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「え?望ちゃん、彼氏いたことないの?
・・・あ、でも30歳だしね、こんなに若くて可愛い見た目だけどもうそういう経験は済んでるよね?」



三山社長から聞かれたことを真面目に答えていく。
面接が始まりすぐに豪華なコース料理の食事が運ばれてきて、その食事を一緒に食べるように言われたので高くて美味しいご飯を食べながら。



「そういう経験もありません。」



そう答えた後にこのお店の中を見渡した。



「こんなにお洒落で高級なお店に来たのも初めてです。」



それから、三山さんと同じ42歳にしては若々しく、ブランド物ばかり身に付けているからかギラギラしているような三山社長のことを眺めた。



「ご飯も凄く美味しくて。」



その三山社長に少しだけ・・・少しだけ、重ねた。



青さんの姿を重ねた。



だって、私はこんな風にお洒落で高いお店に連れて来て欲しかった。
トンカツも確かに美味しかったうえに結構高かったけど、私は青さんにこんなお店に連れてきて貰いたかった。



だから、三山社長にほんの少しだけ青さんの姿を重ねてしまった。



さっきスマホで調べた質問内容とは全然違い、まるでプライベートな話のようなこんな質問だったから、面接中なのに青さんのことを思い浮かべてしまった。



私のことをこんなにお洒落で高級なお店に連れてきてくれた青さんのことを、妄想してしまった。



「私、男の人にこんなにお洒落で高級なお店に連れて来て貰ったのは初めてです。
凄く嬉しい・・・私、凄く嬉しいです。」



言い終わった後に“余計なコト”を言ってしまったと気付き、慌てて青さんの姿を消した。



「ごめんなさい・・・っっ面接中に!!
私、家政婦と清掃の仕事しかしたことがなくて・・・っっごめんなさい!!
あの、あの・・・っ私、パソコンの勉強も頑張ります!!
なので御社で働かせてください・・・!!」



フォークとナイフを置き、座ったままだけど深く深く頭を下げた。
三山社長からさっき渡された、テーブルに置いたままにしていた名刺を見下ろしながら、必死に頭を下げた。



そしたら・・・



「うん、良いよ。」



その言葉が聞こえ、パッと顔を上げた。



「元々採用をするつもりではいたんだよね、妻から望ちゃんの履歴書を受け取った時にはもう、妻からのお願いだったし。
ただ、パソコンの勉強を頑張れる子かどうかの懸念はあって。」



「そうですよね・・・。」



「うん、望ちゃんの写真凄く可愛かったし採用するつもりでは本当にいたよ!」



三山さんが冗談っぽくそう言うので、私は素直に「ありがとうございます」とお礼を伝えた。



「でも、一応確認したくて。
そしたら、待ち合わせ場所のこのお店の扉のすぐ中に立っていた望ちゃんを確認して、やっぱり採用しようと思ったよ。」



「よかった、ありがとうございます。」



凄く安心しながらまたお店の中を見渡した。



「あの・・・、扉の所で私の面接をしてすぐに終わりにする予定でしたよね?
このお店で社長とお食事をする予定だったのは奥様でしたか?
今日クリスマスですし。」



「いや、妻とはもっと夜遅くに家でパーティーをするよ。
ここは別の人と来る予定だった所で。
こういうお洒落で高くて、話題になっているお店が好きな人でさ。」



「・・・女の人ですか?」



「うん。・・・あ、でも仕事の相手だよ?
でも望ちゃんとも仕事のことだしね。
今日は望ちゃんの歓迎会にしようと思って、先方には謝罪の電話をしたよ。」



確かに、私と挨拶をした後に三山社長は誰かと電話をしていた。
それが仕事の相手だと分かり私は頷きながら三山社長に言ってみた。



「私、奥様にはとても良くして貰っていて。
旦那さんのことが大好きな素敵な奥様ですよね。」



「いや~、うちの奥さんは地味で冴えないタイプだからな。
でも、奥さんがいたから俺はここまで成功出来たし、奥さんには本当に感謝をしているよ。」



その言葉を確認出来た後は、三山さんの苦労話と自慢話が入り交じった話を聞いていった。
その話を全て頭の中に記憶していき覚えていく。
1番難関であった、パソコンスキルもない私がミツヤマの中に入り込むということ。
それが無事に達成されたこの瞬間からは、三山社長の“家の外での姿”を記録し、奥様に報告をしていくだけ。



“主人は否定をしているけれど、不倫をしているのではと思っています。
それを確かめたいのもそうですが、主人が私のことを本当のところどう思っているのかも知りたい。
そして、不倫の真実だけではなく、きっと大きく変わってしまっている主人の本当の姿を知りたい。”



涙を堪えながら青さんに・・・いや、私に話してきた奥さんの姿を思い浮かべながら、私は三山社長からのどんな話も真剣に聞き続けた。
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