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第33話 地下牢 13人の悪魔少女容疑者たち
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暑かった8月が終わり、9月1日になった。
残暑はまだきびしいが、気温は真夏ほどではない。少し過ごしやすくなっている。
午前8時、ギギは村長のピピンと警察官のガッツ・コーレルに案内されて、村役場の地下牢へ行った。護衛としてランとルンルンを連れている。その他の神聖少女騎士には休暇を与えた。
地下牢は暗くてじめじめしていた。糞尿の臭いがする。ひどい環境だ、とギギは思った。
牢屋は12室あり、そのうちの5室に13人の悪魔少女容疑者たちが収容されていた。残りの7室は他の罪人たちが入っていて、ギギには関係がない。
「この13人の少女たちの処遇を決めてください。親から激しい抗議が来ていて、私も困っているんです」とピピンは言った。
「わかりました。お任せください」
「私は村長室にいます。コーレルを今日1日、部下としてお預けします。後ほど結果を教えてください」
ギギはうなずいた。
地下には尋問室もあった。ギギはそこを使って、疑惑者たちを判定することにした。
「コーレルさん、少女をひとりずつ連れてきて」
「了解しました」
尋問室にはテーブルがひとつと椅子がふたつあった。ギギは椅子に座った。その背後にランとルンルンが立った。
最初に連れられてきた少女はやつれ果てて、痩せていた。手錠をかけられている。
「座りなさい」とギギは言った。
少女は黙って椅子に座った。
「名前と年齢を教えて」
「リデラ・サロ、14歳です」
「あなたはどういう経緯で、牢屋に入れられたの」
「森で薬草を採取していました。悪魔少女狩りの人たちにケシの実を取っていたのをとがめられて、捕らえられました」
「ケシの実。アヘンの原料ね。なぜそんなものを採取していたのかしら」
「私は薬屋の娘なんです。アヘンは手術の際、痛み止めの薬として使います」
「それだけなのね。悪用はしていないでしょうね」
「していません」
「あなたは悪魔少女なの?」
「ちがいます」
ギギには人間観察眼がそなわっている。この子は悪魔少女ではない、とわかった。
そして、ダダが可愛い女の子をいたぶるのが好きなことを知っていた。この娘は犠牲者だ。
「釈放していいわ。コーレルさん、手錠をはずしてあげて」
次に連れられてきた少女は夏風邪をひき、咳をしていた。かなり身体が衰弱している。
ギギはその女の子を椅子に座らせた。
「名前と年齢を言いなさい」
「ルカ・コーネットです。ゴホッ、ゴホゴホッ。14歳です」
「あなたが牢屋に入れられた理由はなんなのかしら」
「私は生の魚に塩をかけて食べるんです。理由はそれだけです」
ギギは驚いた。新鮮な魚を生で食べると美味しいということを、彼女は知っていた。
「それだけなの?」
「ゴホッ、それだけで捕まりました」
「悪魔少女じゃないのね」
「ちがいます。悪魔少女なんかじゃありません。コホッ、ゲホッ」
「釈放よ。コーレルさん、誰かに頼んで、この子を病院へ連れていって」
「了解しました」
3人目の少女は毅然としていた。
「椅子に座って」
少女はギギを睨みながら座った。
「名前と年齢を言いなさい」
「ツツ・カイノス、15歳」
「あなたが牢屋に入れられた理由は?」
「チェスが強かったから」
「は? もう1度言ってもらえる?」
「チェスが強かったから。ダダ・バルーンを軽く負かしてやったら、牢屋に入れられたの。わけがわからないわ」
「本当にそれだけなの?」
「それだけよ」
「悪魔少女じゃないのね」
「ちがうわよ」
「あなたを釈放するわ」
「あたりまえよ!」
ツツは激しく怒っていた。
他の10人の少女たちも全員、ギギの見立てでは悪魔少女ではなかった。
彼女は13人の悪魔少女容疑者全員を解放した。
「失礼ながら、ダダ様のやり方は適切ではなかったようですね」とランが言った。
「そのようね。弟はやり過ぎていたようだわ。こんなことをしたら、村人の反発を買ってしまう。おそらく、教皇猊下の威光を傘に着て、やりたい放題やっていたのでしょう」
「そして、悪魔少女レンレン・ヴィンジーノに反撃され、亡くなられてしまった」
「ダダは失敗したんだわ。あたくしもリカリカとの戦いでは失敗したけれど、市長や市民からは支持されていた」
「あの敗北はギギ様のせいじゃありません。アタシたちが弱かったからいけないんですぅ」
「ルンルン、そんなことはないわよ。あれは相手が強すぎたの」
「ギギ様ぁ、おやさしいですぅ」
ギギはルンルンの頭を撫でた。
「きゃいーん」と叫んで、彼女は喜んだ。
ギギとラン、ルンルン、ガッツは村長室へ行った。
「全員シロでした。悪魔少女ではなかったわ。釈放しました」
「そうですか。それはよかった。親たちからのクレームもおさまるでしょう。助かりました」
「こちらこそ、弟がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
ギギは頭を下げた。
「謝るなんて、やめてください。ダダ様は任務を遂行しただけです。多少、まちがいがあったかもしれませんが」
ピピンは教皇の親族と対立したくはなかった。ギギの顔を立てた。
「引きつづき、コーレルさんに協力してもらってもいいですか」
「もちろんです。コーレル、いいな?」
「はい」
「では、レンレンとユウユウの家族のところへ連れていってください」
ギギたちは回る向日葵亭へ行った。
そこではレジンとカラリ、アルバイトの女の子が忙しそうに働いていた。
ギギは遅めの昼食を取ることにした。羊の串焼き定食を人数分注文した。
ゆっくりと食べていたら、午後3時になった。回る向日葵亭から客がいなくなったのを見計らって、ギギはコーレルに命じ、レジンを呼んだ。
「なんの用だい?」
「あたくしはダダ・バルーンの姉、ギギと言います。あなたのお嬢さんについて、質問がしたくて来ました」
レジンは唇を歪ませた。
「さっさと済ませてくれ」
「レンレン・ヴィンジーノは悪魔少女だった。まちがいありませんね?」
「ああ、まちがいねえよ」
「あたくしの弟だけでなく、他に13人の首の骨を折って、同時に殺した。これについては、反論はありますか?」
「ねえよ。そのとおりだ」
「レンレンはどのような異能を持つ悪魔少女だったのですか?」
「首の骨を折る力だろ」
「それはわかっています。問題は、どうやって14人の首を同時に折ったかです。頭部が回転していたと聞きました。どうやってそんなことをしたのですか?」
「知らねえよ。確かにレンレンは悪魔少女だった。しかし、知ってるのはそれだけだ」
「いまどこにいるか、ご存じないですか?」
「わからん。わかっているのは、悪魔少女狩りから逃亡しているってことだけだ」
嘘を言っているようすはない、とギギは判断した。
「わかりました。あなた方はこのままここでレストランを経営していてけっこうです」
「あたりまえだ。娘は悪魔少女だった。あの子が処刑されても仕方がない。でもおれと息子に罪はない」
ギギは回る向日葵亭を後にした。
裏庭に荒らされたようすのある向日葵畑がある。花は枯れかけていた。ここが戦場だったのだろうか。
「ギギ様ぁ。あいつ、生意気でした。とがめなくていいんですかぁ」
「いいのよ。あの人にはここでレストランを経営しつづけてもらう。いつか、レンレンを倒すときに人質にできるかもしれないからね。泳がせておくわ」
「さっすがぁ!」
ルンルンはギギの左腕にしがみついた。
夕刻、ギギ一行はムジーク夫妻が住む草原の木造小屋を訪れた。
パオとリンリンは不安そうに彼女たちを迎え入れた。
「こんばんは、ダダ・バルーンの姉、ギギです」
「パオ・ムジークです」
「早速ですが、おうかがいしたい。お嬢さんのユウユウは悪魔少女だったんですね?」
「はい」
「どんな悪魔少女だったのですか?」
「音符の悪魔少女と呼ばれていたようです。私たちもよくは知りません」
「バイオリンを弾くのが上手だったとか」
「それなりには弾けました」
「ユウユウがいまどこにいるか知っていますか」
「知りません」
「連絡はまったくないのですか」
「ありません。生きているか、死んでいるかもわかりません」
パオの表情は極めて暗かった。
「わかりました。なにかあれば、村役場に報告してください」
「はい……」
ギギたちはムジーク家から去り、パン屋に寄ってから、ラシーラグランドホテルに戻った。
「ご苦労さまでした」とギギは言って、ガッツ・コーレルを帰らせた。
ギギは部下の神聖少女騎士を全員、彼女の部屋に集めた。
ラン・ガジェット、ミク・ダゴン、ルンルン・キーラ、ハル・ドグラマグラ、マイ・ズームの5人。
ギギは部下たちに菓子パンを配った。
「食べながら聞いて。明日、ダダの遺骨を持って、マーロへ向かうわ」
部下の神聖少女騎士たちはうなずいた。
「レンレンとユウユウのゆくえはわからなかった。もちろんリカリカがどこにいるかもわからない。今後、あたくしたちは彼女たちを捜索し、対決することになるかもしれないわ」
「やっつけてやりますぅ」
「容易ならぬ敵よ。とにかく教皇猊下とよく話し合ってみるわ。猊下からは別の任務を与えられるかもしれない。そのときは、当然のことだけれど、ご指示に従うわ」
「アタシ、どんなことになっても、ギギ様にお仕えしますぅ」
「ルンルン、あなたはいまはあたくしの部下だけど、教皇配下の神聖少女騎士でもあるのよ。いつまでもあたくしと一緒にいるとは限らない」
「離れるのは嫌ですぅ!」
「私たちもギギ様に仕えつづけたいです」とランが言い、残りの3人がうなずいた。
「わかったわ。あたくしもあなたたちを信頼している。できるだけ一緒にいられるよう、叔父上にお願いしてみるわ」
「嬉しいですぅ、ギギ様ぁ」
彼女たちは翌日、ラシーラ村から出た。
帰路、馬に乗りながら、ギギは3人の敵悪魔少女たちのことを考えつづけていた。
リカリカ。青竜の悪魔少女の存在はとてつもない脅威だ。
ユウユウ。音符の悪魔少女の異能がなにか気になる。音符ってなんなの?
レンレン。大量殺人の悪魔少女。いったいどんな女の子なのだろう。不気味だ。
しかし、教皇になるためには、どんな敵でも倒さなければならない。
残暑はまだきびしいが、気温は真夏ほどではない。少し過ごしやすくなっている。
午前8時、ギギは村長のピピンと警察官のガッツ・コーレルに案内されて、村役場の地下牢へ行った。護衛としてランとルンルンを連れている。その他の神聖少女騎士には休暇を与えた。
地下牢は暗くてじめじめしていた。糞尿の臭いがする。ひどい環境だ、とギギは思った。
牢屋は12室あり、そのうちの5室に13人の悪魔少女容疑者たちが収容されていた。残りの7室は他の罪人たちが入っていて、ギギには関係がない。
「この13人の少女たちの処遇を決めてください。親から激しい抗議が来ていて、私も困っているんです」とピピンは言った。
「わかりました。お任せください」
「私は村長室にいます。コーレルを今日1日、部下としてお預けします。後ほど結果を教えてください」
ギギはうなずいた。
地下には尋問室もあった。ギギはそこを使って、疑惑者たちを判定することにした。
「コーレルさん、少女をひとりずつ連れてきて」
「了解しました」
尋問室にはテーブルがひとつと椅子がふたつあった。ギギは椅子に座った。その背後にランとルンルンが立った。
最初に連れられてきた少女はやつれ果てて、痩せていた。手錠をかけられている。
「座りなさい」とギギは言った。
少女は黙って椅子に座った。
「名前と年齢を教えて」
「リデラ・サロ、14歳です」
「あなたはどういう経緯で、牢屋に入れられたの」
「森で薬草を採取していました。悪魔少女狩りの人たちにケシの実を取っていたのをとがめられて、捕らえられました」
「ケシの実。アヘンの原料ね。なぜそんなものを採取していたのかしら」
「私は薬屋の娘なんです。アヘンは手術の際、痛み止めの薬として使います」
「それだけなのね。悪用はしていないでしょうね」
「していません」
「あなたは悪魔少女なの?」
「ちがいます」
ギギには人間観察眼がそなわっている。この子は悪魔少女ではない、とわかった。
そして、ダダが可愛い女の子をいたぶるのが好きなことを知っていた。この娘は犠牲者だ。
「釈放していいわ。コーレルさん、手錠をはずしてあげて」
次に連れられてきた少女は夏風邪をひき、咳をしていた。かなり身体が衰弱している。
ギギはその女の子を椅子に座らせた。
「名前と年齢を言いなさい」
「ルカ・コーネットです。ゴホッ、ゴホゴホッ。14歳です」
「あなたが牢屋に入れられた理由はなんなのかしら」
「私は生の魚に塩をかけて食べるんです。理由はそれだけです」
ギギは驚いた。新鮮な魚を生で食べると美味しいということを、彼女は知っていた。
「それだけなの?」
「ゴホッ、それだけで捕まりました」
「悪魔少女じゃないのね」
「ちがいます。悪魔少女なんかじゃありません。コホッ、ゲホッ」
「釈放よ。コーレルさん、誰かに頼んで、この子を病院へ連れていって」
「了解しました」
3人目の少女は毅然としていた。
「椅子に座って」
少女はギギを睨みながら座った。
「名前と年齢を言いなさい」
「ツツ・カイノス、15歳」
「あなたが牢屋に入れられた理由は?」
「チェスが強かったから」
「は? もう1度言ってもらえる?」
「チェスが強かったから。ダダ・バルーンを軽く負かしてやったら、牢屋に入れられたの。わけがわからないわ」
「本当にそれだけなの?」
「それだけよ」
「悪魔少女じゃないのね」
「ちがうわよ」
「あなたを釈放するわ」
「あたりまえよ!」
ツツは激しく怒っていた。
他の10人の少女たちも全員、ギギの見立てでは悪魔少女ではなかった。
彼女は13人の悪魔少女容疑者全員を解放した。
「失礼ながら、ダダ様のやり方は適切ではなかったようですね」とランが言った。
「そのようね。弟はやり過ぎていたようだわ。こんなことをしたら、村人の反発を買ってしまう。おそらく、教皇猊下の威光を傘に着て、やりたい放題やっていたのでしょう」
「そして、悪魔少女レンレン・ヴィンジーノに反撃され、亡くなられてしまった」
「ダダは失敗したんだわ。あたくしもリカリカとの戦いでは失敗したけれど、市長や市民からは支持されていた」
「あの敗北はギギ様のせいじゃありません。アタシたちが弱かったからいけないんですぅ」
「ルンルン、そんなことはないわよ。あれは相手が強すぎたの」
「ギギ様ぁ、おやさしいですぅ」
ギギはルンルンの頭を撫でた。
「きゃいーん」と叫んで、彼女は喜んだ。
ギギとラン、ルンルン、ガッツは村長室へ行った。
「全員シロでした。悪魔少女ではなかったわ。釈放しました」
「そうですか。それはよかった。親たちからのクレームもおさまるでしょう。助かりました」
「こちらこそ、弟がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
ギギは頭を下げた。
「謝るなんて、やめてください。ダダ様は任務を遂行しただけです。多少、まちがいがあったかもしれませんが」
ピピンは教皇の親族と対立したくはなかった。ギギの顔を立てた。
「引きつづき、コーレルさんに協力してもらってもいいですか」
「もちろんです。コーレル、いいな?」
「はい」
「では、レンレンとユウユウの家族のところへ連れていってください」
ギギたちは回る向日葵亭へ行った。
そこではレジンとカラリ、アルバイトの女の子が忙しそうに働いていた。
ギギは遅めの昼食を取ることにした。羊の串焼き定食を人数分注文した。
ゆっくりと食べていたら、午後3時になった。回る向日葵亭から客がいなくなったのを見計らって、ギギはコーレルに命じ、レジンを呼んだ。
「なんの用だい?」
「あたくしはダダ・バルーンの姉、ギギと言います。あなたのお嬢さんについて、質問がしたくて来ました」
レジンは唇を歪ませた。
「さっさと済ませてくれ」
「レンレン・ヴィンジーノは悪魔少女だった。まちがいありませんね?」
「ああ、まちがいねえよ」
「あたくしの弟だけでなく、他に13人の首の骨を折って、同時に殺した。これについては、反論はありますか?」
「ねえよ。そのとおりだ」
「レンレンはどのような異能を持つ悪魔少女だったのですか?」
「首の骨を折る力だろ」
「それはわかっています。問題は、どうやって14人の首を同時に折ったかです。頭部が回転していたと聞きました。どうやってそんなことをしたのですか?」
「知らねえよ。確かにレンレンは悪魔少女だった。しかし、知ってるのはそれだけだ」
「いまどこにいるか、ご存じないですか?」
「わからん。わかっているのは、悪魔少女狩りから逃亡しているってことだけだ」
嘘を言っているようすはない、とギギは判断した。
「わかりました。あなた方はこのままここでレストランを経営していてけっこうです」
「あたりまえだ。娘は悪魔少女だった。あの子が処刑されても仕方がない。でもおれと息子に罪はない」
ギギは回る向日葵亭を後にした。
裏庭に荒らされたようすのある向日葵畑がある。花は枯れかけていた。ここが戦場だったのだろうか。
「ギギ様ぁ。あいつ、生意気でした。とがめなくていいんですかぁ」
「いいのよ。あの人にはここでレストランを経営しつづけてもらう。いつか、レンレンを倒すときに人質にできるかもしれないからね。泳がせておくわ」
「さっすがぁ!」
ルンルンはギギの左腕にしがみついた。
夕刻、ギギ一行はムジーク夫妻が住む草原の木造小屋を訪れた。
パオとリンリンは不安そうに彼女たちを迎え入れた。
「こんばんは、ダダ・バルーンの姉、ギギです」
「パオ・ムジークです」
「早速ですが、おうかがいしたい。お嬢さんのユウユウは悪魔少女だったんですね?」
「はい」
「どんな悪魔少女だったのですか?」
「音符の悪魔少女と呼ばれていたようです。私たちもよくは知りません」
「バイオリンを弾くのが上手だったとか」
「それなりには弾けました」
「ユウユウがいまどこにいるか知っていますか」
「知りません」
「連絡はまったくないのですか」
「ありません。生きているか、死んでいるかもわかりません」
パオの表情は極めて暗かった。
「わかりました。なにかあれば、村役場に報告してください」
「はい……」
ギギたちはムジーク家から去り、パン屋に寄ってから、ラシーラグランドホテルに戻った。
「ご苦労さまでした」とギギは言って、ガッツ・コーレルを帰らせた。
ギギは部下の神聖少女騎士を全員、彼女の部屋に集めた。
ラン・ガジェット、ミク・ダゴン、ルンルン・キーラ、ハル・ドグラマグラ、マイ・ズームの5人。
ギギは部下たちに菓子パンを配った。
「食べながら聞いて。明日、ダダの遺骨を持って、マーロへ向かうわ」
部下の神聖少女騎士たちはうなずいた。
「レンレンとユウユウのゆくえはわからなかった。もちろんリカリカがどこにいるかもわからない。今後、あたくしたちは彼女たちを捜索し、対決することになるかもしれないわ」
「やっつけてやりますぅ」
「容易ならぬ敵よ。とにかく教皇猊下とよく話し合ってみるわ。猊下からは別の任務を与えられるかもしれない。そのときは、当然のことだけれど、ご指示に従うわ」
「アタシ、どんなことになっても、ギギ様にお仕えしますぅ」
「ルンルン、あなたはいまはあたくしの部下だけど、教皇配下の神聖少女騎士でもあるのよ。いつまでもあたくしと一緒にいるとは限らない」
「離れるのは嫌ですぅ!」
「私たちもギギ様に仕えつづけたいです」とランが言い、残りの3人がうなずいた。
「わかったわ。あたくしもあなたたちを信頼している。できるだけ一緒にいられるよう、叔父上にお願いしてみるわ」
「嬉しいですぅ、ギギ様ぁ」
彼女たちは翌日、ラシーラ村から出た。
帰路、馬に乗りながら、ギギは3人の敵悪魔少女たちのことを考えつづけていた。
リカリカ。青竜の悪魔少女の存在はとてつもない脅威だ。
ユウユウ。音符の悪魔少女の異能がなにか気になる。音符ってなんなの?
レンレン。大量殺人の悪魔少女。いったいどんな女の子なのだろう。不気味だ。
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