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第47話 釣具店バイト
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7月21日、カズミは水郷釣具店のレジに立っていた。
店内には店長とカズミ、それから20代半ばくらいに見える男性がいる。
「この人はうちで2年ほどバイトしてくれている津田くんだ」と店長に紹介された。
「おはようございます! 今日からアルバイトをさせていただくことになりました琵琶カズミです。よろしくお願いします」とあいさつしたのに、津田は軽く頭を下げただけで、名乗りもしなかった。
不安だが、やるしかない。
カズミはレジに立って、店内を見つめつづけた。
お客さんが来ると、バーコードリーダーを右手に持ち、左手で商品を持って、バーコードを読んでピッ。バーコードを読んでピッ。
このくり返しが仕事だ。
お客さんがいないときは、商品の棚を見て回った。
ルアーコーナーは、ハードルアーとソフトルアーに大別されている。さらにハードルアーはトップウォーターとその他に分かれていた。
カズミはトップウォーターの1種、ペンシルベイトを見た。
ヘドン社のザラスプーク、メガバス社のドックX、ラッキークラフト社のサマー、O.S.P社のベントミノー、ティムコ社のレッドペッパー……。ペンシルバイトだけでも各種ある。しかも色ちがいが多数あり、どれを買ったらいいのかわからない。
「何をおすすめすればいいのか、さっぱりわかりません」とカズミは店長に言った。
「バイト代で買って、使ってみろ。釣れたルアーをお客にすすめればいい」
「バイト代を吸い上げて、店長のひとり勝ちですね」
「そうだな。はははは」
若くハンサムな店長が笑った。
10時の開店から12時まで、お客さんは10人程度だった。針やおもりなどの小物を買う人、ソフトルアーを購入する人、海釣りの仕掛けを買う人……いろいろなものが売れた。バーコードを読んでピッ、バーコードを読んでピッ。
12時から1時間の昼休み。カズミは定食屋さんで唐揚げ定食を食べた。美沙希がいたらラーメンだっただろうな、と思う。あの子はいま、何をしているんだろう?
午後1時に水郷釣具店に戻り、またレジに立つ。
「おれは釣りに行ってくる」と店長が言った。
「えーっ、あたしとあの人だけにするんですかあ? あのバイトの人、あたしと口をきいてくれないんですけど」
「だいじょうぶだ。彼は釣りオタクで、釣り具には詳しい。確かに無口で客商売向きの性格じゃない。お金を扱うのも嫌がる。女の子の扱いもうまくなさそうだ。でもだいじょうぶだ。なんとかなるさ」
「不安しかないです。店長、行かないでください!」
「おれが釣りに行くためにおまえを雇ったんだが」
「でもまだ初日ですよ?」
「レジが扱えればだいじょうぶだ」
店長はロッドを持って出かけてしまった。
カズミは沈黙をつづける津田とふたりで店に残された。
お客さんはぽつぽつとやってきた。
「いまどこが釣れているんですか?」と大学生ぐらいの男の人から訊かれた。津田に視線をやるが、彼は棚を整理していて、こちらには目もくれない。
「この近くだと、キタトネ川ですかね。あはは……」とカズミは答えた。
「ヤマセンコーとバレット、どっちが釣れますか?」と中年男性から訊かれた。バレット使ったことないからわかんねー!
「あたしはヤマセンコーが好きですね。あはは……」
「じゃあヤマセンコーを買いますね」
うわー、今度バレット使ってみなくちゃ!
午後6時に店長が帰ってきて、カズミは心からほっとした。
午後7時閉店。彼女はものすごく疲れていた。
サワムラ社のワーム、バレットを購入して帰宅した。
ヤマセンコーとバレットは形が似ている。どちらも棒のような形をしたソフトルアーだ。スティックベイトと呼ばれるワーム。
明日もバイトだ。早朝にバレットを試してから出勤しようと決めた。
晩ご飯を食べて、お風呂に入って、速攻で寝た。
レジが壊れて立ち往生している夢を見た。
店内には店長とカズミ、それから20代半ばくらいに見える男性がいる。
「この人はうちで2年ほどバイトしてくれている津田くんだ」と店長に紹介された。
「おはようございます! 今日からアルバイトをさせていただくことになりました琵琶カズミです。よろしくお願いします」とあいさつしたのに、津田は軽く頭を下げただけで、名乗りもしなかった。
不安だが、やるしかない。
カズミはレジに立って、店内を見つめつづけた。
お客さんが来ると、バーコードリーダーを右手に持ち、左手で商品を持って、バーコードを読んでピッ。バーコードを読んでピッ。
このくり返しが仕事だ。
お客さんがいないときは、商品の棚を見て回った。
ルアーコーナーは、ハードルアーとソフトルアーに大別されている。さらにハードルアーはトップウォーターとその他に分かれていた。
カズミはトップウォーターの1種、ペンシルベイトを見た。
ヘドン社のザラスプーク、メガバス社のドックX、ラッキークラフト社のサマー、O.S.P社のベントミノー、ティムコ社のレッドペッパー……。ペンシルバイトだけでも各種ある。しかも色ちがいが多数あり、どれを買ったらいいのかわからない。
「何をおすすめすればいいのか、さっぱりわかりません」とカズミは店長に言った。
「バイト代で買って、使ってみろ。釣れたルアーをお客にすすめればいい」
「バイト代を吸い上げて、店長のひとり勝ちですね」
「そうだな。はははは」
若くハンサムな店長が笑った。
10時の開店から12時まで、お客さんは10人程度だった。針やおもりなどの小物を買う人、ソフトルアーを購入する人、海釣りの仕掛けを買う人……いろいろなものが売れた。バーコードを読んでピッ、バーコードを読んでピッ。
12時から1時間の昼休み。カズミは定食屋さんで唐揚げ定食を食べた。美沙希がいたらラーメンだっただろうな、と思う。あの子はいま、何をしているんだろう?
午後1時に水郷釣具店に戻り、またレジに立つ。
「おれは釣りに行ってくる」と店長が言った。
「えーっ、あたしとあの人だけにするんですかあ? あのバイトの人、あたしと口をきいてくれないんですけど」
「だいじょうぶだ。彼は釣りオタクで、釣り具には詳しい。確かに無口で客商売向きの性格じゃない。お金を扱うのも嫌がる。女の子の扱いもうまくなさそうだ。でもだいじょうぶだ。なんとかなるさ」
「不安しかないです。店長、行かないでください!」
「おれが釣りに行くためにおまえを雇ったんだが」
「でもまだ初日ですよ?」
「レジが扱えればだいじょうぶだ」
店長はロッドを持って出かけてしまった。
カズミは沈黙をつづける津田とふたりで店に残された。
お客さんはぽつぽつとやってきた。
「いまどこが釣れているんですか?」と大学生ぐらいの男の人から訊かれた。津田に視線をやるが、彼は棚を整理していて、こちらには目もくれない。
「この近くだと、キタトネ川ですかね。あはは……」とカズミは答えた。
「ヤマセンコーとバレット、どっちが釣れますか?」と中年男性から訊かれた。バレット使ったことないからわかんねー!
「あたしはヤマセンコーが好きですね。あはは……」
「じゃあヤマセンコーを買いますね」
うわー、今度バレット使ってみなくちゃ!
午後6時に店長が帰ってきて、カズミは心からほっとした。
午後7時閉店。彼女はものすごく疲れていた。
サワムラ社のワーム、バレットを購入して帰宅した。
ヤマセンコーとバレットは形が似ている。どちらも棒のような形をしたソフトルアーだ。スティックベイトと呼ばれるワーム。
明日もバイトだ。早朝にバレットを試してから出勤しようと決めた。
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