さんの背中に手を回した。
・・・いや、”回せた”。



一美さんの腰に三山社長の手が回っているのを見て、泣きそうになる。



さっきからずっと泣きそうだけどもっと泣きそうになる。



“ごめんなさい。”



心の中で一美さんに謝る。



“ごめんなさい。”



何度も謝る。



“でも、増田財閥の分家、小関の“家”の人間だと誰もが知っている環境の中でしか生きてきたことがない一美さん。
そんな一美さんの為にも必要な筋書きを青さんに何度も修正して貰いながら、私が作りました。”



“守ってください、一美さん。”



“一美さんが増田財閥の分家の人間だと知らない人間達ばかりのこの空間の中で、可哀想な私のことを守ってください。”



心の中で一美さんにそうお願いした時・・・



「望さん、この方のことが好きだったの?」



私が一平さんのことを愛していると知っているはずの一美さんが、優しい優しい声でそう聞いてくれた。



予想通りに、聞いてくれた。



それには我慢していた涙がポロポロと流れてきた。



何だか色んな気持ちが、割れている私の心から溢れてきた。



“望。
一平坊ちゃんが、結婚したい女の子がいるとご主人様にお話されたよ。“



お父さんから聞かされたその言葉を、何故か今このタイミングで思い出してしまった。



”望、今日も秘書の勉強を頑張ったんだってね、偉かったね。“



私のことをまだ”望“と呼んでくれていた時の幼い日の一平さんの姿を思い出してしまった。



”望に僕の友達の審査をお願いしたいって加藤さんに言ったのは僕なんだ。
明日はよろしくね?“



初めて一平さんの”友達“の審査をお願いされたずっと昔のことを思い出してしまった。



”望、凄く上手に転べてたよ。
よく頑張ってくれたね、ありがとう。“



一平さんから初めて褒めて貰えた時のことを思い出してしまった。



”僕は望が立派な秘書になる日を楽しみにしてるんだ。
僕の”今“の1番の望みはそれなんだ。
みんなには絶対に秘密だよ?
もう少し大人になったら必ず増田財閥の繁栄と維持を僕の望みにする。
でも今だけは望のことが僕の楽しみで、それが1番の望みなんだ。“



自分のことを”僕“と言うくらい小さかった一平さんが、キラキラとした目で私のことを見下ろしながら言ったその言葉を思い出してしまった。



私は”ダメ秘書“だから、今そんなそとを思い出してしまった。



でも、私はそれで良い・・・。



それ”が“、良い・・・。



大好きで愛している一平さんの姿を思い浮かべる。



”望さん、この方は梅田貴子さん。
永家財閥の分家の“家“の方なんだ。
これから父に貴子さんとの結婚を認めて貰う為に頑張ってくるよ。
応援しててね。“
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