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“Hatori”の紙袋に入っているダッフルコートを持ち、真っ黒でダボダホのロングコートを着た私が三山社長の少し後ろを歩いていく。
下を向きながらクリスマスの夜を歩いていく。
両親からのプレゼント以外で初めてプレゼントを受け取った。
誕生日プレゼントではなくクリスマスプレゼントを受け取った。
お兄ちゃんからも一美さんからも一平さんからも青さんからも“友達”からも受け取ったことはないクリスマスプレゼントを。
誕生日プレゼントは“友達”から手紙を貰ったことがある。
それだけは受け取ったことはある。
私の“友達”を思い浮かべながら下を向き続けて歩いていた時・・・
「高過ぎて驚かせちゃったかな。
あんまり深刻にならないでね。
明日からよろしくね?」
三山社長の優しい声が聞こえ、私は顔をゆっくり上げた。
お礼を伝える為に顔をゆっくりと上げた。
いや、上げようとした。
なのにこの顔は全然上げられなくて。
全然、全然上げることが出来なくて。
だから、思い浮かべた。
一平さんではなく青さんの姿を思い浮かべた。
結局、お年玉も私に渡してくれることはなかった一平さんではなく、いつも私に心と言葉をくれる青さんの姿を思い浮かべた。
一平さんの第2ボタンを奪い取ってきてくれ、私に渡してくれた大好きな青さんの姿を思い浮かべ、顔をしっかりと上げた。
そして、三山社長に青さんの姿を重ねながら伝えた。
「コート、ありがとうございました・・・・・・っっっ」
その言葉を出した瞬間に涙が溢れた・・・。
「わたし・・・・っ私、コートが欲しくて・・・。
私、昔から・・・ずっと、コートが欲しくて・・・。
私、やっぱりコートが欲しくて・・・。」
泣きながら青さんに言う。
ブスな顔になっているのは分かっているけれど、青さんに言う。
「両親以外からの初めてのクリスマスプレゼント、嬉しかったです・・・。
私、クリスマスプレゼントにコートを貰えて凄く凄く嬉しかったです・・・。」
そう伝えてから、青さんに笑った。
号泣しながらだけど、一生懸命笑顔を作って笑った。
少しでも“可愛い”と思って貰いたくて、笑った。
「一生大切にします・・・。
このコート、一生大切にします・・・。」
号泣しながら、でも笑いながら伝えた私に、青さんは凄く真剣な顔になって。
そして、何でか凄く“怖い”とも思うような目になって。
私のすぐ目の前に立ち、私の肩を何でか片手で掴んだ。
それには不思議に思いながら“青さん”のことを見上げ続けると・・・
「ぇ・・・・・・?」
“青さん”の顔がゆっくりと・・・
ゆっくりと、降りてきて・・・
信じられないことに、私の頬に“青さん”の唇が触れた。
それには驚いた。
それには驚いたし、一気に怖くなった。
めちゃくちゃ怖くなった。
だって、この人は“青さん”ではない。
私の大好きな青さんではない。
改めてそう思ったら気持ち悪くて。
私の頬に触れたこの人の唇が・・・もう、めちゃくちゃ気持ち悪くて。
「ぁ・・・・・、ゃ・・・・・・・」
この人の・・・三山社長の顔が、凄く怖い目をした三山社長の顔が、私のことを怖いくらい見詰めながら、私の唇を見詰めながら、私の唇に向かって降りてきた。
“やめてください”
その言葉を必死で飲み込む。
私は加藤望。
私は小関の“家”の秘書、加藤の“家”の生まれ。
私の身体も私の人生も小関の“家”のモノ。
だからどんなことでもやる。
どんな汚いことでもやれる。
下を向きながらクリスマスの夜を歩いていく。
両親からのプレゼント以外で初めてプレゼントを受け取った。
誕生日プレゼントではなくクリスマスプレゼントを受け取った。
お兄ちゃんからも一美さんからも一平さんからも青さんからも“友達”からも受け取ったことはないクリスマスプレゼントを。
誕生日プレゼントは“友達”から手紙を貰ったことがある。
それだけは受け取ったことはある。
私の“友達”を思い浮かべながら下を向き続けて歩いていた時・・・
「高過ぎて驚かせちゃったかな。
あんまり深刻にならないでね。
明日からよろしくね?」
三山社長の優しい声が聞こえ、私は顔をゆっくり上げた。
お礼を伝える為に顔をゆっくりと上げた。
いや、上げようとした。
なのにこの顔は全然上げられなくて。
全然、全然上げることが出来なくて。
だから、思い浮かべた。
一平さんではなく青さんの姿を思い浮かべた。
結局、お年玉も私に渡してくれることはなかった一平さんではなく、いつも私に心と言葉をくれる青さんの姿を思い浮かべた。
一平さんの第2ボタンを奪い取ってきてくれ、私に渡してくれた大好きな青さんの姿を思い浮かべ、顔をしっかりと上げた。
そして、三山社長に青さんの姿を重ねながら伝えた。
「コート、ありがとうございました・・・・・・っっっ」
その言葉を出した瞬間に涙が溢れた・・・。
「わたし・・・・っ私、コートが欲しくて・・・。
私、昔から・・・ずっと、コートが欲しくて・・・。
私、やっぱりコートが欲しくて・・・。」
泣きながら青さんに言う。
ブスな顔になっているのは分かっているけれど、青さんに言う。
「両親以外からの初めてのクリスマスプレゼント、嬉しかったです・・・。
私、クリスマスプレゼントにコートを貰えて凄く凄く嬉しかったです・・・。」
そう伝えてから、青さんに笑った。
号泣しながらだけど、一生懸命笑顔を作って笑った。
少しでも“可愛い”と思って貰いたくて、笑った。
「一生大切にします・・・。
このコート、一生大切にします・・・。」
号泣しながら、でも笑いながら伝えた私に、青さんは凄く真剣な顔になって。
そして、何でか凄く“怖い”とも思うような目になって。
私のすぐ目の前に立ち、私の肩を何でか片手で掴んだ。
それには不思議に思いながら“青さん”のことを見上げ続けると・・・
「ぇ・・・・・・?」
“青さん”の顔がゆっくりと・・・
ゆっくりと、降りてきて・・・
信じられないことに、私の頬に“青さん”の唇が触れた。
それには驚いた。
それには驚いたし、一気に怖くなった。
めちゃくちゃ怖くなった。
だって、この人は“青さん”ではない。
私の大好きな青さんではない。
改めてそう思ったら気持ち悪くて。
私の頬に触れたこの人の唇が・・・もう、めちゃくちゃ気持ち悪くて。
「ぁ・・・・・、ゃ・・・・・・・」
この人の・・・三山社長の顔が、凄く怖い目をした三山社長の顔が、私のことを怖いくらい見詰めながら、私の唇を見詰めながら、私の唇に向かって降りてきた。
“やめてください”
その言葉を必死で飲み込む。
私は加藤望。
私は小関の“家”の秘書、加藤の“家”の生まれ。
私の身体も私の人生も小関の“家”のモノ。
だからどんなことでもやる。
どんな汚いことでもやれる。
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