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ライブの曲順
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『愛の火だるま』 クラベス
『わかんない』 クラベス
『秋の流行』 マラカス
『世界史の歌』 タンバリン
『We love 両生類』 トライアングル
日曜日の午前9時、樹子の部屋に5人が集まったとき、彼女は曲名と打楽器名が書かれた紙を見せた。
「なんだこれは?」
「あたしたちのライブの曲順と各曲で使う打楽器よ」
「うわ、凄い! どんどん具体化していくね。ちょっと怖い……」
「楽しそうなライブだね。観客として聴きたいな」
「何言ってるの、良彦! しっかりとベースを弾いてもらうわよ!」
それを見たとき、すみれは緊張して、何も言えなかった。
若草物語のライブに出演することの重みを急に感じてしまったのだ。恥はかきたくない。お荷物にもなりたくない。コーラスと4種類の打楽器の演奏をそれなりに会得しなければならない。
「いつ、ライブをやるの?」とすみれは訊いた。
「期末試験が終わったら、南東京駅前でやりたいわね。夏休みには、他の駅でもやろうと思っているわ」
「おれたちに相談もなく、そんなことまで決めているのかよ!」
「いま相談しているのよ! どう思う?」
「いいんじゃない。やれるなら、やってみようよ」良彦はさらりと答えた。
「まあ、おれも異存はないけど」
みらいは震えていた。
期末試験後? そんなにすぐやるの?
「わたしは異存があるよ! ライブ怖い! 再来年にしよう!」
「来年の話をすると、鬼が笑うと言うわ。再来年の話なんてしたら、閻魔大王が笑うわよ! 未来人、しっかりしなさい!」
「はい……」
「私も異存があるわ。早すぎる。もっと練習してからにしたい……」とすみれは言った。
「あなた抜きでもライブはできるわ。あたしは未来人、ヨイチ、良彦の賛成があればやるつもり。原田さんはあたしたちのデビューライブに参加したくないの? 嫌なら別にいいのよ」
すみれは絶対に置いていかれたくなかった。
「やるわよ……!」
「いい表情ね。しっかりと頼むわよ!」
樹子とすみれが睨み合った。みらいは、ふたりが対立しているみたいに見えて、少し怖くなった。
「期末試験は7月上旬よ。未来人はちゃんと勉強もしなさい。また昇級をめざすのよ。音楽と勉強の両立をするの! お母さんに怒られないようにしてね!」
「自信ない……。また勉強会をしてよ!」
「1週間前になったらやりましょう。それまでは、自力で勉強しなさい。自立しろ、未来人!」
「はい。きびしいなあ、樹子は……」
「何言ってるの! あたしほど友だち思いの人間がいると思う?」
「いないよ。樹子は最高の友だちだよ!」
みらいの樹子を見る信頼し切った目を見て、すみれは羨ましい、と思った。私にはたくさんの友だちがいるけれど、親友はいない……。
「じゃあ練習を始めるわよ。今日は『愛の火だるま』と『わかんない』を徹底的にやりましょう。この曲にも、コーラスを入れていくわよ。いい、原田さん?」
「いいわ。やってやるわよ!」
すみれは開き直った。やれるだけやってやる、と心を決めた。
その日、若草物語はみっちりと練習した。
午後5時、解散したとき、すみれはくたくたになっていた。
『わかんない』 クラベス
『秋の流行』 マラカス
『世界史の歌』 タンバリン
『We love 両生類』 トライアングル
日曜日の午前9時、樹子の部屋に5人が集まったとき、彼女は曲名と打楽器名が書かれた紙を見せた。
「なんだこれは?」
「あたしたちのライブの曲順と各曲で使う打楽器よ」
「うわ、凄い! どんどん具体化していくね。ちょっと怖い……」
「楽しそうなライブだね。観客として聴きたいな」
「何言ってるの、良彦! しっかりとベースを弾いてもらうわよ!」
それを見たとき、すみれは緊張して、何も言えなかった。
若草物語のライブに出演することの重みを急に感じてしまったのだ。恥はかきたくない。お荷物にもなりたくない。コーラスと4種類の打楽器の演奏をそれなりに会得しなければならない。
「いつ、ライブをやるの?」とすみれは訊いた。
「期末試験が終わったら、南東京駅前でやりたいわね。夏休みには、他の駅でもやろうと思っているわ」
「おれたちに相談もなく、そんなことまで決めているのかよ!」
「いま相談しているのよ! どう思う?」
「いいんじゃない。やれるなら、やってみようよ」良彦はさらりと答えた。
「まあ、おれも異存はないけど」
みらいは震えていた。
期末試験後? そんなにすぐやるの?
「わたしは異存があるよ! ライブ怖い! 再来年にしよう!」
「来年の話をすると、鬼が笑うと言うわ。再来年の話なんてしたら、閻魔大王が笑うわよ! 未来人、しっかりしなさい!」
「はい……」
「私も異存があるわ。早すぎる。もっと練習してからにしたい……」とすみれは言った。
「あなた抜きでもライブはできるわ。あたしは未来人、ヨイチ、良彦の賛成があればやるつもり。原田さんはあたしたちのデビューライブに参加したくないの? 嫌なら別にいいのよ」
すみれは絶対に置いていかれたくなかった。
「やるわよ……!」
「いい表情ね。しっかりと頼むわよ!」
樹子とすみれが睨み合った。みらいは、ふたりが対立しているみたいに見えて、少し怖くなった。
「期末試験は7月上旬よ。未来人はちゃんと勉強もしなさい。また昇級をめざすのよ。音楽と勉強の両立をするの! お母さんに怒られないようにしてね!」
「自信ない……。また勉強会をしてよ!」
「1週間前になったらやりましょう。それまでは、自力で勉強しなさい。自立しろ、未来人!」
「はい。きびしいなあ、樹子は……」
「何言ってるの! あたしほど友だち思いの人間がいると思う?」
「いないよ。樹子は最高の友だちだよ!」
みらいの樹子を見る信頼し切った目を見て、すみれは羨ましい、と思った。私にはたくさんの友だちがいるけれど、親友はいない……。
「じゃあ練習を始めるわよ。今日は『愛の火だるま』と『わかんない』を徹底的にやりましょう。この曲にも、コーラスを入れていくわよ。いい、原田さん?」
「いいわ。やってやるわよ!」
すみれは開き直った。やれるだけやってやる、と心を決めた。
その日、若草物語はみっちりと練習した。
午後5時、解散したとき、すみれはくたくたになっていた。
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