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マナリーのことを見ると、マナリーは真剣な顔で愛姉さんが映る鏡を捉えている。
「このヘアスタイル、前の担当者さんがやったんですよね?」
「・・・・そうだね。」
前回初めて愛姉さんの髪の毛をカットすることを止めた鎌田さんがそう返事をすると、何も知らないマナリーが安心した顔で笑った。
「ですよね、ビックリした。
店長がこんなヘアスタイルにするわけないですもんね。」
本当に何も知らないマナリーがそんなことを言った。
何も知らないからこそ、そう言った。
この髪型は中学生だった鎌田さんが初めて愛姉さんの髪の毛をカットした時から変わらない髪型なのだそう。
愛姉さんは、お母さんともお姉さん達とも全然違う容姿のことを気にしているようだったと青さんは言っていた。
“青さんも何で分からなかったのかな?
カリスマ美容師の鎌田さんが愛姉さんのことを今でもこんな髪型にしているなんて、これは鎌田さんの心の叫びじゃん。”
心の中で文句を言いながら、何度も首を傾げていた青さんの姿を思い出す。
“親友が愛してる女にこんなことを言うのはアレだけどな、愛姉からの話を聞いても愛姉と接してても、鎌田が愛姉のどこを好きになったのか俺には理解出来なかった。
あいつが言うように、愛姉には”普通“に幸せになって貰った方が良いのか・・・?“
12月31日、小関の”家“に帰ろうとしている私に青さんは迷いまくっている顔でそう言ってきた。
その顔は私も知っていた。
何度も何度も一平さんの部屋の中で見た顔だったから。
”青さんはそうしたいの?“
一平さんのように聞いた私に、青さんの瞳は”あの頃“のように揺れた。
”青さんがそうしたいなら私も付き合う。
私は青さんがやりたいと思うことに必ず付き合うから、青さんは青さんがやりたいと思うことをすれば良いよ。“
生徒会長として悩みまくることもあった青さんに一平さんが何度も言っていた言葉を、私も言った。
どこをどう見ても、”愛姉、何処にも行かないで“という、鎌田さんの叫びを感じる愛姉さんの髪型を眺める。
”やっぱり・・・俺は、鎌田に幸せになって欲しい・・・。
あの元カノ達よりも愛姉のことをそこまで愛してるかはよく分かんねーけど、年末に聞いた鎌田の気持ちはきっと本物だから・・・。
あいつは平気で嘘もつける男だけど、あの時の気持ちはきっと本物だから・・・。
俺はやっぱり、鎌田に幸せになって欲しい・・・。“
青さんの気持ちを青さん自身に再認識させた私に、青さんは玄関で少しだけ怒りながら言った。
“あいつの嫁さんがいる家になんて帰るなよ。
年末だろうが正月だろうが何だろうが、ずっとここにいれば良いだろ。“
青さんのその気持ちは受け取ることが出来たから、私は貴子さんもいるあの家にちゃんと真っ直ぐと帰ることが出来た。
貴子さんにお節料理を教えることも、家事能力が皆無な一平さんに家事を教えることだって出来た。
“マナリー・・・。”
私の初めての“友達”であるマナリーのことを心の中で呼ぶ。
“愛姉さんのことを生まれ変わらせて。”
”生まれ変わった鎌田さんが愛の言葉を伝えられた時、愛姉さんがそれを受け取る勇気を出せるように、生まれ変わらせて。”
“愛姉さんはきっと、可愛い女の子になりたいと望んでいるから。”
“可愛い女の子に生まれ変わったら、きっと鎌田さんの気持ちも受け取ることが出来る女の子になれるだろうから。”
男女の案件は“基本的”には担当しない青さんから、お互いにバタバタしている中で聞いていた情報。
恐らく、色々な言い訳を自分の中に並べているようだけど、愛姉さんが1番気にしている所はコレだった。
私としては“到底理解出来ない”ことに、恐らくこんなことだった。
”マナリー、お願いね。“
マナリーの横顔に心の中で言ったのに、マナリーの横顔は小さくだけど頷いてくれた。
「このヘアスタイル、前の担当者さんがやったんですよね?」
「・・・・そうだね。」
前回初めて愛姉さんの髪の毛をカットすることを止めた鎌田さんがそう返事をすると、何も知らないマナリーが安心した顔で笑った。
「ですよね、ビックリした。
店長がこんなヘアスタイルにするわけないですもんね。」
本当に何も知らないマナリーがそんなことを言った。
何も知らないからこそ、そう言った。
この髪型は中学生だった鎌田さんが初めて愛姉さんの髪の毛をカットした時から変わらない髪型なのだそう。
愛姉さんは、お母さんともお姉さん達とも全然違う容姿のことを気にしているようだったと青さんは言っていた。
“青さんも何で分からなかったのかな?
カリスマ美容師の鎌田さんが愛姉さんのことを今でもこんな髪型にしているなんて、これは鎌田さんの心の叫びじゃん。”
心の中で文句を言いながら、何度も首を傾げていた青さんの姿を思い出す。
“親友が愛してる女にこんなことを言うのはアレだけどな、愛姉からの話を聞いても愛姉と接してても、鎌田が愛姉のどこを好きになったのか俺には理解出来なかった。
あいつが言うように、愛姉には”普通“に幸せになって貰った方が良いのか・・・?“
12月31日、小関の”家“に帰ろうとしている私に青さんは迷いまくっている顔でそう言ってきた。
その顔は私も知っていた。
何度も何度も一平さんの部屋の中で見た顔だったから。
”青さんはそうしたいの?“
一平さんのように聞いた私に、青さんの瞳は”あの頃“のように揺れた。
”青さんがそうしたいなら私も付き合う。
私は青さんがやりたいと思うことに必ず付き合うから、青さんは青さんがやりたいと思うことをすれば良いよ。“
生徒会長として悩みまくることもあった青さんに一平さんが何度も言っていた言葉を、私も言った。
どこをどう見ても、”愛姉、何処にも行かないで“という、鎌田さんの叫びを感じる愛姉さんの髪型を眺める。
”やっぱり・・・俺は、鎌田に幸せになって欲しい・・・。
あの元カノ達よりも愛姉のことをそこまで愛してるかはよく分かんねーけど、年末に聞いた鎌田の気持ちはきっと本物だから・・・。
あいつは平気で嘘もつける男だけど、あの時の気持ちはきっと本物だから・・・。
俺はやっぱり、鎌田に幸せになって欲しい・・・。“
青さんの気持ちを青さん自身に再認識させた私に、青さんは玄関で少しだけ怒りながら言った。
“あいつの嫁さんがいる家になんて帰るなよ。
年末だろうが正月だろうが何だろうが、ずっとここにいれば良いだろ。“
青さんのその気持ちは受け取ることが出来たから、私は貴子さんもいるあの家にちゃんと真っ直ぐと帰ることが出来た。
貴子さんにお節料理を教えることも、家事能力が皆無な一平さんに家事を教えることだって出来た。
“マナリー・・・。”
私の初めての“友達”であるマナリーのことを心の中で呼ぶ。
“愛姉さんのことを生まれ変わらせて。”
”生まれ変わった鎌田さんが愛の言葉を伝えられた時、愛姉さんがそれを受け取る勇気を出せるように、生まれ変わらせて。”
“愛姉さんはきっと、可愛い女の子になりたいと望んでいるから。”
“可愛い女の子に生まれ変わったら、きっと鎌田さんの気持ちも受け取ることが出来る女の子になれるだろうから。”
男女の案件は“基本的”には担当しない青さんから、お互いにバタバタしている中で聞いていた情報。
恐らく、色々な言い訳を自分の中に並べているようだけど、愛姉さんが1番気にしている所はコレだった。
私としては“到底理解出来ない”ことに、恐らくこんなことだった。
”マナリー、お願いね。“
マナリーの横顔に心の中で言ったのに、マナリーの横顔は小さくだけど頷いてくれた。
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