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お昼休み



私がパソコンを使えないということで、色々と雑用を頼まれたけれど私はコピー機まで使えないポンコツさだった。
それで書類整理を頼まれたけれど、金具がついている初めて触るファイルも開けることが出来なければ、穴を開ける道具も使えず、テプラも使えないようマジで使えない女だった。



演技なんてしなくても、私はマジでバカな30歳の女だった。



それには本気で落ち込みながらも、ぎこちない手で紙に穴をまた開けた時・・・



「望ちゃん、お昼休みだしちょっといいかな?」



三山社長が私のことを呼びに来た。



そして・・・



「それ、1枚ずつじゃなくてもっと紙を重ねて穴が開けられるよ?」



三山社長から教えてもらい、チラッとこの仕事を振ってくれた女性社員のことを見る。
広くはないオフィスで絶対に会話が聞こえているはずなのに、その女の人は何も言わずに鞄を持って立ち上がっていた。



私はその女の人のバッグを見ながら思わず言ってしまった。



「あ、”Hatori“の新作のバッグ。」



思わず言ったそんな言葉に・・・



社内の空気が変わった。



明らかに、変わった。



それにはチラッと社内を見てみると、”Hatori“のバッグを持っていた女の人だけはやけに嬉しそうな顔で笑い、私に向かってバッグを見せてきた。



「これ、お気に入りなんです♪」



そう言ってきた女の人のことも、私のことも、三山社長のことも誰も見てくることはなく、なのに不思議と空気が変わっているように感じた。



「社長、申し訳ありませんでした。
加藤さん、ファイリングまで出来ないとは思っていなくて。
次からはもっと細かく教えます。」



「うん、ありがとう。
初めて普通の会社で働く子だから、色々と教えてあげて欲しい。」



三山社長が”Hatoriのバッグの女の人“にそう言ってから、私のことを見下ろした。



「社内、寒いかな?
コートを着たままだけど。」



「オジサンがプレゼントしてくれたコートだもん♪
ずっと着てたいんだぁ♪」



「気に入ってくれて良かったよ。
昨日のお店も喜んでいたみたいだし。」



「うん♪あんなに高級でお洒落なお店で2人でご飯が食べられて、本当に嬉しかった♪」



この社内に嫌がらせのメールの犯人がいない時、その時は三山社長にめちゃくちゃ迷惑を掛けてしまうことも懸念しながらも、そこはきっと青さんがフォローをしてくれる・・・。



いや、めちゃくちゃ怒られるだけだったらどうしよう・・・。



そう思って心配になった時・・・



「僕が代わりに渡すことにはなってしまったけど、そのコートもあのお店も、本当は星野社長からのプレゼントだからね。」



三山社長が、そう言った。
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