世界の敵と愛し合え!

みらいつりびと

文字の大きさ
上 下
29 / 48

ネネ1 外野守備練習

しおりを挟む
 高浜先生がノックしてくれて、フライが飛んでくる。
 私は追いかけていってボールを捕ろうとするが、簡単にはいかない。
 ときどき目測を誤る。
 ダーッと背走してくるりと振り向くと、行き過ぎていたり、左右にずれていたりして、ボールがポトリと落ちる。
「あー、失敗したのじゃ」
 先生は「ドンマイ!」とは言ってくれない。「下手くそ!」と言う。
 私、千佳っち、ランランの3人は外野を守ることになって、このところ守備の特訓を受けている。
 先生がノックして、3人で順番に捕球する。
 ライト、センター、レフトの順。捕球に失敗しても、次の人に移る。
 レフトの私の番が終わると、ライトの千佳っちに戻る。
 最初はほとんど動かないで捕るイージーフライの練習をした。
 簡単そうでいて、意外とむずかしかった。
 硬球が高々と上がり、落ちてくる。どういうタイミングでグラブを出せばよいのかわからず、へっぴり腰で受け、はじいてしまった。
「顔の横あたりにグラブを出して捕れ!」
「はいなのじゃ」
「捕ったら、グラブをはめていない方の手で蓋をしろ。こぼすな」
 だんだんとイージーフライは捕れるようになった。
 次に練習したのは、前方に落ちるフライ。
 前進してキャッチする。
 初めは少し前に出るだけで捕れるフライ。
 しだいに前に走って捕るフライへ移行していった。
 うまく捕れず、ワンバウンドも捕りそこねて、後逸してしまうことがあった。
「下手くそ! 捕れないボールは無理をするな。ノーバウンドでキャッチできるかどうかしっかり判断して、だめだと思ったらあきらめて、確実にゴロを捕れ」
 一度ジャンピングキャッチを試みたら、激しく怒られた。 
「飛ぶんじゃねえよ! ファインプレーなどいらん! 堅実な守備をしろ!」
「すみませんなのじゃ」
 そして最近は、守備位置後方へ飛ぶフライを捕る練習をしている。
 これはむずかしい。
 何日も繰り返し練習する。
 千佳っちは3人の外野手の中で一番器用だった。最初に捕球のコツをつかんだ。
 球が宙を舞う。ボールを見ながら半身で走って、落下点に入る。グラブを顔の横に出してキャッチ。
「よっしゃ」
 ガッツポーズ。楽しそうだ。
 ランランは足が速い。勘も良い。ボールをちらっと見て、目測の落下点へ向かって走り、振り向いて捕球するようになっていった。
 私が一番上達に時間がかかった。
 目測で追うのはやめた。すべてのフライをしっかりと見ながら、半身で追うことにした。捕れるボールを確実にキャッチ。
 半身の走りでは追いつけそうにない大フライは、早々に捕球をあきらめ、落下点へ急ぐ。
 たいてい追いつけずに球はバウンドし、転がっていく。走っていってつかむ。
「それでいいんだ。ほどほどのプレイができりゃあそれで充分だ」と監督は言う。
 送球の練習もした。外野から2塁へ投げたり、ワンバウンドでホームベースへ投げたりする。
 私は自分の肩がけっこう強いことを知った。
 遠投力は千佳っちやランランを上回っていた。
 私にもとりえはあったのだ。
 青十字高野球部には優れた選手がいる。
 空尾さん、時根くん、方舟先輩はかなり上手で、本気で甲子園をめざしている。
 彼女たちが甲子園へ行くということは、私も行くということだ。
 私は初心者だが、がんばって初心者の域を脱し、初級者になり、中級者へと進歩していきたい。
 野球を初めて4か月で、全国大会にレギュラーで出場する。
 実現したら、物語みたいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

剣客逓信 ―明治剣戟郵便録―

三條すずしろ
歴史・時代
【第9回歴史・時代小説大賞:痛快! エンタメ剣客賞受賞】 明治6年、警察より早くピストルを装備したのは郵便配達員だった――。 維新の動乱で届くことのなかった手紙や小包。そんな残された思いを配達する「御留郵便御用」の若者と老剣士が、時に不穏な明治の初めをひた走る。 密書や金品を狙う賊を退け大切なものを届ける特命郵便配達人、通称「剣客逓信(けんかくていしん)」。 武装する必要があるほど危険にさらされた初期の郵便時代、二人はやがてさらに大きな動乱に巻き込まれ――。 ※エブリスタでも連載中

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

予言

側溝
SF
いろいろな話を書いていると、何個かは実際に起こってたり、近い未来に起こるんじゃないかと思う時がある。 そんな作者の作品兼予言10遍をここに書き記しておこうと思う。

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

処理中です...