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人新世の終焉後に
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人新世は1960年代に始まり、2080年代に終わった。わずか120年程度にすぎない例外的に短い地質年代だ。
人類が地質や生態系に重大な影響を与えた年代。
それはヒトの破滅的激減により終わりを告げた。
地球高温化による気候変動、水・食糧不足による戦争、格差の極大化による世界暴動、この三つを主原因とする破滅的な時代が2050年以降に到来し、2080年代には人口は数百万人にまで減少した。
ヒト以外の動植物も多くが壊滅的被害を受けた。
大破綻が収束した22世紀に私は生まれた。少しは幸運なのだろうが、地球上には前世紀のつけが溜まっていて、幸福な時代とは言い難い。
テロ等による原子力発電所の破壊多発および核戦争により、地球は濃い放射能で汚染されている。癌が多発しているが、治療する技術・施設はほとんど失われている。
気候変動は収まっていない。今後数千年あるいは不可逆的に悪化が続くと予想されている。そういう意味では、まだ人新世は終わっていないと言えるかもしれない。現在一番住みやすい大陸は南極で、かつては人類が生存していなかった地帯だ。
格差はまだ消えていない。暴力格差だ。治安を守る国家は存在しなくなり、法律は文献上の存在となった。銃器を所持していたり、肉体的暴力に秀でていたりする者が権力を握り、弱い者はその庇護下にいなければ生きていけない無法地帯・時代が到来している。
私は機関銃などの武力を所有しており、約200人からなるファミリーの家長だ。ファミリー内では好き放題ができる。妻は5人いて、逆らう者は殺す。しかし弾丸を生産する工場は持っておらず、基盤は弱い。
ファミリー間では絶えざる抗争が続いており、未だ人類は存亡の縁に立っている。
私の隣のファミリーが弾丸工場を建設しようとしている。それが完成すれば、我々は殲滅されるか奴隷にされる。完成前にやつらを滅ぼさなければならない。
私は50人の戦闘部隊を率いて、隣のファミリーを襲撃した。超台風が吹き荒れる中での奇襲だ。攻撃は成功し、我々は敵をほぼ全滅させ、建設中の工場を占拠した。
しかし超台風中に行動したのは失敗だった。その台風は攻撃成功後に空前の風速となり、工場もろとも我々を天高く吹き飛ばした。
私は岸近くの海に落下し、奇跡的に生き延びた。
大失敗をした私は粛正されるに決まっているので、ファミリーに帰ることはできない。
人類が地質や生態系に重大な影響を与えた年代。
それはヒトの破滅的激減により終わりを告げた。
地球高温化による気候変動、水・食糧不足による戦争、格差の極大化による世界暴動、この三つを主原因とする破滅的な時代が2050年以降に到来し、2080年代には人口は数百万人にまで減少した。
ヒト以外の動植物も多くが壊滅的被害を受けた。
大破綻が収束した22世紀に私は生まれた。少しは幸運なのだろうが、地球上には前世紀のつけが溜まっていて、幸福な時代とは言い難い。
テロ等による原子力発電所の破壊多発および核戦争により、地球は濃い放射能で汚染されている。癌が多発しているが、治療する技術・施設はほとんど失われている。
気候変動は収まっていない。今後数千年あるいは不可逆的に悪化が続くと予想されている。そういう意味では、まだ人新世は終わっていないと言えるかもしれない。現在一番住みやすい大陸は南極で、かつては人類が生存していなかった地帯だ。
格差はまだ消えていない。暴力格差だ。治安を守る国家は存在しなくなり、法律は文献上の存在となった。銃器を所持していたり、肉体的暴力に秀でていたりする者が権力を握り、弱い者はその庇護下にいなければ生きていけない無法地帯・時代が到来している。
私は機関銃などの武力を所有しており、約200人からなるファミリーの家長だ。ファミリー内では好き放題ができる。妻は5人いて、逆らう者は殺す。しかし弾丸を生産する工場は持っておらず、基盤は弱い。
ファミリー間では絶えざる抗争が続いており、未だ人類は存亡の縁に立っている。
私の隣のファミリーが弾丸工場を建設しようとしている。それが完成すれば、我々は殲滅されるか奴隷にされる。完成前にやつらを滅ぼさなければならない。
私は50人の戦闘部隊を率いて、隣のファミリーを襲撃した。超台風が吹き荒れる中での奇襲だ。攻撃は成功し、我々は敵をほぼ全滅させ、建設中の工場を占拠した。
しかし超台風中に行動したのは失敗だった。その台風は攻撃成功後に空前の風速となり、工場もろとも我々を天高く吹き飛ばした。
私は岸近くの海に落下し、奇跡的に生き延びた。
大失敗をした私は粛正されるに決まっているので、ファミリーに帰ることはできない。
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