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“そんなこと、本当にあるんだ・・・。“
一瞬だけ一平さんの姿が浮かび、すぐに青さんの姿が浮かんだ。
店を飛び出していった鎌田さんの後ろ姿に青さんの後ろ姿が重なり、苦しくて悲しくて、虚しい気持ちになる。
青さんもいつかきっと、ちゃんと幸せになれる人で・・・。
”一平の、奪い取ってきてやった!“
青さんから受け取った一平さんの第2ボタンを慌てて両手でおさえた。
“私は大丈夫・・・。”
“私にはコレがあるから大丈夫・・・。“
”コレだけじゃない、お洒落なお店だって”Hatori“のコートだって受け取ることが出来た。“
”私の秘書生命だって懸けることが出来た。“
”私の処女を青さんに貰ってもらえて、私は青さんの精子だって受け取った。“
そう思って少しだけ落ち着いた時・・・
「この前ソっちゃんのお父さんの病院に行った時に望に聞くようにお願いされたんだけど、望ピルやめることにするの?
ピルを貰いに来ないってソっちゃんのお父さんが心配そうにしてたよ?」
マナリーから聞かれ、私は苦笑いで頷いた。
「お兄ちゃんからやめるように2ヶ月くらい前から言われてて。
そしたら青さんの案件が決まって・・・」
苦しく悲しくて、虚しくて泣きそうになる。
「”秘書生命“を懸けてでも、それで出来た子どもを使ってでも、青さんをどうにかしてくるようにって・・・。
そんなことはやりたくないって・・・その時はお兄ちゃんに言ったんだけどね・・・。」
ピルを飲んでいるという嘘までついて青さんの精子をお腹の中に入れて貰った。
彼女さん達ともしなかったであろう本当のセックスを私は青さんにさせた。
最低で最悪な嘘までついて、そんなことをさせてしまった。
「お兄ちゃんに言った時は本当にそう思ってたんだけどね・・・。」
「秘書生命、懸けたの・・・?」
「うん・・・。」
「中に出したの・・・?」
「うん・・・。
でも、排卵日じゃ全然ない日・・・。
それは分かってた・・・それだけは、ちゃんと考えてた・・・。
自分自身に”ピルを飲んでる“って必死に言い聞かせながら嘘をついたけど、排卵日じゃないことだけはちゃんと考えてた・・・。
どうしても・・・したくなっちゃって・・・して欲しくなっちゃって・・・、受け取りたくなっちゃって・・・。
御託も嘘も並べまくって、本物のセックスをして貰っちゃった・・・。」
そのことを打ち明けた私にマナリーが優しい顔で笑い、両手で私のことを抱き締めてくれた。
「私は望のことを愛してるよ。」
マナリーが今日もそう言ってくれる。
「小関の”家“に遣える秘書の”家“に生まれて、”ダメ秘書“と言われながらも必死にちゃんとした秘書になろうとしている望のことを、私は愛してるよ。」
私だけが幼い頃からおばあちゃんから任されていた1番大切な仕事・・・。
それは、一平さんと一美さんに愛の言葉を伝えるというものだった。
それがあれば小関の”家“の人はきっと頑張れるからと・・・、きっと一生頑張ることが出来るからと・・・。
だから私は一美さんにだけではなく、一平さんが中学生になる頃までは愛の言葉を伝えていた。
一美さんにするように抱き締めることはしなかったけれど、愛の言葉だけは伝えていた。
それは許されていたどころか、それが大切な仕事とされていた。
一平さんからは何も渡されることはなかったけれど、私はこの愛を仕事としてだけど一平さんにちゃんと渡せていた。
仕事としてだけど、きっと・・・きっと、ちゃんと・・・ちゃんと、渡せていて・・・
必死に自分に言い聞かせながら、マナリーに小さく頷いた。
そのことを知っているマナリーに小さく頷いた時に、気付いた。
”愛姉さんが頷いていたことに、鎌田さんは気付いていなかったのかもしれない・・・。“
そうは思ったけれど・・・
”そんな、まさかね・・・。“
たったそれだけのコトで2人があんなことになったとも思いたくなくて・・・
「マナリー、今私が頷いたこと分かった?」
「全然?」
「全然、分かった?」
「全然分からなかった、の方。」
それにはマナリーに抱き締められている自分の身体がサッッッと凍えたけれど・・・
「こうして・・・鎌田定光のヤリ◯ン人生の幕が閉じた・・・。」
幕を無理矢理にでも閉じておいた。
一瞬だけ一平さんの姿が浮かび、すぐに青さんの姿が浮かんだ。
店を飛び出していった鎌田さんの後ろ姿に青さんの後ろ姿が重なり、苦しくて悲しくて、虚しい気持ちになる。
青さんもいつかきっと、ちゃんと幸せになれる人で・・・。
”一平の、奪い取ってきてやった!“
青さんから受け取った一平さんの第2ボタンを慌てて両手でおさえた。
“私は大丈夫・・・。”
“私にはコレがあるから大丈夫・・・。“
”コレだけじゃない、お洒落なお店だって”Hatori“のコートだって受け取ることが出来た。“
”私の秘書生命だって懸けることが出来た。“
”私の処女を青さんに貰ってもらえて、私は青さんの精子だって受け取った。“
そう思って少しだけ落ち着いた時・・・
「この前ソっちゃんのお父さんの病院に行った時に望に聞くようにお願いされたんだけど、望ピルやめることにするの?
ピルを貰いに来ないってソっちゃんのお父さんが心配そうにしてたよ?」
マナリーから聞かれ、私は苦笑いで頷いた。
「お兄ちゃんからやめるように2ヶ月くらい前から言われてて。
そしたら青さんの案件が決まって・・・」
苦しく悲しくて、虚しくて泣きそうになる。
「”秘書生命“を懸けてでも、それで出来た子どもを使ってでも、青さんをどうにかしてくるようにって・・・。
そんなことはやりたくないって・・・その時はお兄ちゃんに言ったんだけどね・・・。」
ピルを飲んでいるという嘘までついて青さんの精子をお腹の中に入れて貰った。
彼女さん達ともしなかったであろう本当のセックスを私は青さんにさせた。
最低で最悪な嘘までついて、そんなことをさせてしまった。
「お兄ちゃんに言った時は本当にそう思ってたんだけどね・・・。」
「秘書生命、懸けたの・・・?」
「うん・・・。」
「中に出したの・・・?」
「うん・・・。
でも、排卵日じゃ全然ない日・・・。
それは分かってた・・・それだけは、ちゃんと考えてた・・・。
自分自身に”ピルを飲んでる“って必死に言い聞かせながら嘘をついたけど、排卵日じゃないことだけはちゃんと考えてた・・・。
どうしても・・・したくなっちゃって・・・して欲しくなっちゃって・・・、受け取りたくなっちゃって・・・。
御託も嘘も並べまくって、本物のセックスをして貰っちゃった・・・。」
そのことを打ち明けた私にマナリーが優しい顔で笑い、両手で私のことを抱き締めてくれた。
「私は望のことを愛してるよ。」
マナリーが今日もそう言ってくれる。
「小関の”家“に遣える秘書の”家“に生まれて、”ダメ秘書“と言われながらも必死にちゃんとした秘書になろうとしている望のことを、私は愛してるよ。」
私だけが幼い頃からおばあちゃんから任されていた1番大切な仕事・・・。
それは、一平さんと一美さんに愛の言葉を伝えるというものだった。
それがあれば小関の”家“の人はきっと頑張れるからと・・・、きっと一生頑張ることが出来るからと・・・。
だから私は一美さんにだけではなく、一平さんが中学生になる頃までは愛の言葉を伝えていた。
一美さんにするように抱き締めることはしなかったけれど、愛の言葉だけは伝えていた。
それは許されていたどころか、それが大切な仕事とされていた。
一平さんからは何も渡されることはなかったけれど、私はこの愛を仕事としてだけど一平さんにちゃんと渡せていた。
仕事としてだけど、きっと・・・きっと、ちゃんと・・・ちゃんと、渡せていて・・・
必死に自分に言い聞かせながら、マナリーに小さく頷いた。
そのことを知っているマナリーに小さく頷いた時に、気付いた。
”愛姉さんが頷いていたことに、鎌田さんは気付いていなかったのかもしれない・・・。“
そうは思ったけれど・・・
”そんな、まさかね・・・。“
たったそれだけのコトで2人があんなことになったとも思いたくなくて・・・
「マナリー、今私が頷いたこと分かった?」
「全然?」
「全然、分かった?」
「全然分からなかった、の方。」
それにはマナリーに抱き締められている自分の身体がサッッッと凍えたけれど・・・
「こうして・・・鎌田定光のヤリ◯ン人生の幕が閉じた・・・。」
幕を無理矢理にでも閉じておいた。
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