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第2話 ストーカー?琵琶カズミ
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川村美沙希は昇降口で上履きを靴に履き替えた。靴はローファーではなく、アウトドア仕様のゴツいものだった。アプローチシューズと呼ばれる登山靴の1種であったが、もちろん琵琶カズミにはそんなことはわからなかった。
美沙希がさっさと校門を出て行くのを、ローファーを履いたカズミが追いかける。
帰宅するのかと思いきや、美沙希は学校の裏の林の中に入って行った。ふつうの女の子がひとりで行くようなところではない。鬱蒼とした林で、獣道みたいな細い道があるだけだった。
川村さん、いったいなんでこんなところに入って行くの???
カズミは混乱し、頭にクエスチョンマークを乱舞させながら、美沙希のあとを懸命に追った。道はところどころぬかるんでいて、すごく歩きにくく、ローファーは泥で汚れてしまった。
カズミは美沙希に声をかけるのも忘れて、ひたすらあとを追っていた。
まるでストーカーだが、カズミに自分がストーカーまがいの行為をしているとの自覚はない。火に引き寄せられる蛾のように、彼女は美沙希に惹かれているのだった。
美沙希は鞄の他に細長い布を持っている。その細長いものがなんなのか、カズミには見当もつかない。
謎の自己紹介。謎の林行。美沙希はカズミにとって謎だらけの女だった。美沙希は迷うことなく、アプローチシューズでずんずんと林の中を進んでいく。
やがて空から太陽の光が降り注ぐ場所に出た。
透明な水を湛えたきれいな池がそこにあった。
美沙希は細長い布から2本の棒状のものを取り出し、その2本を繋ぎ合わせた。
カズミにはわからなかったが、それはツーピースのバスロッドだった。ブラックバスを釣るための釣竿だ。
美沙希は鞄からスピニングリールを取り出して、ロッドにセットした。リールからラインを出して、ロッドのガイドに通していく。
カズミにもようやく美沙希がどうやら釣りの準備をしているらしいとわかってきた。
教室では無口で無表情だった彼女が、こころなしか楽しそうに見える。
美沙希はラインの先端に針を結びつけ、針にソフトルアーを刺して、きれいなアンダースローでルアーを投げた。ルアーは静かな水音を立てて着水し、水中にゆっくりと沈んで行く。
カズミは美沙希の無駄のない美しい動きを夢中になって見つめていた。彼女の目には、秘密の神聖な池で、美沙希が何か聖なる行為をしているように見えた。
実際には美沙希はただブラックバスを釣ろうとしているだけだった。
美沙希がラインの微妙な動きの変化に気づき、ロッドを鋭く上げて、合わせをした。合わせとは、釣り針を硬いブラックバスの口に確実に突き刺すための行為である。
「ヒット」と彼女は小さな声で言った。その瞬間、美沙希の瞳は輝き、口角が上がっていた。
美沙希は右手で竿を立て、左手でリールを巻く。やがてブラックバスが水面に現れ、彼女は抵抗するバスを巧みに寄せて、左手でバスの口を持ち、釣り上げた。
体長30センチほどのきれいなブラックバスだった。
体色は濃いグリーンで、口が大きい。ラージマウスバスとも呼ばれる魚だ。
美沙希がものの5分でバスを手にするのを、カズミは何かマジックでも見せられたかのような不思議な気分で眺めていた。
カズミはふらふらと美沙希のそばに寄って行った。
美沙希がさっさと校門を出て行くのを、ローファーを履いたカズミが追いかける。
帰宅するのかと思いきや、美沙希は学校の裏の林の中に入って行った。ふつうの女の子がひとりで行くようなところではない。鬱蒼とした林で、獣道みたいな細い道があるだけだった。
川村さん、いったいなんでこんなところに入って行くの???
カズミは混乱し、頭にクエスチョンマークを乱舞させながら、美沙希のあとを懸命に追った。道はところどころぬかるんでいて、すごく歩きにくく、ローファーは泥で汚れてしまった。
カズミは美沙希に声をかけるのも忘れて、ひたすらあとを追っていた。
まるでストーカーだが、カズミに自分がストーカーまがいの行為をしているとの自覚はない。火に引き寄せられる蛾のように、彼女は美沙希に惹かれているのだった。
美沙希は鞄の他に細長い布を持っている。その細長いものがなんなのか、カズミには見当もつかない。
謎の自己紹介。謎の林行。美沙希はカズミにとって謎だらけの女だった。美沙希は迷うことなく、アプローチシューズでずんずんと林の中を進んでいく。
やがて空から太陽の光が降り注ぐ場所に出た。
透明な水を湛えたきれいな池がそこにあった。
美沙希は細長い布から2本の棒状のものを取り出し、その2本を繋ぎ合わせた。
カズミにはわからなかったが、それはツーピースのバスロッドだった。ブラックバスを釣るための釣竿だ。
美沙希は鞄からスピニングリールを取り出して、ロッドにセットした。リールからラインを出して、ロッドのガイドに通していく。
カズミにもようやく美沙希がどうやら釣りの準備をしているらしいとわかってきた。
教室では無口で無表情だった彼女が、こころなしか楽しそうに見える。
美沙希はラインの先端に針を結びつけ、針にソフトルアーを刺して、きれいなアンダースローでルアーを投げた。ルアーは静かな水音を立てて着水し、水中にゆっくりと沈んで行く。
カズミは美沙希の無駄のない美しい動きを夢中になって見つめていた。彼女の目には、秘密の神聖な池で、美沙希が何か聖なる行為をしているように見えた。
実際には美沙希はただブラックバスを釣ろうとしているだけだった。
美沙希がラインの微妙な動きの変化に気づき、ロッドを鋭く上げて、合わせをした。合わせとは、釣り針を硬いブラックバスの口に確実に突き刺すための行為である。
「ヒット」と彼女は小さな声で言った。その瞬間、美沙希の瞳は輝き、口角が上がっていた。
美沙希は右手で竿を立て、左手でリールを巻く。やがてブラックバスが水面に現れ、彼女は抵抗するバスを巧みに寄せて、左手でバスの口を持ち、釣り上げた。
体長30センチほどのきれいなブラックバスだった。
体色は濃いグリーンで、口が大きい。ラージマウスバスとも呼ばれる魚だ。
美沙希がものの5分でバスを手にするのを、カズミは何かマジックでも見せられたかのような不思議な気分で眺めていた。
カズミはふらふらと美沙希のそばに寄って行った。
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