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「“KONDO”からはこの内容で提示しましたが、いかがですか?
跡を継ぐ方もいないみたいですし、成田さんは“みんなのためにも店があれば”と言っていましたから・・・悪い条件ではないと思いますよ?」
三枝弁護士の話に、俺は吹き出しそうになった。
こんな買収金額でよくそんな発言が出来る。
この店の価値を成田さんが気付いていないのを三枝弁護士は知っているからでもある。
「あんな大手の事務所の弁護士さん、こんな所まで来るんですね?
“KONDO”の案件なので期待したかもしれませんが、この規模の店ですし・・・売上が一見あるように見えるかもしれませんが、そういう訳ではありませんので。」
「そうですか。」
嫌味っぽく笑う三枝弁護士の顔を見る。
この男の“グレーゾーン”を、攻める。
「それでは、別のメーカーさんにも話を持っていこうと思います。」
「別の・・・メーカーですか?
この規模の店、別のメーカーが欲しがるかどうか分かりませんが。」
「僕がM&A案件・・・買収される方の企業を担当する場合は、1社だけでなく数社に声を掛けますので。」
三枝弁護士の“グレーゾーン”に入れたまま、近藤礼二を見る。
まだ名刺を見て何かを考えていて、よく分からない男だった。
「近藤さん。」
俺が呼ぶと、近藤礼二がゆっくりと俺を見た。
こいつの“グレーゾーン”にも、攻める。
「気付くメーカーさん、いらっしゃるかもしれませんね?」
何も開かなかった手帳、それを握り締める。
近藤礼二の雰囲気が、一気に変わったから。
化け物のような男に、変わったから。
手帳を強く、握り締める・・・。
それから、成田さんのボロボロの運動靴を見下ろした。
少し深呼吸してから、また近藤礼二を・・・見る。
「誰も、気付かないといいですけどね?」
“弁護士”として“良い仕事”を・・・。
俺は、あの子を助けられるような男になるために、弁護士になった・・・。
あの子みたいな子を助けられるようになるために・・・
あの子みたいに真っ直ぐ生きても・・・
人生は上手くいかないことも多いから・・・。
そんな時、俺は少しでも助けられるような男になりたかった・・・。
そんな力が、俺は欲しかった・・・。
そんな力を、俺は今、持っている・・・。
手帳を強く強く握り締め、近藤礼二に笑い掛けた。
「僕、結構頑張りますから。」
跡を継ぐ方もいないみたいですし、成田さんは“みんなのためにも店があれば”と言っていましたから・・・悪い条件ではないと思いますよ?」
三枝弁護士の話に、俺は吹き出しそうになった。
こんな買収金額でよくそんな発言が出来る。
この店の価値を成田さんが気付いていないのを三枝弁護士は知っているからでもある。
「あんな大手の事務所の弁護士さん、こんな所まで来るんですね?
“KONDO”の案件なので期待したかもしれませんが、この規模の店ですし・・・売上が一見あるように見えるかもしれませんが、そういう訳ではありませんので。」
「そうですか。」
嫌味っぽく笑う三枝弁護士の顔を見る。
この男の“グレーゾーン”を、攻める。
「それでは、別のメーカーさんにも話を持っていこうと思います。」
「別の・・・メーカーですか?
この規模の店、別のメーカーが欲しがるかどうか分かりませんが。」
「僕がM&A案件・・・買収される方の企業を担当する場合は、1社だけでなく数社に声を掛けますので。」
三枝弁護士の“グレーゾーン”に入れたまま、近藤礼二を見る。
まだ名刺を見て何かを考えていて、よく分からない男だった。
「近藤さん。」
俺が呼ぶと、近藤礼二がゆっくりと俺を見た。
こいつの“グレーゾーン”にも、攻める。
「気付くメーカーさん、いらっしゃるかもしれませんね?」
何も開かなかった手帳、それを握り締める。
近藤礼二の雰囲気が、一気に変わったから。
化け物のような男に、変わったから。
手帳を強く、握り締める・・・。
それから、成田さんのボロボロの運動靴を見下ろした。
少し深呼吸してから、また近藤礼二を・・・見る。
「誰も、気付かないといいですけどね?」
“弁護士”として“良い仕事”を・・・。
俺は、あの子を助けられるような男になるために、弁護士になった・・・。
あの子みたいな子を助けられるようになるために・・・
あの子みたいに真っ直ぐ生きても・・・
人生は上手くいかないことも多いから・・・。
そんな時、俺は少しでも助けられるような男になりたかった・・・。
そんな力が、俺は欲しかった・・・。
そんな力を、俺は今、持っている・・・。
手帳を強く強く握り締め、近藤礼二に笑い掛けた。
「僕、結構頑張りますから。」
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