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樹里とは、家まで送ること、それと図書館のベンチだけしか外にいたことがなかった。
それが、俺の“グレーゾーン”だった。
樹里も俺にそれ以上を求めてくることもなかった。
樹里は、小学校4年生の時から俺の“グレーゾーン”によくハマる子だった。
“ハマる”という認識だった、最初の頃は。
それが数日過ごしていくうちに、気付いた。
最初は、名前のように“樹”のような子だと思っただけ。
小学校4年生なのに、幹が真っ直ぐしっかりと育っている子に見えた。
書道教室にいる“子ども”とは明らかに違った。
それでも、俺のOKとNGを行ったり来たりするような感覚もある。
なのに樹里の言動だけはこんなに面白いと思うのは、OKとNGの境界線・・・俺の“グレーゾーン”の線の上を歩いているからだと思った。
樹里という“樹”が、枝を全方面に沢山伸ばしながら、俺の“グレーゾーン”の上を歩いている。
でも、幹は真っ直ぐしっかりしているから、ブレることなくその上を歩き続けられる。
伸びた枝だけが俺のOKとNGに伸びてくるが、幹はブレることなく“グレーゾーン”を歩いているのに気付いてからは、もっと面白い子だなとは思っていた。
“子ども”でもなく、“お子さま”でもなく、
この絶妙なバランスが“お子ちゃま”だと思った。
そんな樹里に・・・初めてご飯に行こうと誘った。
こんなに楽しみになっている自分も面白くて笑いながら、大学の校舎から出て・・・
少しだけ歩いていると・・・
「あ・・・」
大学の敷地の出入口に立っている女・・・何故か今、“女”と思ってしまったが“彼女”がいて・・・。
“彼女”がこっちに向かって歩いてきてたのを見て、苦笑いというのを生まれて初めてしたように思う。
目の前に立った“彼女”は、何でもないような顔をしながらも・・・
「連絡したけど・・・?」
「あ・・・ごめん、見てなかったな!」
さっきのスマホの震えを今やっと思い出した。
樹里といたらすっかり忘れていて・・・こんなミスをするのは初めてだった。
「私の会社この近くだから、ランチでも一緒にしたかったけど・・・この子は?」
「俺の母親の書道教室の生徒!
さっきたまたま校舎で会ったんだよ!」
普段こんなテンションで話していないが、何故か言い訳をしている気分になった。
その、時・・・
「婚約したんだ?おめでとう。」
と、樹里が言って・・・。
それが樹里のNGに入ったと、分かった。
「・・・っちげーから!
誕生日プレゼントは指輪が良いって言うから買っただけ!」
「そうなんだ。
じゃあ・・・2人でランチ行ってきなよ。」
そう言って、
そう言って・・・
樹里はきちんと、“彼女”にお辞儀をした。
そうなんだよ、樹里のこういう所の枝の伸び方も、俺は好きだった。
その“好き”っていうのは、“良い子”だなと思っていた。
“彼女”がいる時は、他の女の子より当然“彼女”を優先する。
それが、俺の判断で・・・そこに“グレーゾーン”は必要ない。
そう思いながら、歩いていく樹里の後ろ姿を見る・・・。
それから、“彼女”を振り向いた。
その時・・・俺が“彼女”のOKの基準に入ったのは、よく分かった。
でも・・・
樹里の後ろ姿をもう1度見た。
俺に初めてご飯に誘われて、嬉しそうにしていた。
樹里は、嬉しそうに・・・していた。
顔に出やすいから、それはよく分かった。
でも、それは樹里の“グレーゾーン”だった。
俺に“彼女”がいることは、樹里はきっと分かっている。
だから、それが樹里の“グレーゾーン”だった。
樹里の後ろ姿を見ながら、“彼女”に「ちょっと待ってて」と伝え・・・
瞬間的に走り出した・・・。
そして・・・
樹里の肩を、強く引き・・・
振り向かせた・・・。
「樹里、連絡先・・・交換しよう。」
それが、俺の“グレーゾーン”だった。
樹里も俺にそれ以上を求めてくることもなかった。
樹里は、小学校4年生の時から俺の“グレーゾーン”によくハマる子だった。
“ハマる”という認識だった、最初の頃は。
それが数日過ごしていくうちに、気付いた。
最初は、名前のように“樹”のような子だと思っただけ。
小学校4年生なのに、幹が真っ直ぐしっかりと育っている子に見えた。
書道教室にいる“子ども”とは明らかに違った。
それでも、俺のOKとNGを行ったり来たりするような感覚もある。
なのに樹里の言動だけはこんなに面白いと思うのは、OKとNGの境界線・・・俺の“グレーゾーン”の線の上を歩いているからだと思った。
樹里という“樹”が、枝を全方面に沢山伸ばしながら、俺の“グレーゾーン”の上を歩いている。
でも、幹は真っ直ぐしっかりしているから、ブレることなくその上を歩き続けられる。
伸びた枝だけが俺のOKとNGに伸びてくるが、幹はブレることなく“グレーゾーン”を歩いているのに気付いてからは、もっと面白い子だなとは思っていた。
“子ども”でもなく、“お子さま”でもなく、
この絶妙なバランスが“お子ちゃま”だと思った。
そんな樹里に・・・初めてご飯に行こうと誘った。
こんなに楽しみになっている自分も面白くて笑いながら、大学の校舎から出て・・・
少しだけ歩いていると・・・
「あ・・・」
大学の敷地の出入口に立っている女・・・何故か今、“女”と思ってしまったが“彼女”がいて・・・。
“彼女”がこっちに向かって歩いてきてたのを見て、苦笑いというのを生まれて初めてしたように思う。
目の前に立った“彼女”は、何でもないような顔をしながらも・・・
「連絡したけど・・・?」
「あ・・・ごめん、見てなかったな!」
さっきのスマホの震えを今やっと思い出した。
樹里といたらすっかり忘れていて・・・こんなミスをするのは初めてだった。
「私の会社この近くだから、ランチでも一緒にしたかったけど・・・この子は?」
「俺の母親の書道教室の生徒!
さっきたまたま校舎で会ったんだよ!」
普段こんなテンションで話していないが、何故か言い訳をしている気分になった。
その、時・・・
「婚約したんだ?おめでとう。」
と、樹里が言って・・・。
それが樹里のNGに入ったと、分かった。
「・・・っちげーから!
誕生日プレゼントは指輪が良いって言うから買っただけ!」
「そうなんだ。
じゃあ・・・2人でランチ行ってきなよ。」
そう言って、
そう言って・・・
樹里はきちんと、“彼女”にお辞儀をした。
そうなんだよ、樹里のこういう所の枝の伸び方も、俺は好きだった。
その“好き”っていうのは、“良い子”だなと思っていた。
“彼女”がいる時は、他の女の子より当然“彼女”を優先する。
それが、俺の判断で・・・そこに“グレーゾーン”は必要ない。
そう思いながら、歩いていく樹里の後ろ姿を見る・・・。
それから、“彼女”を振り向いた。
その時・・・俺が“彼女”のOKの基準に入ったのは、よく分かった。
でも・・・
樹里の後ろ姿をもう1度見た。
俺に初めてご飯に誘われて、嬉しそうにしていた。
樹里は、嬉しそうに・・・していた。
顔に出やすいから、それはよく分かった。
でも、それは樹里の“グレーゾーン”だった。
俺に“彼女”がいることは、樹里はきっと分かっている。
だから、それが樹里の“グレーゾーン”だった。
樹里の後ろ姿を見ながら、“彼女”に「ちょっと待ってて」と伝え・・・
瞬間的に走り出した・・・。
そして・・・
樹里の肩を、強く引き・・・
振り向かせた・・・。
「樹里、連絡先・・・交換しよう。」
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