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ネネ1 外野守備練習
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高浜先生がノックしてくれて、フライが飛んでくる。
私は追いかけていってボールを捕ろうとするが、簡単にはいかない。
ときどき目測を誤る。
ダーッと背走してくるりと振り向くと、行き過ぎていたり、左右にずれていたりして、ボールがポトリと落ちる。
「あー、失敗したのじゃ」
先生は「ドンマイ!」とは言ってくれない。「下手くそ!」と言う。
私、千佳っち、ランランの3人は外野を守ることになって、このところ守備の特訓を受けている。
先生がノックして、3人で順番に捕球する。
ライト、センター、レフトの順。捕球に失敗しても、次の人に移る。
レフトの私の番が終わると、ライトの千佳っちに戻る。
最初はほとんど動かないで捕るイージーフライの練習をした。
簡単そうでいて、意外とむずかしかった。
硬球が高々と上がり、落ちてくる。どういうタイミングでグラブを出せばよいのかわからず、へっぴり腰で受け、はじいてしまった。
「顔の横あたりにグラブを出して捕れ!」
「はいなのじゃ」
「捕ったら、グラブをはめていない方の手で蓋をしろ。こぼすな」
だんだんとイージーフライは捕れるようになった。
次に練習したのは、前方に落ちるフライ。
前進してキャッチする。
初めは少し前に出るだけで捕れるフライ。
しだいに前に走って捕るフライへ移行していった。
うまく捕れず、ワンバウンドも捕りそこねて、後逸してしまうことがあった。
「下手くそ! 捕れないボールは無理をするな。ノーバウンドでキャッチできるかどうかしっかり判断して、だめだと思ったらあきらめて、確実にゴロを捕れ」
一度ジャンピングキャッチを試みたら、激しく怒られた。
「飛ぶんじゃねえよ! ファインプレーなどいらん! 堅実な守備をしろ!」
「すみませんなのじゃ」
そして最近は、守備位置後方へ飛ぶフライを捕る練習をしている。
これはむずかしい。
何日も繰り返し練習する。
千佳っちは3人の外野手の中で一番器用だった。最初に捕球のコツをつかんだ。
球が宙を舞う。ボールを見ながら半身で走って、落下点に入る。グラブを顔の横に出してキャッチ。
「よっしゃ」
ガッツポーズ。楽しそうだ。
ランランは足が速い。勘も良い。ボールをちらっと見て、目測の落下点へ向かって走り、振り向いて捕球するようになっていった。
私が一番上達に時間がかかった。
目測で追うのはやめた。すべてのフライをしっかりと見ながら、半身で追うことにした。捕れるボールを確実にキャッチ。
半身の走りでは追いつけそうにない大フライは、早々に捕球をあきらめ、落下点へ急ぐ。
たいてい追いつけずに球はバウンドし、転がっていく。走っていってつかむ。
「それでいいんだ。ほどほどのプレイができりゃあそれで充分だ」と監督は言う。
送球の練習もした。外野から2塁へ投げたり、ワンバウンドでホームベースへ投げたりする。
私は自分の肩がけっこう強いことを知った。
遠投力は千佳っちやランランを上回っていた。
私にもとりえはあったのだ。
青十字高野球部には優れた選手がいる。
空尾さん、時根くん、方舟先輩はかなり上手で、本気で甲子園をめざしている。
彼女たちが甲子園へ行くということは、私も行くということだ。
私は初心者だが、がんばって初心者の域を脱し、初級者になり、中級者へと進歩していきたい。
野球を初めて4か月で、全国大会にレギュラーで出場する。
実現したら、物語みたいだ。
私は追いかけていってボールを捕ろうとするが、簡単にはいかない。
ときどき目測を誤る。
ダーッと背走してくるりと振り向くと、行き過ぎていたり、左右にずれていたりして、ボールがポトリと落ちる。
「あー、失敗したのじゃ」
先生は「ドンマイ!」とは言ってくれない。「下手くそ!」と言う。
私、千佳っち、ランランの3人は外野を守ることになって、このところ守備の特訓を受けている。
先生がノックして、3人で順番に捕球する。
ライト、センター、レフトの順。捕球に失敗しても、次の人に移る。
レフトの私の番が終わると、ライトの千佳っちに戻る。
最初はほとんど動かないで捕るイージーフライの練習をした。
簡単そうでいて、意外とむずかしかった。
硬球が高々と上がり、落ちてくる。どういうタイミングでグラブを出せばよいのかわからず、へっぴり腰で受け、はじいてしまった。
「顔の横あたりにグラブを出して捕れ!」
「はいなのじゃ」
「捕ったら、グラブをはめていない方の手で蓋をしろ。こぼすな」
だんだんとイージーフライは捕れるようになった。
次に練習したのは、前方に落ちるフライ。
前進してキャッチする。
初めは少し前に出るだけで捕れるフライ。
しだいに前に走って捕るフライへ移行していった。
うまく捕れず、ワンバウンドも捕りそこねて、後逸してしまうことがあった。
「下手くそ! 捕れないボールは無理をするな。ノーバウンドでキャッチできるかどうかしっかり判断して、だめだと思ったらあきらめて、確実にゴロを捕れ」
一度ジャンピングキャッチを試みたら、激しく怒られた。
「飛ぶんじゃねえよ! ファインプレーなどいらん! 堅実な守備をしろ!」
「すみませんなのじゃ」
そして最近は、守備位置後方へ飛ぶフライを捕る練習をしている。
これはむずかしい。
何日も繰り返し練習する。
千佳っちは3人の外野手の中で一番器用だった。最初に捕球のコツをつかんだ。
球が宙を舞う。ボールを見ながら半身で走って、落下点に入る。グラブを顔の横に出してキャッチ。
「よっしゃ」
ガッツポーズ。楽しそうだ。
ランランは足が速い。勘も良い。ボールをちらっと見て、目測の落下点へ向かって走り、振り向いて捕球するようになっていった。
私が一番上達に時間がかかった。
目測で追うのはやめた。すべてのフライをしっかりと見ながら、半身で追うことにした。捕れるボールを確実にキャッチ。
半身の走りでは追いつけそうにない大フライは、早々に捕球をあきらめ、落下点へ急ぐ。
たいてい追いつけずに球はバウンドし、転がっていく。走っていってつかむ。
「それでいいんだ。ほどほどのプレイができりゃあそれで充分だ」と監督は言う。
送球の練習もした。外野から2塁へ投げたり、ワンバウンドでホームベースへ投げたりする。
私は自分の肩がけっこう強いことを知った。
遠投力は千佳っちやランランを上回っていた。
私にもとりえはあったのだ。
青十字高野球部には優れた選手がいる。
空尾さん、時根くん、方舟先輩はかなり上手で、本気で甲子園をめざしている。
彼女たちが甲子園へ行くということは、私も行くということだ。
私は初心者だが、がんばって初心者の域を脱し、初級者になり、中級者へと進歩していきたい。
野球を初めて4か月で、全国大会にレギュラーで出場する。
実現したら、物語みたいだ。
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