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「ネコ1匹でも大切な命なんだぞ。
“もしも”の時のこともちゃんと考えておかないといけない。
“もしも”の時の覚悟をちゃんと持っておかないといけない。
“可愛い可愛い、飼いたい”だけの気持ちで俺達の所に迎え入れてはいけない。
ネコ自身に“もしも”のことがあった時、そして俺達に“もしも”のことがあった時、それらもちゃんと考えた上で迎え入れるかを決めないといけない。」



中学2年生になって数日。
相変わらず学校には“友達”がいない私が帰宅途中の桜の木の下でネコを見掛けた。



母ネコにはハエが沢山たかっていて、それなのに小さなネコ2匹は母ネコに寄り添い、母ネコに甘え、母ネコを小さくだけど起こしているように見えた。



どう見てもガリガリで・・・どう見ても、顔も身体も汚く汚れていて・・・どう見ても、もう・・・もう、ダメそうで。



「勝手に動物病院に連れて行きやがって。
まずはその金どうするつもりだったんだよ?
仕事中なのに俺に余計なことで連絡してくるな。」



一平さんの部屋で今日も青さん含め夜ご飯を食べていたら、一平さんの部屋に入ってきたお兄ちゃんにめちゃくちゃ怒られた。



「ごめんなさい・・・。
でも、死にそうで・・・。」



「死にそうなのは増田財閥だろ。
先に小関の“家”が死ぬかもしれないのになにがネコだよ。」



一平さんの部屋の扉の所にお兄ちゃんに立たされ、一平さんと青さんの前でも怒られていく。



「お母さんは・・・良いんじゃないかって言ってた・・・。」



「お嬢様には言ってないよな?」



「うん、言ってない。
うちは普通の家だから・・・だから、ネコ1匹も簡単には飼えない。
お嬢様が私の味方をしてくれてお兄さんにお説教されるのも可哀想だから。」



「そうだな。だから後で言っておけ。
ネコ1匹の命の重さについてお嬢様にはお前から言っておけ。」



「“お兄ちゃん”、たかがネコだろ。」



青さんの軽い声が聞こえたかと思ったら、青さんが私の隣に立った。



「ネコ1匹だろうが2匹だろうがネコはネコだろ、そんな重い話にするな。」



「青さん、うるさいよ。
これはうちの話だから。」



お兄ちゃんが厳しい顔で青さんのことを見上げる。



「和希(かずき)、今日のバイトはもう終わってる。
俺の方が人生の先輩だろうが。」



「青さんの人生より俺の人生の方が凝縮されてる分、俺の方が人生の先輩だよ。」



「その人生の先輩が俺のことを笑わせるんじゃねーよ。
ネコだぞ?たかがネコだぞ?
マジで言ってるのかよ?」



「大真面目に言ってる。
犬を飼ってる人が“家族”だと言い張るように、ネコの命だって家族と同じ重さになる。」



「あんな犬っころ、どこが家族だよ!!
俺は犬が大嫌いなんだよ!!」



「今の彼女も犬を飼い始めたらしいな。」



「ちょこまかと空気ぶっ壊してきやがるし、構って構ってうるせーし、何が可愛いのかマジで分かんねーよ!!」



「でも、彼女にとっては家族なんだろ?
だから青さんが飼い犬のことを邪険にするとどの彼女も本気で怒り始める。」



「ブスな顔してな?
たかが犬のことでブスな顔で彼氏の俺に怒りやがってな?
その話をしてたから今の彼女は絶対に犬を飼わないなんて言ってたのに、父親が社長から子犬を押し付けられたから仕方ないとか言って犬飼いだしやがってな!?
あの嘘つき女!!!」



「女はみんな嘘をつくもんだよ。
望だってきっとある。」



「どうせちっこい嘘だろ?」



「その嘘をどう思うかは青さん次第。」



「なんだよ、お前俺に嘘ついてんのか?」



青さんがこの家に来る度に私は青さんに嘘というか・・・審査をしているということを黙っている。



「うん・・・。」



「やっぱりピーコートが欲しいか!!」



「それはもう大丈夫。」



「ピーコートくらい俺がマジで買ってやるからな!?」



「ありがとう、青さん・・・。」



「ネコの1匹や2匹、俺が貰ってやるよ!!!」



青さんの言葉に、俯いていた顔を上げた。



そしたら、見えた。



青さんの意地悪な顔が。



「せっかく拾われたのにまた捨てられる可哀想なネコを俺が拾ってやるよ!!」



青さんのその言葉に1番先に反応をしたのはお兄ちゃんだった。



「青さん、大丈夫かよ。
ネコも絶対に家族になる。
弟達よりも可愛い、世界で1番可愛い家族に、世界で1番愛してる女の子になるぞ?」





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