劉禅が勝つ三国志

みらいつりびと

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益州人事

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 蜀の副総帥となった私は多忙だった。
 まず決めるべきは、益州の人事であった。
 益州行政長官の龐統と益州軍師の魏延のふたりと話し合った。

「当然ながら、私は成都に駐在します。士元と文長にも、基本的には成都城で仕事をしてもらいます。もちろん、戦となれば、出征することになりますが」と私は話し始めた。
「わたくしは益州の富国強兵につとめます」と龐統は答えた。
「自分の仕事は、軍事の統括と作戦ですね」と魏延は言った。
「そうです。ふたりが益州の要です。頼みますよ。さて、幹部である趙雲、馬超、法正、張松、蔣琬、董允、費禕、李厳、孟達、王平、馬忠、馬岱の具体的な任務を決めなければなりません」

「重要な郡は、成都県のある蜀郡、魏との戦いの基地となるであろう漢中郡、江水流域であり、重要都市江州県のある巴郡ですな。この三郡の太守から考えてみませんか」
「漢中郡は軍事の最重要拠点です。趙雲殿ではいかがですか」
「趙雲には、成都にいてもらいたいですが、贅沢は言っていられませんね。では、彼は大将軍兼漢中郡太守となってもらいましょう」

「蜀郡太守は、誰にしますか」
「法正が適任ではないでしょうか。彼には成都にいてもらい、わたくしの仕事を手伝ってもらいたいですし」
「蜀郡の軍事は、文長にまかせれば、不安はありませんしね。法正でよいでしょう」

「次は、巴郡太守です」
「巴郡も、軍事の重要拠点です。荊州になにかあった場合の支援、万が一呉と戦争になった場合の基地となります。馬超殿に頼んではいかがでしょうか」
「文長、馬超殿は新参です。信用して大丈夫ですか。もし巴郡で叛乱でも起こされると、大変なことになりますよ」
「それは、自分にはなんとも言えません」
「士元、馬超を信頼し、重要な仕事を任せてみましょう。こちらが信頼しなければ、信頼してもらえません」
「そうですね。わたくしは、器量が小さい。もっと人を信じなければなりません」
「士元はそのままでよいのです。私は人を信じる。士元は人を疑う。それで、ちょうどよいのだと思います」
「はい」
「では、馬超は大将軍兼巴郡太守とします」

「蜀郡と漢中郡を結ぶ広漢郡も重要です。敵に漢中を突破された場合、成都を守る防衛線となります」
「太守は李厳将軍ではいかがですか。広漢郡は巴郡と隣り合っていて、馬超大将軍と李厳将軍が連携すれば、鉄壁の守りとなるでしょう」
「李厳なら、安心して任せられますね」

「北部四郡の太守は決まりましたね。中部の犍為郡の太守はどうしましょうか」
「王平がよいのではないですか。彼は信頼できる男です」
「王平は、引きつづき親衛隊長として、私の身近にいてもらいたいのです。孟達ではどうでしょうか」
「孟達ですか……」
 龐統と魏延は不安そうな表情になった。
 孟達は目立ちたがりで、誇り高すぎるところがあり、あまり好かれていない。
 実は私も、孟達を一番信用していなかった。反骨の相は、魏延ではなく、孟達にある。裏切りの者の顔。
 しかし孟達は、勇猛な将軍であり、おろそかにはできない。
 犍為郡は、北へも南へも進出しにくく、監視しやすい地域でもある。
「文長、女忍隊に命じて、孟達の監視を怠らないようにしてください。よいですか」
「はい」
「孟達を犍為郡太守とします。彼も益州の将軍です。しっかりと働いてもらわなければなりません」

「南部四郡の太守はどうしましょうか。牂牁郡、越巂郡、益州郡、永昌郡」
「南部は、漢民族以外の異民族が多く住んでいる地域で、常に叛乱の危険があり、統治はむずかしいと思われます」
「張松、蔣琬、董允、費禕は優秀な文官であると法正から聞いています。彼らに任せてみませんか」
「あまり強力な将軍を置くと、かえって反発されるかもしれません。劉禅様のおっしゃるとおり、文官に任せ、ゆるやかに統治するのがよいかもしれません」
「では、彼らに任せましょう」
 前世の記憶によれば、益州南部で孟獲の叛乱が起こり、諸葛亮が南征したことがある。
 南部四郡の統治は、今後の課題となるであろう。

「馬忠と馬岱に役がありませんが、どうしますか」
「文長の直属の将軍としませんか。彼らは遊軍の長とし、いかようにも動けるようにしておくのです」
「それはよいですね。自分の手足となって動いてくれる将軍がほしかったのです」
「文長、若い馬忠と馬岱を強い将軍に育ててください」
「承知しました」
 
 益州の人事案が決まった。

 蜀副総帥益州刺史 劉禅
 益州行政長官 龐統
 益州軍師 魏延
 大将軍兼漢中郡太守 趙雲
 大将軍兼巴郡太守 馬超
 蜀郡太守 法正
 将軍兼広漢郡太守 李厳
 将軍兼犍為郡太守 孟達
 牂牁郡太守 蔣琬
 越巂郡太守 張松
 益州郡太守 董允
 永昌郡太守 費禕
 将軍兼副総帥親衛隊長 王平
 軍師直属将軍 馬忠
 軍師直属将軍 馬岱

「これを幹部全員に提示してみましょう」と私は言った。
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