【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
209 / 486
14

14-6

しおりを挟む
お母さんの言葉に先に反応したのは私ではなく青さんだった。



「こんな姿になってまで秘書として何を頑張るんだよ・・・。」



青さんのめちゃくちゃ怒っている低い声がおばあちゃんの部屋の中に響く。



「俺には可哀想な姿にしか見えねーよ・・・。
こんなの可哀想すぎるだろ・・・。
今まで出会った奴らの中で俺にはダントツで亀さんが可哀想すぎて・・・。
“ノロマなダメ秘書の亀”と言われていた亀さんが立派な秘書になった分、それがまためちゃくちゃ可哀想に思えて・・・。」



私の隣からゆっくりと立ち上がった青さんは、ボロボロになっている赤ちゃんの人形にミルクをあげているおばあちゃんの前にしゃがんだ。



そして・・・



「亀。」



凄く・・・凄く凄く、凄く凄く優しい声で”亀“と呼んだ。



それは私のことを”望“と呼ぶ時よりも深く、どこまでも深く”愛している“声に聞こえて・・・。



「今までよく頑張ったな。」



「・・・・・・・・。」



「1人でよく、ここまで来たな。」



「・・・・・・・・。」



「偉かったな。」



何も反応していないおばあちゃんに青さんがそう言って、ボロボロの赤ちゃんの人形の頭を優しく撫でた。
凄く凄く優しい手つきだけど、撫で慣れていないような手つきで。



「後は俺がやるから、亀はもう休んでろ。」



私には起き上がるように言ってくる青さんがおばあちゃんにはそう言って、ボロボロの赤ちゃんの人形を優しく抱っこし、哺乳瓶もおばあちゃんの手から抜き取った。



「遅くなってごめんな、亀。
ずっと来られなくてごめんな。
俺は、亀にずっと会いたかった。」



そう言って、ボロボロの赤ちゃんの人形を抱っこしている青さんが、おばあちゃんのことも優しく抱き締めた。



「やっと会えた。」



凄く凄く大切そうにボロボロの赤ちゃんの人形のこともおばあちゃんのことも青さんが抱き締める。



その姿はどこをどう見ても”亀の旦那さん“の姿で・・・。



見た目は全然似ていないはずなのに、不思議と照之なのではないかと思うくらいの深い”愛している“で。



”青さんって、ここまで演技が出来る人だったんだ・・・。“



そう思った時、骨のように細いおばあちゃんの両手が震えながら青さんの背中に回った。



そして・・・



「ヴゥゥゥゥ・・・・・・・・っっっ」



苦しそうな大きな泣き声がおばあちゃんの口から出てきた。



呆けてしまう前も呆けてしまった後も、泣いているおばあちゃんの姿を見るのは初めてで。
呆けてしまった後、パニックになっているおばあちゃんの姿は見たことがあっても泣いている姿を私は見たことがなくて。



ビックリした・・・。



凄く凄く、ビックリした。



私が知っているおばあちゃんはそんな人ではなかったから。



お母さんやお父さんやお兄ちゃんから話は聞いたことがあったけれど、私はおばあちゃんがこんな風に泣いている姿を初めて見たから。



こんな風に・・・



こんなに、心を全て解放して・・・



誰かに縋り付いているおばあちゃんの姿を私は初めて見た・・・。



「お義母さんがあんな風になるのは青君にだけなの。
お父さんも和希も照之の見た目に似ているはずなのに、お義母さんが普通の女の子に戻れるのは青君の前でだけ。
青君のアレは演技ではないってお義母さんは呆けた中でもきっと気付いているのかも。
久しぶりに青君が来てくれて良かった、お義母さん凄く安心してる。」



お母さんが涙ぐみながらそう言った言葉を、私は複雑な気持ちになりながら聞いていた。



だって、私は・・・



私は、まさかのおばあちゃんに嫉妬をしてしまっているから。



”いいな“と・・・



“羨ましいな”と・・・



そう思ってしまって。



“私とは全然違う。”



“私への愛とは全然違う。”



“本物ではない私への愛とはこんなにも違う。”



凄く苦しい。



凄く悲しい。



凄く虚しい。



必死に握り締めた一平さんの第2ボタンは、初めてひんやりと冷たく感じた・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...