上 下
172 / 450
12

12-1

しおりを挟む
私が”ラーメン 安倍“の扉を開けると、店内からは大きな大きな”いらっしゃいませ“が聞こえてきた。
カウンターの向こう側にいる1番目立つ男の子のことを見ると、少し強面のその男の子が扉の所に立ったままの私に向かって優しい顔にも見える笑顔で笑った。



「女の子1人でも大歓迎ですよ!!
そっちのテーブル席に座ってください!!」



扉の所から全然動かない私にそう声を掛けてくれた男の子のことを眺め、”血の繋がりがない安倍さんの弟かな“と思った。



「いや、俺の連れだよ。」



社長キャラの青さんが私の身体の横からお店の中に入り、私の腕を大きな手で優しく引いた。
此処に来られたことに感慨深い気持ちになりすぎて動けずにいた私の足は、青さんによって”ラーメン 安倍“の中に入ることが出来た。



「星野さん!?
女の子連れとかめちゃくちゃ珍しいっすね!!」



「”珍しい“ではなく”初めて“だよ。」



「すみません!
俺が星野さんの顔を覚えたのは最近なので、もしかしたら初めてじゃないかもと思って!!」



「”旦那さん“の方は人の顔を覚えるのが苦手だからね。」



血の繋がりのない妹と結婚をしたと知っているらしい青さんが男の子のことを”旦那さん“と言っていて、私のことをテーブル席ではなくカウンター席の1番端に座らせた。



そして、青さんも私の隣に座りながら・・・



さり気なく私の耳元で囁いてきた。



「安倍さんの弟、ここを一緒に立ち上げた妹と結婚してるからな?」



「知ってますよ。」



「見惚れてただろ。」



「違います。」



「まあ・・・望の”男友達“の方がイケメンだしな。」



「え・・・どうだろう、同じくらいじゃない?」



「お前に俺がどんな風に見えてるのかマジでこえーって・・・。」



「だから、青さんは格好良いってば。
よく言われてるでしょ、格好良いって。
青さんはイケメンっていうより格好良いだよね。」



「それ、喜んで良いやつ?」



「私の見た目がタイプじゃなくても青さんだって”可愛い“って言ってくれるじゃん。
それと同じやつだよ。」



私の答えに青さんが急にバッ─────...と、カウンターのテーブルに突っ伏した。



「それ・・・、”めちゃくちゃ格好良い“やつじゃん・・・。
望のタイプ、つまり一平よりも俺のことが”めちゃくちゃ好き“なやつじゃん・・・。」



「あ、それはナイ。」



”一平さんと同じくらいに、青さんのことがめちゃくちゃ好きなんだよ。“



お兄ちゃんからの暗示と洗脳によりこんなことになってしまっている青さんの頭に向かって、ニヤニヤとした顔を我慢することなくその言葉だけは言わないように頑張った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む

華藤りえ
恋愛
 塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。  ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。  それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。  神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。  だが二人に思いもかけない事件が起きて――。 ※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟 ※R18シーン有 ※全話投稿予約済 ※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。 ※現在の版権は華藤りえにあります。 💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕 ※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様  デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...