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イカタコ物語
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イカとタコは宇宙から来た調査兵団だった。
そのことを僕はスーパーで買い物をしているときに知った。
食料品値上がりしたなー、生きていけないよ、と思いながら僕はお魚コーナーを歩いていた。
僕は貧乏な苦学生で、アルバイトをしながら、大学に通っている。母ひとり子ひとりの家庭。このところのインフレで、食べていくのがやっとになり、学費を捻出できない。
大学をやめるしかないかな、と悩んでいた。
最近は値上がりがきつくて、魚を食べていない。肉も。栄養のために、卵だけは2日に1個食べるようにしている。
「イカよ、我らの調査も終わりつつある」
「タコよ、地球人の身体構造はほぼわかった。彼らは酸素と炭素化合物を体内に摂取して生きている。彼らは酸素なくしては生きていけないのだ。地球から酸素をなくしてしまえば、地球人は滅びる」
お魚コーナーで、そんな声が聞こえてきた。
イカとタコか。
もう何年も食べてないな、と思った。最近は不漁のせいか、スーパーで見かけることも減った。
まあ、どうせ買えないから関係ないけど……。
僕は声がした方に目を向けた。そしてびっくりした。
イカとタコが会話していたからだ。
「イカよ、我らも酸素と炭素化合物を摂り入れて生きている。地球から酸素をなくしてしまったら、我らも困るのだ」
「タコよ、確かにそうだ。別の侵略方法を考えなければ」
「きみたち、イカとタコだよね。日本語が話せるんだね……」
僕はおそるおそる話しかけた。
イカとタコは、ぎょっとした表情になって、僕を見た。
「イカよ、透明体になった我らを、この地球人は見えるようだぞ」
「タコよ、我らは地球人に食べられて、内部から身体構造を調べていた。だが、地球人にはまだ未知の部分があるようだ」
鮮度のいいイカは透明だ。
アミダコという透明なタコがいるらしい。
このイカとタコはそういう人たちなのだろうか。
でも完全に透明ではなく、見えているし、声が聞こえている。
周りの人たちもイカとタコの会話に気づいて、驚いていた。
でも当のイカとタコは自分たちが透明で、見られていないと思っているようだ。少しバカなのかもしれない。
「地球人よ、我らイカとタコは宇宙から来た調査兵団なのだ」
「地球を侵略するため、地球人を調べている。我らは食べられても死なず、再びイカとタコに生まれ変わるのだ。わざと地球人に食べられて、おまえたちの身体構造を調べている」
「だいたい調査は終わり、宇宙に帰ろうと思っていたが、まだ調べる必要があるようだ」
「地球人よ、我らはおまえを調べたい。家に持ち帰り、我らを食べよ」
「おまえは謎の地球人だ。調べたい。我らを食べよ」
「我らを食べよ」
イカとタコは僕に向かって、我らを食べよ、と連呼した。
「イカもタコも値段が高いから、買えないよ」と僕は言った。
「我らは売り物ではない」と言って、彼らは僕が持っていたエコバッグに飛び込んだ。
僕はレジで、スーパーのレジ係のお姉さんに「このイカとタコ、持ち帰ってもいいですか?」とたずねた。
僕とイカ、タコのやりとりを聞いていた彼女は「いいと思う。その気持ちの悪いイカとタコでよければ、さっさと持って帰ってほしい。怖いよ、日本語をしゃべるイカとタコ」
というわけで、今夜の食卓には、イカとタコのお刺身が載っている。
僕がさばいた。
「美味しいわね、このイカとタコ。高かったでしょ。よく買えたわね」と母が言った。
僕は説明しても信じてもらえないと思い、「バイト代が入ったんだ。たまには贅沢したっていいかなって思って買った」と言った。
別にイカとタコに身体構造を調べられたってかまわない。
今日、美味しいイカタコが食べられるなら、明日がどうなってもいい。
母と僕は、明日生きられるかどうかわからないほど貧乏なのだ。
美味しかった。ごちそうさま。
そのことを僕はスーパーで買い物をしているときに知った。
食料品値上がりしたなー、生きていけないよ、と思いながら僕はお魚コーナーを歩いていた。
僕は貧乏な苦学生で、アルバイトをしながら、大学に通っている。母ひとり子ひとりの家庭。このところのインフレで、食べていくのがやっとになり、学費を捻出できない。
大学をやめるしかないかな、と悩んでいた。
最近は値上がりがきつくて、魚を食べていない。肉も。栄養のために、卵だけは2日に1個食べるようにしている。
「イカよ、我らの調査も終わりつつある」
「タコよ、地球人の身体構造はほぼわかった。彼らは酸素と炭素化合物を体内に摂取して生きている。彼らは酸素なくしては生きていけないのだ。地球から酸素をなくしてしまえば、地球人は滅びる」
お魚コーナーで、そんな声が聞こえてきた。
イカとタコか。
もう何年も食べてないな、と思った。最近は不漁のせいか、スーパーで見かけることも減った。
まあ、どうせ買えないから関係ないけど……。
僕は声がした方に目を向けた。そしてびっくりした。
イカとタコが会話していたからだ。
「イカよ、我らも酸素と炭素化合物を摂り入れて生きている。地球から酸素をなくしてしまったら、我らも困るのだ」
「タコよ、確かにそうだ。別の侵略方法を考えなければ」
「きみたち、イカとタコだよね。日本語が話せるんだね……」
僕はおそるおそる話しかけた。
イカとタコは、ぎょっとした表情になって、僕を見た。
「イカよ、透明体になった我らを、この地球人は見えるようだぞ」
「タコよ、我らは地球人に食べられて、内部から身体構造を調べていた。だが、地球人にはまだ未知の部分があるようだ」
鮮度のいいイカは透明だ。
アミダコという透明なタコがいるらしい。
このイカとタコはそういう人たちなのだろうか。
でも完全に透明ではなく、見えているし、声が聞こえている。
周りの人たちもイカとタコの会話に気づいて、驚いていた。
でも当のイカとタコは自分たちが透明で、見られていないと思っているようだ。少しバカなのかもしれない。
「地球人よ、我らイカとタコは宇宙から来た調査兵団なのだ」
「地球を侵略するため、地球人を調べている。我らは食べられても死なず、再びイカとタコに生まれ変わるのだ。わざと地球人に食べられて、おまえたちの身体構造を調べている」
「だいたい調査は終わり、宇宙に帰ろうと思っていたが、まだ調べる必要があるようだ」
「地球人よ、我らはおまえを調べたい。家に持ち帰り、我らを食べよ」
「おまえは謎の地球人だ。調べたい。我らを食べよ」
「我らを食べよ」
イカとタコは僕に向かって、我らを食べよ、と連呼した。
「イカもタコも値段が高いから、買えないよ」と僕は言った。
「我らは売り物ではない」と言って、彼らは僕が持っていたエコバッグに飛び込んだ。
僕はレジで、スーパーのレジ係のお姉さんに「このイカとタコ、持ち帰ってもいいですか?」とたずねた。
僕とイカ、タコのやりとりを聞いていた彼女は「いいと思う。その気持ちの悪いイカとタコでよければ、さっさと持って帰ってほしい。怖いよ、日本語をしゃべるイカとタコ」
というわけで、今夜の食卓には、イカとタコのお刺身が載っている。
僕がさばいた。
「美味しいわね、このイカとタコ。高かったでしょ。よく買えたわね」と母が言った。
僕は説明しても信じてもらえないと思い、「バイト代が入ったんだ。たまには贅沢したっていいかなって思って買った」と言った。
別にイカとタコに身体構造を調べられたってかまわない。
今日、美味しいイカタコが食べられるなら、明日がどうなってもいい。
母と僕は、明日生きられるかどうかわからないほど貧乏なのだ。
美味しかった。ごちそうさま。
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