150 / 469
10
10-9
しおりを挟む
翌日
新年ミツヤマ初出社日の定時後
結局、12月は1日しか出勤しなかった私が久しぶりにミツヤマに出勤をすると、案の定みんなから良い顔をされなかった。
みんな顔には出さないようにしていたみたいだけど、”ダメ秘書“の私でも簡単に分かるくらいには良い顔をしていなかったから分かった。
「今日はパソコンを教えて貰ってどうだった?」
ミツヤマの新年会と私の歓迎会で、三山社長の隣の座布団でビールを飲んでいた私に三山社長が優しい声で聞いてきたので、それには苦笑いになりながら答える。
「もう、難しすぎて~・・・。
タイピング?も全然ダメダメです~。」
「それは慣れたら出来るようになるよ。
星野社長からは、事務の一般的な仕事を一通り出来るようにして欲しいと言われていて、それをうちで教えるという条件で金額も安くして貰ってるんだよね。」
「そうだったんですか・・・。」
「良い人だよね、星野社長って。」
「そうですね、良い人です。」
素直に答えた私のことを三山社長はジッと見てきて、それには疑問に思いながら私も三山社長のことを見返した。
そしたら・・・
三山社長の顔が私に近付いて来て・・・
頬にキスをされた時と同じように、そこまで近付いて来て・・・
”え、どうしよう・・・“
アワアワとしているだけの私にミツヤマ社長は私の耳元で小さく囁いた。
「望ちゃんって、星野社長の今の彼女なの?」
そんなことだけを囁いてきた三山社長は私の顔からすぐに離れ、私の返事をめちゃくちゃニコニコとしながら待っている。
さっきの動作と今の三山社長の顔を見て思う。
“この人、めっっっちゃタチの悪い天然かも。”
“女に無意識でこんなことをしたらダメだって~。”
そう言いたい気持ちはあるけれど、今それを掃除してしまったらこの会社の観察が上手くいかないことも分かるので、必死に口を閉じながら首を横に振った。
「そうなんだ?
妻が亜里沙ちゃんに、“星野社長にはたぶん今はもう彼女さんがいると思う”って言ってたよ?
“星野社長の会社で昔からの知り合いの女の子を雇っていて、その女の子が今の彼女だと思う”って言っていて。」
また私の顔の近くでヒソヒソとそんなことを言ってきて、それにもまた気になるけれど今はその内容の方が気になる。
「望ちゃんの名前も出しちゃってたから帰ったら妻に言っておくよ。」
「お願いしますね。
青さんと亜里沙さんの問題に私まで巻き込まれるのは無理なので。」
「うん、まあ・・・でも、妻がそう思ったのも僕はよく分かるけどね。
望ちゃんの審査の時なんて、星野社長が死にそうな顔をしながら悩みに悩んで、僕に望ちゃんの頬にキスをすることを頼んで来て。」
三山社長が凄く凄く楽しそうに笑って、その顔はなんだか年齢よりも随分と幼く見えるような気がする。
「あんなに悩んで頼んで来たのに、その後もずっっっっと悩み続けていたんだよ。
1日に何度も電話が掛かってきて“やっぱり頬にキスはしない方向で”って連絡してきたり、たまに家にまで来て“やっぱりやる方向で”って言ってきたり。
その度に言い訳みたいに、“僕が凄く可愛がってきた女の子なので・・・”とか、“こんなに小さい頃から僕に懐いてくれていた女の子で・・・”とか。
“こんなに小さい頃”っていう手のジェスチャーがさ、生まれたての赤ちゃんくらいの大きさで。」
三山社長が両手で再現したその大きさを見て、私も自然と笑った。
「私は青さんのネコなんです。
私は青さんが飼っていた死んでしまったノンノンっていう名前のネコの生まれ変わりなので、そこまで悩んでいたんだと思います。」
「そっか・・・。
最初は物静かで穏やかな人だよな~と思っていたのに突然叫び出して、“こんなこと俺はしたくないんだよ”って、“俺はただあいつを猫可愛がりしたいだけなのに、何でこんな可哀想なことをしないといけないんだよ”って。
亜里沙ちゃんから聞いていた通り、本当は面倒で煩い人なんだなってすぐに納得したよ。
普段の仕事では絶対に素を出さないそうだけど思わず叫んでしまったくらい、望ちゃんは星野社長のネコだったのか。」
三山社長が凄く凄く楽しそうに笑った後に私のことをジッと見詰めてきた。
「でも妻や僕から見たら、どう見てもネコに対するソレではないように見えた。
妻も僕もうちの犬のことを心から愛しているけど、あんな風な愛ではないよ。」
新年ミツヤマ初出社日の定時後
結局、12月は1日しか出勤しなかった私が久しぶりにミツヤマに出勤をすると、案の定みんなから良い顔をされなかった。
みんな顔には出さないようにしていたみたいだけど、”ダメ秘書“の私でも簡単に分かるくらいには良い顔をしていなかったから分かった。
「今日はパソコンを教えて貰ってどうだった?」
ミツヤマの新年会と私の歓迎会で、三山社長の隣の座布団でビールを飲んでいた私に三山社長が優しい声で聞いてきたので、それには苦笑いになりながら答える。
「もう、難しすぎて~・・・。
タイピング?も全然ダメダメです~。」
「それは慣れたら出来るようになるよ。
星野社長からは、事務の一般的な仕事を一通り出来るようにして欲しいと言われていて、それをうちで教えるという条件で金額も安くして貰ってるんだよね。」
「そうだったんですか・・・。」
「良い人だよね、星野社長って。」
「そうですね、良い人です。」
素直に答えた私のことを三山社長はジッと見てきて、それには疑問に思いながら私も三山社長のことを見返した。
そしたら・・・
三山社長の顔が私に近付いて来て・・・
頬にキスをされた時と同じように、そこまで近付いて来て・・・
”え、どうしよう・・・“
アワアワとしているだけの私にミツヤマ社長は私の耳元で小さく囁いた。
「望ちゃんって、星野社長の今の彼女なの?」
そんなことだけを囁いてきた三山社長は私の顔からすぐに離れ、私の返事をめちゃくちゃニコニコとしながら待っている。
さっきの動作と今の三山社長の顔を見て思う。
“この人、めっっっちゃタチの悪い天然かも。”
“女に無意識でこんなことをしたらダメだって~。”
そう言いたい気持ちはあるけれど、今それを掃除してしまったらこの会社の観察が上手くいかないことも分かるので、必死に口を閉じながら首を横に振った。
「そうなんだ?
妻が亜里沙ちゃんに、“星野社長にはたぶん今はもう彼女さんがいると思う”って言ってたよ?
“星野社長の会社で昔からの知り合いの女の子を雇っていて、その女の子が今の彼女だと思う”って言っていて。」
また私の顔の近くでヒソヒソとそんなことを言ってきて、それにもまた気になるけれど今はその内容の方が気になる。
「望ちゃんの名前も出しちゃってたから帰ったら妻に言っておくよ。」
「お願いしますね。
青さんと亜里沙さんの問題に私まで巻き込まれるのは無理なので。」
「うん、まあ・・・でも、妻がそう思ったのも僕はよく分かるけどね。
望ちゃんの審査の時なんて、星野社長が死にそうな顔をしながら悩みに悩んで、僕に望ちゃんの頬にキスをすることを頼んで来て。」
三山社長が凄く凄く楽しそうに笑って、その顔はなんだか年齢よりも随分と幼く見えるような気がする。
「あんなに悩んで頼んで来たのに、その後もずっっっっと悩み続けていたんだよ。
1日に何度も電話が掛かってきて“やっぱり頬にキスはしない方向で”って連絡してきたり、たまに家にまで来て“やっぱりやる方向で”って言ってきたり。
その度に言い訳みたいに、“僕が凄く可愛がってきた女の子なので・・・”とか、“こんなに小さい頃から僕に懐いてくれていた女の子で・・・”とか。
“こんなに小さい頃”っていう手のジェスチャーがさ、生まれたての赤ちゃんくらいの大きさで。」
三山社長が両手で再現したその大きさを見て、私も自然と笑った。
「私は青さんのネコなんです。
私は青さんが飼っていた死んでしまったノンノンっていう名前のネコの生まれ変わりなので、そこまで悩んでいたんだと思います。」
「そっか・・・。
最初は物静かで穏やかな人だよな~と思っていたのに突然叫び出して、“こんなこと俺はしたくないんだよ”って、“俺はただあいつを猫可愛がりしたいだけなのに、何でこんな可哀想なことをしないといけないんだよ”って。
亜里沙ちゃんから聞いていた通り、本当は面倒で煩い人なんだなってすぐに納得したよ。
普段の仕事では絶対に素を出さないそうだけど思わず叫んでしまったくらい、望ちゃんは星野社長のネコだったのか。」
三山社長が凄く凄く楽しそうに笑った後に私のことをジッと見詰めてきた。
「でも妻や僕から見たら、どう見てもネコに対するソレではないように見えた。
妻も僕もうちの犬のことを心から愛しているけど、あんな風な愛ではないよ。」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。




イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる