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第60話 永遠のしあわせ
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放課後、美沙希とカズミが学校裏の林の中にある池に釣りに行こうとしたら、真央がついてきた。
「なんで来るの?」
「文化祭のためよ。これからはあなたたちの釣りを写真に撮らさせてもらうわ。展示する写真を撮りためなくちゃ」
「なんか嫌」
「まあいいじゃない。真央は真面目なのよ。やらせてあげましょ」
美沙希がハードルアーを使い、カズミがソフトルアーを使うところを、真央はスマホで撮影した。
美沙希はスピナーベイトで1匹釣り、カズミはカットテールワームで3匹釣った。
暗くなり、釣りを終えてかたづけているとき、真央がふたりに話しかけた。
「ねえ、どうしてそんなに釣りが好きなの? 釣りの魅力ってなに?」
美沙希が答えた。
「作家の開高健が著書の『オーパ!』で中国の古いことわざを紹介しているわ。
一時間、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら、結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら、豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい、とね。
つまり、釣りは永遠に飽きないほど、奥が深いってこと。面白いの」
「えーっ、それはちがうと思うな。あたしは永遠のしあわせをくれるのは、愛だと思うの」
「愛なんて、移ろうものでしょ。人間は怖い。釣りは怖くない」
「あたしは怖くないでしょう?」
「確かにカズミは怖くない。でも、それは例外的存在」
「例外的存在との愛が、永遠のしあわせをくれるのよ」
「カズミだって、いつかは去ってしまう。永遠のしあわせをくれるのは、釣りしかない」
「あたしは去らないよ」
「そう言ってくれるのはうれしい。でも人間は変わるもの」
「あたしの愛は変わらない」
「永遠に友だちでいてくれるの?」
「永遠に友だち? それはわからないな……」
「やっぱり信じられるのは釣りよ。釣りは裏切らない」
ふたりの会話を真央はじっと聞いていた。
カズミが美沙希に永遠の愛を語るのを聞いて、なぜか胸がズキリとした。
そう言えばわたしは、誰かを深く愛したことがないな、と思った。
恋愛をしたことがない。
いまカズミのことがとても気になっている。
もしかしてこれが恋なのか、と思わないでもなかった。
「なんで来るの?」
「文化祭のためよ。これからはあなたたちの釣りを写真に撮らさせてもらうわ。展示する写真を撮りためなくちゃ」
「なんか嫌」
「まあいいじゃない。真央は真面目なのよ。やらせてあげましょ」
美沙希がハードルアーを使い、カズミがソフトルアーを使うところを、真央はスマホで撮影した。
美沙希はスピナーベイトで1匹釣り、カズミはカットテールワームで3匹釣った。
暗くなり、釣りを終えてかたづけているとき、真央がふたりに話しかけた。
「ねえ、どうしてそんなに釣りが好きなの? 釣りの魅力ってなに?」
美沙希が答えた。
「作家の開高健が著書の『オーパ!』で中国の古いことわざを紹介しているわ。
一時間、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら、結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら、豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい、とね。
つまり、釣りは永遠に飽きないほど、奥が深いってこと。面白いの」
「えーっ、それはちがうと思うな。あたしは永遠のしあわせをくれるのは、愛だと思うの」
「愛なんて、移ろうものでしょ。人間は怖い。釣りは怖くない」
「あたしは怖くないでしょう?」
「確かにカズミは怖くない。でも、それは例外的存在」
「例外的存在との愛が、永遠のしあわせをくれるのよ」
「カズミだって、いつかは去ってしまう。永遠のしあわせをくれるのは、釣りしかない」
「あたしは去らないよ」
「そう言ってくれるのはうれしい。でも人間は変わるもの」
「あたしの愛は変わらない」
「永遠に友だちでいてくれるの?」
「永遠に友だち? それはわからないな……」
「やっぱり信じられるのは釣りよ。釣りは裏切らない」
ふたりの会話を真央はじっと聞いていた。
カズミが美沙希に永遠の愛を語るのを聞いて、なぜか胸がズキリとした。
そう言えばわたしは、誰かを深く愛したことがないな、と思った。
恋愛をしたことがない。
いまカズミのことがとても気になっている。
もしかしてこれが恋なのか、と思わないでもなかった。
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