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”亀さん、ごめんな・・・。
いつも約束してたのに、ごめんな・・・。“
亀さんには全然似ていない望の顔に、俺に”愛している“と何度も言ってくれていた亀さんの顔を重ねる。
”後は俺がやるから亀はもう普通の女の子になって大丈夫だ。
だからもう休め、ゆっくり休め。“
増田清掃を辞めるまではいつも本気でそう言いながら亀さんのことを眠らせていた。
でも、”お兄ちゃん“が俺のことを高校を卒業する直前に増田清掃から追い出した。
その時の顔も言っていた。
”出来るだろ、青さん。“
”青さんなら簡単だろ?“
絶対にそう、言っていた・・・。
俺は“お兄ちゃん”から徹底的に指導をされていた。
それは清掃のことだけではなく、増田財閥の大昔からの歴史も、増田財閥の“今”のことも。
増田清掃も知らないお兄ちゃん独自の調査結果も踏まえ、俺は徹底的に指導をされていた。
俺は知ってる。
俺は望よりも遥かに増田財閥のことを知っている。
そして一平よりも深く広く、深すぎるほどに理解してしまっている。
“お兄ちゃん”はそういう男だった。
あの亀さんが育てた2人目の秘書。
自分の息子で試行錯誤をした“秘書”に育てる方法を完璧なモノにして、孫である和希を育てた。
“お兄ちゃん”は“そういう意味”で増田財閥の崩壊を求めているわけではないと俺は理解している。
だけど、俺は増田財閥を本当の意味で崩壊させられる。
増田財閥の多くの会社は存続させたまま、増田財閥内部を本格的に崩壊させられる。
今では多くの人間が知っている、増田財閥の本家の次男、増田元気(げんき)。
“増田財閥始まって以来の出来損ないの本家の人間”
そう言われていた増田元気は、“お兄ちゃん”だけが調査をしていた通りに凄い男だった。
俺からしてみてもめちゃくちゃ凄いと思う男だった。
そんな男が増田財閥に戻ってきた。
本当のところは何を考えているのか分からない怖すぎる長男、増田譲が派手にぶっ壊しながらも整えた増田財閥に、増田ホールディングスの海外事業部の統括部長として戻ってきた。
父親とダブル代表をしているあの怖すぎる兄貴は本当に何を考えているか分からない男で。
“俺と奥さんの結婚の時には世話になったね。
和希を増田清掃の代表にしたばかりの頃で、増田清掃はまだ不安定で使えない時だったから助かったよ。
絶対に失敗するわけにいかなかったから。”
増田財閥からの依頼、俺が受けた最後の依頼はコレだった。
“お兄ちゃん”だけが予想していた恐ろしい内容、増田譲が付き合っているとされている永家財閥の本家の女の子は次女の方ではなく長女の方。
“あの双子は、恐らくたまに入れ替わっている。”
俺が”どんな漫画だよ!?”と爆笑した話は、まさかの本当の話だった。
そして俺が増田財閥から最後に引き受け、逆に永家財閥からも仕事を貰うようになった案件は、増田譲と永家翔子が付き合っているという噂を掃除し、増田譲と永家結子が元々婚約者であり綺麗な結婚をとしたと清掃することだった。
その仕事自体は簡単なものだった。
でも、後日、増田譲が俺の会社に来た。
お礼を伝えに来たのかと思ったら・・・
“うちの財閥を崩壊させてよ。
俺、あんなのいらないんだよね。”
本気でそう言っていた。
“お兄ちゃん”からの指導によりそれが本気であるという増田譲の背景も俺は知っている。
そして、増田譲はめちゃくちゃ恐ろしい男だということも俺は知っている。
俺だって知っている・・・。
増田清掃の清掃員として、高校生のバイトだったけど俺だって清掃をしようとしていた。
あの“お兄ちゃん”と一緒に、増田財閥の会長の命令により増田譲が大切にしている“ゆきのうえ商店街”を消し去ろうとしていた。
“消し去るどころか普通に、普通以上に残ってるんだよ、あの商店街。”
“お兄ちゃん”から言われなくても知っていた。
その商店街はたまに話題になるくらいの商店街だったから。
この東京に雪が降る季節には必ず話題になる商店街で・・・。
めちゃくちゃ強かった。
普通の街にある普通の商店街が、ドン引きするくらいに強すぎた。
増田譲の幼馴染達が住んでいる商店街は、どんなことでも乗り越えてみせた。
どんなことが起きても強く強く歩き続け、そして・・・
増田譲も大学生の頃に一緒になって手掛けたという多くの店は、消え去るどころか勢いを増していった。
殺しても殺しても死なないどころか、1度も死ぬことなく歩き続け、更には大きく駆け出した。
あの男は優秀だとかそんなレベルではなく、“本物”だった。
増田ホールディングスの代表取締役として名前は出ているのに、傘下に名前だけ入れたような親友の“家”の会社の副社長秘書に何故か常駐しているくらい”普通”ではない、“本物”の男だった。
そんな恐ろしい男が弟の為に増田財閥を管理することにしている今はまだその時ではないと判断したけれど、近い未来で必ず増田譲は増田財閥のトップからいなくなる。
増田元気がその座に着いた後は必ずいなくなる。
そして、増田元気がトップになった増田財閥はこれまでの増田財閥とも、今の増田財閥ともまた更に変わる。
あれは元気すぎるくらい元気な男で、“普通”に俺とも友達になったくらいの男だった。
“俺は分家とか秘書とかいらないんだよね。
俺が欲しいのは俺と一緒に元気に働いてくれる奴だけ!!!”
俺よりもデカい声で爆笑をしながらそう言った元気の姿は優秀とか“本物”とかそんなことよりも、“めちゃくちゃデカい男”だなという感想だった。
生粋の日本人の母親に似たらしいけど、外国人のような見た目の“めちゃくちゃデカい男”、それが近い未来で増田財閥の主になる男だった。
増田財閥は滅びる。
必ず、滅びる。
だから俺は・・・
俺は・・・
言えない。
望にそんな嘘のプロポーズは出来ない。
俺なら出来るから。
俺なら増田財閥を崩壊させることが出来てしまうから。
あと少しで、それが出来る時が来るから。
研修初日の夜、亀さんに言った言葉を嘘にしてしまう自分にも”怖い“と思いながらも一平にバイトを辞めると言いに行こうとしていた俺の前に、望がいた。
望が暗い夜の道を歩き続けていた姿を今日も思い出す。
”可哀想“だった。
めちゃくちゃ”可哀想”で・・・。
ピーコートだろうが何だろうが、俺に出来ることなら何でも叶えてやりたいと、あの時の望の後ろ姿に俺は本気で自分自身に誓っていた。
青side·················
いつも約束してたのに、ごめんな・・・。“
亀さんには全然似ていない望の顔に、俺に”愛している“と何度も言ってくれていた亀さんの顔を重ねる。
”後は俺がやるから亀はもう普通の女の子になって大丈夫だ。
だからもう休め、ゆっくり休め。“
増田清掃を辞めるまではいつも本気でそう言いながら亀さんのことを眠らせていた。
でも、”お兄ちゃん“が俺のことを高校を卒業する直前に増田清掃から追い出した。
その時の顔も言っていた。
”出来るだろ、青さん。“
”青さんなら簡単だろ?“
絶対にそう、言っていた・・・。
俺は“お兄ちゃん”から徹底的に指導をされていた。
それは清掃のことだけではなく、増田財閥の大昔からの歴史も、増田財閥の“今”のことも。
増田清掃も知らないお兄ちゃん独自の調査結果も踏まえ、俺は徹底的に指導をされていた。
俺は知ってる。
俺は望よりも遥かに増田財閥のことを知っている。
そして一平よりも深く広く、深すぎるほどに理解してしまっている。
“お兄ちゃん”はそういう男だった。
あの亀さんが育てた2人目の秘書。
自分の息子で試行錯誤をした“秘書”に育てる方法を完璧なモノにして、孫である和希を育てた。
“お兄ちゃん”は“そういう意味”で増田財閥の崩壊を求めているわけではないと俺は理解している。
だけど、俺は増田財閥を本当の意味で崩壊させられる。
増田財閥の多くの会社は存続させたまま、増田財閥内部を本格的に崩壊させられる。
今では多くの人間が知っている、増田財閥の本家の次男、増田元気(げんき)。
“増田財閥始まって以来の出来損ないの本家の人間”
そう言われていた増田元気は、“お兄ちゃん”だけが調査をしていた通りに凄い男だった。
俺からしてみてもめちゃくちゃ凄いと思う男だった。
そんな男が増田財閥に戻ってきた。
本当のところは何を考えているのか分からない怖すぎる長男、増田譲が派手にぶっ壊しながらも整えた増田財閥に、増田ホールディングスの海外事業部の統括部長として戻ってきた。
父親とダブル代表をしているあの怖すぎる兄貴は本当に何を考えているか分からない男で。
“俺と奥さんの結婚の時には世話になったね。
和希を増田清掃の代表にしたばかりの頃で、増田清掃はまだ不安定で使えない時だったから助かったよ。
絶対に失敗するわけにいかなかったから。”
増田財閥からの依頼、俺が受けた最後の依頼はコレだった。
“お兄ちゃん”だけが予想していた恐ろしい内容、増田譲が付き合っているとされている永家財閥の本家の女の子は次女の方ではなく長女の方。
“あの双子は、恐らくたまに入れ替わっている。”
俺が”どんな漫画だよ!?”と爆笑した話は、まさかの本当の話だった。
そして俺が増田財閥から最後に引き受け、逆に永家財閥からも仕事を貰うようになった案件は、増田譲と永家翔子が付き合っているという噂を掃除し、増田譲と永家結子が元々婚約者であり綺麗な結婚をとしたと清掃することだった。
その仕事自体は簡単なものだった。
でも、後日、増田譲が俺の会社に来た。
お礼を伝えに来たのかと思ったら・・・
“うちの財閥を崩壊させてよ。
俺、あんなのいらないんだよね。”
本気でそう言っていた。
“お兄ちゃん”からの指導によりそれが本気であるという増田譲の背景も俺は知っている。
そして、増田譲はめちゃくちゃ恐ろしい男だということも俺は知っている。
俺だって知っている・・・。
増田清掃の清掃員として、高校生のバイトだったけど俺だって清掃をしようとしていた。
あの“お兄ちゃん”と一緒に、増田財閥の会長の命令により増田譲が大切にしている“ゆきのうえ商店街”を消し去ろうとしていた。
“消し去るどころか普通に、普通以上に残ってるんだよ、あの商店街。”
“お兄ちゃん”から言われなくても知っていた。
その商店街はたまに話題になるくらいの商店街だったから。
この東京に雪が降る季節には必ず話題になる商店街で・・・。
めちゃくちゃ強かった。
普通の街にある普通の商店街が、ドン引きするくらいに強すぎた。
増田譲の幼馴染達が住んでいる商店街は、どんなことでも乗り越えてみせた。
どんなことが起きても強く強く歩き続け、そして・・・
増田譲も大学生の頃に一緒になって手掛けたという多くの店は、消え去るどころか勢いを増していった。
殺しても殺しても死なないどころか、1度も死ぬことなく歩き続け、更には大きく駆け出した。
あの男は優秀だとかそんなレベルではなく、“本物”だった。
増田ホールディングスの代表取締役として名前は出ているのに、傘下に名前だけ入れたような親友の“家”の会社の副社長秘書に何故か常駐しているくらい”普通”ではない、“本物”の男だった。
そんな恐ろしい男が弟の為に増田財閥を管理することにしている今はまだその時ではないと判断したけれど、近い未来で必ず増田譲は増田財閥のトップからいなくなる。
増田元気がその座に着いた後は必ずいなくなる。
そして、増田元気がトップになった増田財閥はこれまでの増田財閥とも、今の増田財閥ともまた更に変わる。
あれは元気すぎるくらい元気な男で、“普通”に俺とも友達になったくらいの男だった。
“俺は分家とか秘書とかいらないんだよね。
俺が欲しいのは俺と一緒に元気に働いてくれる奴だけ!!!”
俺よりもデカい声で爆笑をしながらそう言った元気の姿は優秀とか“本物”とかそんなことよりも、“めちゃくちゃデカい男”だなという感想だった。
生粋の日本人の母親に似たらしいけど、外国人のような見た目の“めちゃくちゃデカい男”、それが近い未来で増田財閥の主になる男だった。
増田財閥は滅びる。
必ず、滅びる。
だから俺は・・・
俺は・・・
言えない。
望にそんな嘘のプロポーズは出来ない。
俺なら出来るから。
俺なら増田財閥を崩壊させることが出来てしまうから。
あと少しで、それが出来る時が来るから。
研修初日の夜、亀さんに言った言葉を嘘にしてしまう自分にも”怖い“と思いながらも一平にバイトを辞めると言いに行こうとしていた俺の前に、望がいた。
望が暗い夜の道を歩き続けていた姿を今日も思い出す。
”可哀想“だった。
めちゃくちゃ”可哀想”で・・・。
ピーコートだろうが何だろうが、俺に出来ることなら何でも叶えてやりたいと、あの時の望の後ろ姿に俺は本気で自分自身に誓っていた。
青side·················
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