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第64話 釣り展示の方針
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9月の第2木曜日の放課後も、1年1組文化祭コアメンバー5人の打ち合わせは行われた。
そして、釣り展示の基本的な方針がまとまってきた。
まず、海水魚は除外し、淡水魚の釣りだけを紹介することが決定した。
イタコ市では、フナ、コイ、タナゴ、ワカサギ、ブラックバス、チャネルキャットフィッシュ、ブルーギルなどの淡水魚が釣れる。このうち後者の3種類は特定外来生物なので、生きたままの展示はできない。
前者で小さな水族館をつくることになった。
タナゴにはいろいろな種類があり、オオタナゴは特定外来生物なので、やはり水族館展示はできない。
「うちの親父がヘラブナを釣るから、フナはおれに任せてくれ」
「コイは吸い込み釣りをやれば釣れる。外道のキャットフィッシュがやたらと釣れて困るけど」
「タナゴはボクに任せてくださいっ。美沙希ちゃん、一緒に釣りましょう」
「あたしにもタナゴ釣りを教えてよ」
「仕方ないですね。お昼ごはんを奢ってくれるなら、教えてあげますよ。渋々と」
「塩対応!」
「ワカサギは釣れるの?」
「やったことないけど、たぶんチャレンジすれば釣れる」
釣り具展示は、美沙希がブラックバス、西湖がタナゴ、佐藤がヘラブナを担当することになった。
釣りも主に3人でやって、写真撮影をカズミと真央が行う。
釣りの記事は真央を除く4人で原稿を書く。
模造紙に書いたり貼ったりする材料が揃ったら、クラスメイト全員で模造紙への清書やクラスの装飾などを行う。総指揮は真央がする。
打ち合わせの最後に、美沙希が言った。
「明日から次の日曜日まで、文化祭の仕事は休ませてほしい。日曜日にはブラックバス雑誌の取材があるから」
「もちろんかまわないけれど、その取材の写真撮影をさせてもらえないかなあ? 文化祭で使えると思う。プロの雑誌記者さんの邪魔はしないように気をつけるから」
「ボク、一緒に釣りしたいですっ。タナゴ型のクランクベイトを持っています。少しだけバス釣りをしたことがありますっ」
「えっと、私には西湖ちゃんと真央が参加してよいのかどうかわからない」
「あたしが小鳥遊さんに電話してみるよ」
カズミが小鳥遊のスマホの番号に電話をかけた。
「もしもし、小鳥遊さんですか? 琵琶カズミです」
「よお、オカッパリの侍女、元気か?」
「元気ですよ! その変な呼び方、やめてください!」
「用件はなんだ? 日曜日の取材のことか?」
「そうなんです。実は、うちの高校の文化祭で、釣り展示をやることになりまして。で、取材の日に取材の取材で、写真撮影をさせてもらいたいんです。うちのクラスの委員長が撮影したいって言ってるんです。あと、西湖ちゃんっていうタナゴ釣りが趣味の子が、タナゴの形のルアーで釣りに参加したいって言ってるの。いいですか?」
「おまえの話はわかりにくいが、要するに、全部で4人来るってことだな。邪魔しなければいいぜ。あと、報酬はおまえと川村にしか出せないぞ」
「もちろん邪魔しませんし、お金はあたしと美沙希だけでいいです」
「わかった、いいぜ。その文化祭の釣り展示とやらにも興味がある。時間があったら、見に行ってやるよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。失礼します」
カズミはみんなに笑いかけた。
「小鳥遊さん、オッケーしてくれたよ。真央は写真撮影していいし、西湖ちゃんも釣りしていいよ」
「よし、いい写真を撮るわよ」
「やった! タナゴルアーで釣って、その小鳥遊さんって記者を驚かせてやりますよっ」
「おれの参加はだめなの?」
「あ、佐藤くんの参加許可は取らなかった。あきらめて」
「ちぇっ」
「4人で釣りに行く。小鳥遊さんも入れたら、5人。そんなの初めて」
「美沙希も成長したね。もう対人恐怖症を克服したんじゃない?」
「やめてカズミっ! 文化祭実行委員会は怖いっ! カズミがいなきゃだめ」
「わかったわよ。いつまでも一緒にいるわ」
「ボクも一緒にいてあげますっ」
「西湖ちゃん、美沙希に触るなーっ!」
カズミが腕を振り上げ、西湖が逃げた。
美沙希はそれを見て微笑んでいた。
そして、釣り展示の基本的な方針がまとまってきた。
まず、海水魚は除外し、淡水魚の釣りだけを紹介することが決定した。
イタコ市では、フナ、コイ、タナゴ、ワカサギ、ブラックバス、チャネルキャットフィッシュ、ブルーギルなどの淡水魚が釣れる。このうち後者の3種類は特定外来生物なので、生きたままの展示はできない。
前者で小さな水族館をつくることになった。
タナゴにはいろいろな種類があり、オオタナゴは特定外来生物なので、やはり水族館展示はできない。
「うちの親父がヘラブナを釣るから、フナはおれに任せてくれ」
「コイは吸い込み釣りをやれば釣れる。外道のキャットフィッシュがやたらと釣れて困るけど」
「タナゴはボクに任せてくださいっ。美沙希ちゃん、一緒に釣りましょう」
「あたしにもタナゴ釣りを教えてよ」
「仕方ないですね。お昼ごはんを奢ってくれるなら、教えてあげますよ。渋々と」
「塩対応!」
「ワカサギは釣れるの?」
「やったことないけど、たぶんチャレンジすれば釣れる」
釣り具展示は、美沙希がブラックバス、西湖がタナゴ、佐藤がヘラブナを担当することになった。
釣りも主に3人でやって、写真撮影をカズミと真央が行う。
釣りの記事は真央を除く4人で原稿を書く。
模造紙に書いたり貼ったりする材料が揃ったら、クラスメイト全員で模造紙への清書やクラスの装飾などを行う。総指揮は真央がする。
打ち合わせの最後に、美沙希が言った。
「明日から次の日曜日まで、文化祭の仕事は休ませてほしい。日曜日にはブラックバス雑誌の取材があるから」
「もちろんかまわないけれど、その取材の写真撮影をさせてもらえないかなあ? 文化祭で使えると思う。プロの雑誌記者さんの邪魔はしないように気をつけるから」
「ボク、一緒に釣りしたいですっ。タナゴ型のクランクベイトを持っています。少しだけバス釣りをしたことがありますっ」
「えっと、私には西湖ちゃんと真央が参加してよいのかどうかわからない」
「あたしが小鳥遊さんに電話してみるよ」
カズミが小鳥遊のスマホの番号に電話をかけた。
「もしもし、小鳥遊さんですか? 琵琶カズミです」
「よお、オカッパリの侍女、元気か?」
「元気ですよ! その変な呼び方、やめてください!」
「用件はなんだ? 日曜日の取材のことか?」
「そうなんです。実は、うちの高校の文化祭で、釣り展示をやることになりまして。で、取材の日に取材の取材で、写真撮影をさせてもらいたいんです。うちのクラスの委員長が撮影したいって言ってるんです。あと、西湖ちゃんっていうタナゴ釣りが趣味の子が、タナゴの形のルアーで釣りに参加したいって言ってるの。いいですか?」
「おまえの話はわかりにくいが、要するに、全部で4人来るってことだな。邪魔しなければいいぜ。あと、報酬はおまえと川村にしか出せないぞ」
「もちろん邪魔しませんし、お金はあたしと美沙希だけでいいです」
「わかった、いいぜ。その文化祭の釣り展示とやらにも興味がある。時間があったら、見に行ってやるよ」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。失礼します」
カズミはみんなに笑いかけた。
「小鳥遊さん、オッケーしてくれたよ。真央は写真撮影していいし、西湖ちゃんも釣りしていいよ」
「よし、いい写真を撮るわよ」
「やった! タナゴルアーで釣って、その小鳥遊さんって記者を驚かせてやりますよっ」
「おれの参加はだめなの?」
「あ、佐藤くんの参加許可は取らなかった。あきらめて」
「ちぇっ」
「4人で釣りに行く。小鳥遊さんも入れたら、5人。そんなの初めて」
「美沙希も成長したね。もう対人恐怖症を克服したんじゃない?」
「やめてカズミっ! 文化祭実行委員会は怖いっ! カズミがいなきゃだめ」
「わかったわよ。いつまでも一緒にいるわ」
「ボクも一緒にいてあげますっ」
「西湖ちゃん、美沙希に触るなーっ!」
カズミが腕を振り上げ、西湖が逃げた。
美沙希はそれを見て微笑んでいた。
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