上 下
51 / 66

ライブの曲順

しおりを挟む
『愛の火だるま』 クラベス
『わかんない』 クラベス
『秋の流行』 マラカス
『世界史の歌』 タンバリン
『We love 両生類』 トライアングル

 日曜日の午前9時、樹子の部屋に5人が集まったとき、彼女は曲名と打楽器名が書かれた紙を見せた。
「なんだこれは?」
「あたしたちのライブの曲順と各曲で使う打楽器よ」
「うわ、凄い! どんどん具体化していくね。ちょっと怖い……」
「楽しそうなライブだね。観客として聴きたいな」
「何言ってるの、良彦! しっかりとベースを弾いてもらうわよ!」
 それを見たとき、すみれは緊張して、何も言えなかった。
 若草物語のライブに出演することの重みを急に感じてしまったのだ。恥はかきたくない。お荷物にもなりたくない。コーラスと4種類の打楽器の演奏をそれなりに会得しなければならない。
「いつ、ライブをやるの?」とすみれは訊いた。
「期末試験が終わったら、南東京駅前でやりたいわね。夏休みには、他の駅でもやろうと思っているわ」
「おれたちに相談もなく、そんなことまで決めているのかよ!」
「いま相談しているのよ! どう思う?」
「いいんじゃない。やれるなら、やってみようよ」良彦はさらりと答えた。
「まあ、おれも異存はないけど」
 みらいは震えていた。
 期末試験後? そんなにすぐやるの?
「わたしは異存があるよ! ライブ怖い! 再来年にしよう!」
「来年の話をすると、鬼が笑うと言うわ。再来年の話なんてしたら、閻魔大王が笑うわよ! 未来人、しっかりしなさい!」
「はい……」
「私も異存があるわ。早すぎる。もっと練習してからにしたい……」とすみれは言った。
「あなた抜きでもライブはできるわ。あたしは未来人、ヨイチ、良彦の賛成があればやるつもり。原田さんはあたしたちのデビューライブに参加したくないの? 嫌なら別にいいのよ」
 すみれは絶対に置いていかれたくなかった。
「やるわよ……!」
「いい表情ね。しっかりと頼むわよ!」
 樹子とすみれが睨み合った。みらいは、ふたりが対立しているみたいに見えて、少し怖くなった。
「期末試験は7月上旬よ。未来人はちゃんと勉強もしなさい。また昇級をめざすのよ。音楽と勉強の両立をするの! お母さんに怒られないようにしてね!」
「自信ない……。また勉強会をしてよ!」
「1週間前になったらやりましょう。それまでは、自力で勉強しなさい。自立しろ、未来人!」
「はい。きびしいなあ、樹子は……」
「何言ってるの! あたしほど友だち思いの人間がいると思う?」
「いないよ。樹子は最高の友だちだよ!」
 みらいの樹子を見る信頼し切った目を見て、すみれは羨ましい、と思った。私にはたくさんの友だちがいるけれど、親友はいない……。
「じゃあ練習を始めるわよ。今日は『愛の火だるま』と『わかんない』を徹底的にやりましょう。この曲にも、コーラスを入れていくわよ。いい、原田さん?」
「いいわ。やってやるわよ!」
 すみれは開き直った。やれるだけやってやる、と心を決めた。
 その日、若草物語はみっちりと練習した。
 午後5時、解散したとき、すみれはくたくたになっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

ヒツネスト

天海 愁榎
キャラ文芸
人間の想いが形となり、具現化した異形のバケモノ━━『想獣』。 彼らは、人に取り憑き、呪い、そして━━人を襲う。 「━━私と一緒に、『想獣狩り』をやらない?」 想獣を視る事ができる少年、咸木結祈の前に現れた謎の少女、ヒツネ。 二人に待ち受ける、『想い』の試練を、彼ら彼女らは越える事ができるのか!? これは、至って普通の日々。 少年少女達の、日常を描く物語。

After-eve

本宮 秋
キャラ文芸
小さな街にある[After-eve ]というパン屋を 中心に30代から40代の人達のヒューマンドラマ

マインハールⅡ ――屈強男×しっかり者JKの歳の差ファンタジー恋愛物語

花閂
キャラ文芸
天尊との別れから約一年。 高校生になったアキラは、天尊と過ごした日々は夢だったのではないかと思いつつ、現実感のない毎日を過ごしていた。 天尊との思い出をすべて忘れて生きようとした矢先、何者かに襲われる。 異界へと連れてこられたアキラは、恐るべき〝神代の邪竜〟の脅威を知ることになる。 ――――神々が神々を呪う言葉と、誓約のはじまり。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

AP
キャラ文芸
『SSTG』はセハザ《no1》の第3作目に当たります。<不定期ですが更新継続中> *****あらすじ*****  路地裏、明かりの届かない建物の狭間で響く声。 人影が人を殴り倒す。 水に濡れ妖しく光る固い地面は、遠くのネオンの鮮烈な原色の灯りを朧気《おぼろげ》に反射させて。 ――――――違和感・・・異様な感覚・・それは、水たまりに反射した、自分の顔の辺りだった・・僅かに緑色の光が、漂った一瞬の――――――おい、どうした?大丈夫か?チャイロ、」 肩を掴まれて起こされる、自分を見つめる彼は・・・。 「・・え、・・あ、ああ、大丈夫・・・、ウルク、」 ―――――彼らを見下ろすような夜空に、白く孤高のリリー・スピアーズが常にそびえ立つ。  【SSTG 『セハザ《no1》-(3)- 』】 ********** 不定期更新中です。 次話がいつになるかわかりません。 気になる方は、良ければフォロー等をお願い致します。 ************************************* 以下は、説明事項です。 *****ナンバリング説明***** ・セハザno1の『no1』の部分は。主人公の違いです。(たぶん。  セハザシリーズに世界観の繋がりはありますが、話は独立しています。 前後の経過はありますが、基本的にはどのナンバーから読んでも大丈夫です。 *****ちなみに***** ・この作品は「カクヨム」にも掲載しています。

紘朱伝

露刃
キャラ文芸
神女が幻術師を打ち滅ぼしたという伝説が残る村。そこに、主人公たちは住んでいる。 一人は現時点で最後の能力者、朱莉。彼女は四精霊を従えている。そしてもう一人は朱莉の幼馴染の紘毅。 平和に暮らしていた二人だが、ある日朱莉は都へ行かなければならなくなり、二人は離れ離れとなった。 朱莉が出てから村に異常が発生し、紘毅はそれに巻き込まれる。 四精霊の力を借りながら二人は再会し、村の平和の為に戦っていく。

処理中です...