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第72話 水槽購入
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「今日は水槽を買いに行かない?」と真央が言った。
9月第3金曜日の放課後のことだった。
10月第2週の土曜日と日曜日に開催される文化祭で、1年1組は釣り展示を行うことになっている。
コアメンバー5人の打ち合わせで、模造紙に書く釣りの紹介と実物の釣り具展示の他に、ミニ水族館をつくることが決まっている。
透明な水槽を並べて、釣った淡水魚を泳がせる。素敵な展示になるのではないか、と5人は予感していた。
1万5千円以内なら、文化祭実行委員会の会計から予算が出ることになっている。
「行こうぜ! 今度こそおれもつきあうからな!」
佐藤が強く主張し、他のメンバーはうなずいた。
「この近くで水槽を買うなら、イタコ金魚店しかありませんっ。みんなで行きましょう!」
西湖の案内で、メンバーはイタコ駅前商店街にある金魚店へと向かった。
「おうっ、西湖ちゃん!」
「こんにちは、店長さんっ!」
西湖はイタコ金魚店の店長とも知り合いだった。
店長はエプロンが似合う小太りな中年男性。
店内には大小さまざまな水槽が展示されていて、いろいろな種類の金魚が泳いでいた。錦鯉や熱帯魚、メダカやタナゴなどもいた。
「水槽を買いたいんですっ。予算は1万5千円です。できるだけたくさん買いたいんですけどっ」
「1万5千円じゃたくさんは買えないよ。西湖ちゃんなら知っているだろう?」
「まあそうですね。知ってます。でも文化祭で小さな水族館をやるので、たくさんほしいのですっ」
「無理を言わないでおくれよ。ガラス製の水槽で、30センチ水槽で4個、45センチ水槽で3個、60センチ水槽で2個ってところだな。アクリル製の水槽だと、ひとつずつ少なくしか買えないよ」
「うーん、やっぱりそうですか。高校の行事用に買うのでも、まけてはもらえませんかっ」
「まけられないねえ」
「だそうです。みなさん、どうしますか?」
西湖から話を振られて、他のメンバーは困惑した。彼女らは判断材料を持っていなかった。
「どういう考え方で買えばいいのかしら?」
「魚の種類を分けるなら、30センチ水槽でもいいですね。混泳させるなら、60センチ水槽が必要ですっ」
「どちらがいいの?」
「好みの問題ですね。ボクは圧倒的に60センチ水槽が好きですっ。やっぱり大きい水槽は迫力がありますからっ!」
「私も60センチ水槽がいいと思う。ふたつだけでも仕方がない。タナゴメインの小魚水槽とヘラブナメインの中型魚水槽にしてはどう?」
「あたしは美沙希の意見に賛成!」
「おれもそれでいいよ」
「決まりね。西湖、品物の選定は任せるわ」
「任されましたっ!」
西湖と店長が交渉して、幅60センチ、奥行き30センチ、高さ45センチの一番安いガラス製の水槽を2個購入することになった。代金は1万4千円。来週の月曜日に水郷高校1年1組の教室に運送してくれることになった。
代金は持ち合わせのある美沙希が立て替えで支払った。領収書と引き換えに、文化祭実行委員会からお金をもらえることになっている。
「着々と準備が進んでいますねっ。明日はこの水槽に入れるタナゴを釣りますよ。美沙希ちゃん、がんばりましょう!」
「あたしも釣るつもりだけど?」
「泥船のカズミちゃんには期待していません」
「いつのまにか泥船にされている! 西湖ちゃんが泥船じゃなかったの?」
「ボクは戦艦ですが?」
「差が大きすぎる! 太刀打ちできない!」
ふたりのやりとりに、真央と佐藤と店長が笑った。
美沙希だけは、本当に不穏なものを感じて、笑えなかった。
9月第3金曜日の放課後のことだった。
10月第2週の土曜日と日曜日に開催される文化祭で、1年1組は釣り展示を行うことになっている。
コアメンバー5人の打ち合わせで、模造紙に書く釣りの紹介と実物の釣り具展示の他に、ミニ水族館をつくることが決まっている。
透明な水槽を並べて、釣った淡水魚を泳がせる。素敵な展示になるのではないか、と5人は予感していた。
1万5千円以内なら、文化祭実行委員会の会計から予算が出ることになっている。
「行こうぜ! 今度こそおれもつきあうからな!」
佐藤が強く主張し、他のメンバーはうなずいた。
「この近くで水槽を買うなら、イタコ金魚店しかありませんっ。みんなで行きましょう!」
西湖の案内で、メンバーはイタコ駅前商店街にある金魚店へと向かった。
「おうっ、西湖ちゃん!」
「こんにちは、店長さんっ!」
西湖はイタコ金魚店の店長とも知り合いだった。
店長はエプロンが似合う小太りな中年男性。
店内には大小さまざまな水槽が展示されていて、いろいろな種類の金魚が泳いでいた。錦鯉や熱帯魚、メダカやタナゴなどもいた。
「水槽を買いたいんですっ。予算は1万5千円です。できるだけたくさん買いたいんですけどっ」
「1万5千円じゃたくさんは買えないよ。西湖ちゃんなら知っているだろう?」
「まあそうですね。知ってます。でも文化祭で小さな水族館をやるので、たくさんほしいのですっ」
「無理を言わないでおくれよ。ガラス製の水槽で、30センチ水槽で4個、45センチ水槽で3個、60センチ水槽で2個ってところだな。アクリル製の水槽だと、ひとつずつ少なくしか買えないよ」
「うーん、やっぱりそうですか。高校の行事用に買うのでも、まけてはもらえませんかっ」
「まけられないねえ」
「だそうです。みなさん、どうしますか?」
西湖から話を振られて、他のメンバーは困惑した。彼女らは判断材料を持っていなかった。
「どういう考え方で買えばいいのかしら?」
「魚の種類を分けるなら、30センチ水槽でもいいですね。混泳させるなら、60センチ水槽が必要ですっ」
「どちらがいいの?」
「好みの問題ですね。ボクは圧倒的に60センチ水槽が好きですっ。やっぱり大きい水槽は迫力がありますからっ!」
「私も60センチ水槽がいいと思う。ふたつだけでも仕方がない。タナゴメインの小魚水槽とヘラブナメインの中型魚水槽にしてはどう?」
「あたしは美沙希の意見に賛成!」
「おれもそれでいいよ」
「決まりね。西湖、品物の選定は任せるわ」
「任されましたっ!」
西湖と店長が交渉して、幅60センチ、奥行き30センチ、高さ45センチの一番安いガラス製の水槽を2個購入することになった。代金は1万4千円。来週の月曜日に水郷高校1年1組の教室に運送してくれることになった。
代金は持ち合わせのある美沙希が立て替えで支払った。領収書と引き換えに、文化祭実行委員会からお金をもらえることになっている。
「着々と準備が進んでいますねっ。明日はこの水槽に入れるタナゴを釣りますよ。美沙希ちゃん、がんばりましょう!」
「あたしも釣るつもりだけど?」
「泥船のカズミちゃんには期待していません」
「いつのまにか泥船にされている! 西湖ちゃんが泥船じゃなかったの?」
「ボクは戦艦ですが?」
「差が大きすぎる! 太刀打ちできない!」
ふたりのやりとりに、真央と佐藤と店長が笑った。
美沙希だけは、本当に不穏なものを感じて、笑えなかった。
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