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ご飯に誘ってくれたマナリーに後日お礼をすると伝え、私は癒しの音楽が流れている薄暗い世界の中をササーッと歩いていく。
薄暗いだけではない、黒の世界の中で青く光る水を横目に見ながら、水族館の中をササーッと歩いていく。
“うん、綺麗綺麗。”
綺麗と思いながらも、“あのカップル達はあの魚を見ながらあそこにジッと立って何の話をしているんだろう”と疑問にも思いながら。
““美味しそ~う♪”とか?”
ちょっと近くで聞いてみたけれど、クスクスと小さく笑い合っているだけで何の話をしているかは全く分からなかった。
水族館内にある、そこだけは明るめのカフェでホットコーヒーを飲んでいると、数組のカップル達の中から1人の大きな大きな男の人が現れた。
1月6日の明日からが年明け初めての会社の日なのに、今日から普通の仕事もこの水族館でしていた青さんが私からの報告を受ける為にスーツ姿で現れて・・・
「鎌田からの電話の第一声が、“望ちゃんのあのコートどうしたの?”だったぞ!?」
私の目の前の椅子にドカッと座りながらそんなことを言ってきて、それには安心しながら言った。
「そんなどうでも良いことを言ってきたってことは、鎌田さんちゃんと間に合ったんだ?」
”カフェにいます”と青さんに送った後、ずっと手に持っていたスマホをテーブルの上に置いた。
私に返事をすることなくこの場所に現れた青さんは、普通に笑いながら口を開き・・・
「いや、間に合わなかった。」
それには驚きすぎて固まってしまう。
「間に合わなかったから愛姉が改札の所で待ってたらしい。
愛姉からもメッセージが届いてそっちに書いてあった。」
「間に合わなかったかぁ~・・・。
でも、まあ・・・めでたしめでたし?」
「お前、清掃まで出来なかったのか?
鎌田からの電話と愛姉からのメッセージの内容を見たら、まだ掃除しかしてねーような感じだったぞ?」
「あ、はい。
勝手に掃除だけにしちゃった。」
「何でだよ、あそこまで出来たなら見えない所まで綺麗に出来ただろ。」
「青さんって女心も分からない上に、恋をしている男心も分からない男ですよね~。」
「俺は男だから男のそれは分かってる。」
「青さんのは恋をしている男心っていうか、おちんちんからの声に素直に従ってるだけじゃない?」
「それが男だろ。
男はみんなチ◯コに支配されてるんだよ。
・・・お前、それココア?」
「コーヒーだよ?」
「マジか・・・。
そんな苦い物まで飲めるくらいになったのか・・・。
確かに、それは俺の精子まで飲・・・「青さん。」
青さんの言葉を遮り、真顔で言う。
「ここ、水族館。
時間的に子どもはいないけど、この幻想的な空間を楽しみに来てるカップルだらけの中、下品な話をぶっ込んでこないでよ。」
「それを言うならお前、俺が終わるまで水族館楽しんでおけって言ったのに、カフェとか何処にでもあるだろ。
魚を見てろよ、魚を。」
「見たよ?ササーッとだけど。
綺麗だった。」
「お前、昔からそういう所も早いよな?
ノンノンの写真見ても“可愛い“とか言う割にはすぐにスマホ返して来たし。」
「え、普通はすぐに返さないってこと?」
「そこからどんな話にも膨らむだろ。」
「え~・・・?
餌はどの餌ですか、とか?」
「うん。」
「水は・・・水は・・・え、水にも何かあるんですか?」
「お前こそ普通の女に見えて普通の女じゃねーからなぁ~。」
青さんは楽しそうに笑い、まだ残っている私のコーヒーのカップを持ち上げた。
「向こうでも飲めるんだよ。
せっかくだから水槽の前で報告を受ける。」
青さんがそう言って数組のカップルの中を進んでいき、暗い世界の中で1番青くて1番大きく光り輝いている水槽の前のテーブルに私のコーヒーのカップを置き、そこにある丸い小さな椅子に座った。
だから私も青さんの隣にある椅子に座ったけれど、大きな大きな青さんが座ると小さな椅子からはこんなにもはみ出ていて。
青さんの身体に密着してしまった感じになってしまって・・・。
それにはドキッとしてしまい、椅子をずらそうとした。
そしたら・・・
「望。」
青さんが私の名前を呼んだ。
この青く光り輝く世界の中で、私の名前を・・・。
そして・・・
「ありがとな。
望が俺の家にいてくれて、本当に良かった。」
そう言った・・・。
そう言ってくれた・・・。
青さんの会社を増田財閥に渡させる為に私は青さんの所にいるのに・・・。
私の秘書生命だけではなく、嘘までついて本物のエッチを青さんにさせた私に・・・。
そんな最悪で最低な私に、青さんは”ありがとう“と言ってくれて・・・。
「どうした?」
涙が溢れてしまった私に青さんは心配そうな顔でそう聞いてくる。
こんな私にこんな顔で聞いてくれる・・・。
こんな私に青さんはいつも渡してくれる。
いつも渡そうとしてくれる。
「ごめんなさい・・・。」
謝った私の顔に向かって、青さんが大きな片手を伸ばしてくれる。
「なにが?」
大きくて温かい手が私の頬を包み、親指で優しく涙を拭ってくれる。
「私・・・青さんに、嘘をついてた・・・っっ」
私は”ダメ秘書“だから言ってしまう。
せっかくお兄ちゃんが青さんに”暗示“や”洗脳“をし、私にもそれらをしていたのに。
昔から”この時“の為に、お兄ちゃんは準備をしていたのに。
青さんに会社を渡すと頷かせる為ではなく、自分が我慢出来なくて言ってしまう。
青さんの為でもなくそんな理由で言ってしまう。
「私、もう・・・ピル飲んでない・・・。」
薄暗いだけではない、黒の世界の中で青く光る水を横目に見ながら、水族館の中をササーッと歩いていく。
“うん、綺麗綺麗。”
綺麗と思いながらも、“あのカップル達はあの魚を見ながらあそこにジッと立って何の話をしているんだろう”と疑問にも思いながら。
““美味しそ~う♪”とか?”
ちょっと近くで聞いてみたけれど、クスクスと小さく笑い合っているだけで何の話をしているかは全く分からなかった。
水族館内にある、そこだけは明るめのカフェでホットコーヒーを飲んでいると、数組のカップル達の中から1人の大きな大きな男の人が現れた。
1月6日の明日からが年明け初めての会社の日なのに、今日から普通の仕事もこの水族館でしていた青さんが私からの報告を受ける為にスーツ姿で現れて・・・
「鎌田からの電話の第一声が、“望ちゃんのあのコートどうしたの?”だったぞ!?」
私の目の前の椅子にドカッと座りながらそんなことを言ってきて、それには安心しながら言った。
「そんなどうでも良いことを言ってきたってことは、鎌田さんちゃんと間に合ったんだ?」
”カフェにいます”と青さんに送った後、ずっと手に持っていたスマホをテーブルの上に置いた。
私に返事をすることなくこの場所に現れた青さんは、普通に笑いながら口を開き・・・
「いや、間に合わなかった。」
それには驚きすぎて固まってしまう。
「間に合わなかったから愛姉が改札の所で待ってたらしい。
愛姉からもメッセージが届いてそっちに書いてあった。」
「間に合わなかったかぁ~・・・。
でも、まあ・・・めでたしめでたし?」
「お前、清掃まで出来なかったのか?
鎌田からの電話と愛姉からのメッセージの内容を見たら、まだ掃除しかしてねーような感じだったぞ?」
「あ、はい。
勝手に掃除だけにしちゃった。」
「何でだよ、あそこまで出来たなら見えない所まで綺麗に出来ただろ。」
「青さんって女心も分からない上に、恋をしている男心も分からない男ですよね~。」
「俺は男だから男のそれは分かってる。」
「青さんのは恋をしている男心っていうか、おちんちんからの声に素直に従ってるだけじゃない?」
「それが男だろ。
男はみんなチ◯コに支配されてるんだよ。
・・・お前、それココア?」
「コーヒーだよ?」
「マジか・・・。
そんな苦い物まで飲めるくらいになったのか・・・。
確かに、それは俺の精子まで飲・・・「青さん。」
青さんの言葉を遮り、真顔で言う。
「ここ、水族館。
時間的に子どもはいないけど、この幻想的な空間を楽しみに来てるカップルだらけの中、下品な話をぶっ込んでこないでよ。」
「それを言うならお前、俺が終わるまで水族館楽しんでおけって言ったのに、カフェとか何処にでもあるだろ。
魚を見てろよ、魚を。」
「見たよ?ササーッとだけど。
綺麗だった。」
「お前、昔からそういう所も早いよな?
ノンノンの写真見ても“可愛い“とか言う割にはすぐにスマホ返して来たし。」
「え、普通はすぐに返さないってこと?」
「そこからどんな話にも膨らむだろ。」
「え~・・・?
餌はどの餌ですか、とか?」
「うん。」
「水は・・・水は・・・え、水にも何かあるんですか?」
「お前こそ普通の女に見えて普通の女じゃねーからなぁ~。」
青さんは楽しそうに笑い、まだ残っている私のコーヒーのカップを持ち上げた。
「向こうでも飲めるんだよ。
せっかくだから水槽の前で報告を受ける。」
青さんがそう言って数組のカップルの中を進んでいき、暗い世界の中で1番青くて1番大きく光り輝いている水槽の前のテーブルに私のコーヒーのカップを置き、そこにある丸い小さな椅子に座った。
だから私も青さんの隣にある椅子に座ったけれど、大きな大きな青さんが座ると小さな椅子からはこんなにもはみ出ていて。
青さんの身体に密着してしまった感じになってしまって・・・。
それにはドキッとしてしまい、椅子をずらそうとした。
そしたら・・・
「望。」
青さんが私の名前を呼んだ。
この青く光り輝く世界の中で、私の名前を・・・。
そして・・・
「ありがとな。
望が俺の家にいてくれて、本当に良かった。」
そう言った・・・。
そう言ってくれた・・・。
青さんの会社を増田財閥に渡させる為に私は青さんの所にいるのに・・・。
私の秘書生命だけではなく、嘘までついて本物のエッチを青さんにさせた私に・・・。
そんな最悪で最低な私に、青さんは”ありがとう“と言ってくれて・・・。
「どうした?」
涙が溢れてしまった私に青さんは心配そうな顔でそう聞いてくる。
こんな私にこんな顔で聞いてくれる・・・。
こんな私に青さんはいつも渡してくれる。
いつも渡そうとしてくれる。
「ごめんなさい・・・。」
謝った私の顔に向かって、青さんが大きな片手を伸ばしてくれる。
「なにが?」
大きくて温かい手が私の頬を包み、親指で優しく涙を拭ってくれる。
「私・・・青さんに、嘘をついてた・・・っっ」
私は”ダメ秘書“だから言ってしまう。
せっかくお兄ちゃんが青さんに”暗示“や”洗脳“をし、私にもそれらをしていたのに。
昔から”この時“の為に、お兄ちゃんは準備をしていたのに。
青さんに会社を渡すと頷かせる為ではなく、自分が我慢出来なくて言ってしまう。
青さんの為でもなくそんな理由で言ってしまう。
「私、もう・・・ピル飲んでない・・・。」
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