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第28話 鶏そば一差
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「そろそろお腹が空いてきたね」と美沙希が言った。
「そうね。このあたり、お店はあるの?」
「塩ラーメンの名店があるんだけど、食べたい?」
「またラーメンかよって突っ込んでいい?」
「鶏そば一差っていうラーメン屋さんがあるんだよねー。塩ラーメンなら日本でも指折りって私は思っているお店なんだけど」
「はいはい。そこに行きましょ」
「やったー、カズミ大好きー」
美沙希がまたハグしてきたが、カズミはもう驚かなかった。顔は自然とニヤけてしまったけれど。
イナシキ大橋まで戻って、橋を渡らずに県道を南下した。
県道から国道に入ってまもなく、白地に黒で「鶏そば一差」と書かれた看板が見えた。
ここでも行列ができていて、美沙希とカズミは最後尾に並んだ。
10人ほどの待ちだ。
15分程度立ち話をしていたら、順番が来た。
店内に入るとすぐに、食券の自動販売機があった。
あっさり鶏そば 750円
濃厚鶏そば 830円
つけ麺 780円
替え玉 100円
「私はあっさり鶏そばと替え玉ね」
美沙希はすぐに決めて、1000円札を入れ、おつりを取った。
「えっと、おすすめはあっさりなの?」
「いや、この店のメニューはどれも美味しいよ」
「うっ、どうしよう?」
カズミは迷ったが、後ろに別のお客さんが待っている。
「えーい、あたしは濃厚鶏そばと替え玉で!」
店内にはカウンター席しかない。
ふたりは並んで座った。
店員が食券を見て、麺を茹で始めた。
「あれを見て」
美沙希が壁を指さした。
ラーメンの写真と説明書きが貼ってあった。
「あっさり鶏そばはしっかりした鶏の旨味と深みを残しつつ、さっぱりした後口が自慢の透き通った清湯スープ。濃厚鶏そばは黄金色に輝く鶏の旨味が凝縮されたトロみのある極上の白湯スープ。どちらも山陰産の大山鶏で出汁を取っています」
「うわ、美味しそうだね」
「ふふっ、美味しいわよ」
5分ほど待って、鶏そばがカウンターに運ばれてきた。
美沙希の前に置かれたあっさり鶏そばのスープは澄んでいて、鶏のチャーシューが乗っている。レンゲでスープを飲む。
「うん、やっぱり美味しい。透明なスープなのに、しっかりと旨味があるのよね~」
カズミが頼んだ濃厚鶏そばのスープは白濁していて、鶏団子が転がっている。ひと口すくって飲んだ。
「おわっ、確かに濃厚だよ。でも上品な濃さ。旨いよ!」
ふたりはストレートの細麺を食べ始めた。
ずずっ、ずずっとお腹におさまっていく。
「替え玉ください! ふたり分!」と美沙希が言った。
店員が替え玉をふたりの丼に入れてくれた。
「味変しよう。私のあっさりには柚子胡椒、カズミの濃厚にはフライドエシャロットが合うよ」
美沙希がふたつのラーメンの味を変えた。
「うん。柚子胡椒の酸味と辛味が美味しいよ」
「うわっ、フライドエシャロットでさらに濃厚になった。旨い!」
美沙希とカズミはすっかり満足して、お店を出た。
「もしかして水郷って、ラーメン激戦区なのかな?」
「激戦区ってほどではないけど、名店はいくつかあるね。地元民に愛されているし、観光客や釣り人もラーメン目当ての人がけっこういるんだよ」
「知らなかった……」
「いつもひとりで食べてた。カズミと一緒に食べると、美味しさもひとしおだよ!」
上機嫌な美沙希を見て、カズミは微笑んだ。
数時間後、彼女が泣き出すなんて、このときは予想もしていなかった。
「そうね。このあたり、お店はあるの?」
「塩ラーメンの名店があるんだけど、食べたい?」
「またラーメンかよって突っ込んでいい?」
「鶏そば一差っていうラーメン屋さんがあるんだよねー。塩ラーメンなら日本でも指折りって私は思っているお店なんだけど」
「はいはい。そこに行きましょ」
「やったー、カズミ大好きー」
美沙希がまたハグしてきたが、カズミはもう驚かなかった。顔は自然とニヤけてしまったけれど。
イナシキ大橋まで戻って、橋を渡らずに県道を南下した。
県道から国道に入ってまもなく、白地に黒で「鶏そば一差」と書かれた看板が見えた。
ここでも行列ができていて、美沙希とカズミは最後尾に並んだ。
10人ほどの待ちだ。
15分程度立ち話をしていたら、順番が来た。
店内に入るとすぐに、食券の自動販売機があった。
あっさり鶏そば 750円
濃厚鶏そば 830円
つけ麺 780円
替え玉 100円
「私はあっさり鶏そばと替え玉ね」
美沙希はすぐに決めて、1000円札を入れ、おつりを取った。
「えっと、おすすめはあっさりなの?」
「いや、この店のメニューはどれも美味しいよ」
「うっ、どうしよう?」
カズミは迷ったが、後ろに別のお客さんが待っている。
「えーい、あたしは濃厚鶏そばと替え玉で!」
店内にはカウンター席しかない。
ふたりは並んで座った。
店員が食券を見て、麺を茹で始めた。
「あれを見て」
美沙希が壁を指さした。
ラーメンの写真と説明書きが貼ってあった。
「あっさり鶏そばはしっかりした鶏の旨味と深みを残しつつ、さっぱりした後口が自慢の透き通った清湯スープ。濃厚鶏そばは黄金色に輝く鶏の旨味が凝縮されたトロみのある極上の白湯スープ。どちらも山陰産の大山鶏で出汁を取っています」
「うわ、美味しそうだね」
「ふふっ、美味しいわよ」
5分ほど待って、鶏そばがカウンターに運ばれてきた。
美沙希の前に置かれたあっさり鶏そばのスープは澄んでいて、鶏のチャーシューが乗っている。レンゲでスープを飲む。
「うん、やっぱり美味しい。透明なスープなのに、しっかりと旨味があるのよね~」
カズミが頼んだ濃厚鶏そばのスープは白濁していて、鶏団子が転がっている。ひと口すくって飲んだ。
「おわっ、確かに濃厚だよ。でも上品な濃さ。旨いよ!」
ふたりはストレートの細麺を食べ始めた。
ずずっ、ずずっとお腹におさまっていく。
「替え玉ください! ふたり分!」と美沙希が言った。
店員が替え玉をふたりの丼に入れてくれた。
「味変しよう。私のあっさりには柚子胡椒、カズミの濃厚にはフライドエシャロットが合うよ」
美沙希がふたつのラーメンの味を変えた。
「うん。柚子胡椒の酸味と辛味が美味しいよ」
「うわっ、フライドエシャロットでさらに濃厚になった。旨い!」
美沙希とカズミはすっかり満足して、お店を出た。
「もしかして水郷って、ラーメン激戦区なのかな?」
「激戦区ってほどではないけど、名店はいくつかあるね。地元民に愛されているし、観光客や釣り人もラーメン目当ての人がけっこういるんだよ」
「知らなかった……」
「いつもひとりで食べてた。カズミと一緒に食べると、美味しさもひとしおだよ!」
上機嫌な美沙希を見て、カズミは微笑んだ。
数時間後、彼女が泣き出すなんて、このときは予想もしていなかった。
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