31 / 66
原田すみれの事情
しおりを挟む
原田すみれは美少女だ。
桜園学院高校1年2組には園田樹子という飛び抜けた美少女がいるので、クラスで2番目になってしまうが、衆目を集めるかわいい女の子であるのはまちがいない。
茶髪をポニーテールにしている。少しつり目で強気そうに見える樹子とちがい、すみれは少し垂れ目だ。背の高さは平均的で、スタイルはいい。メリハリのある体型。
中学2年生のときからつきあっている彼氏がいるが、彼は桜園受験に失敗し、滑り止めの公立高校に進学した。別の高校になってしまってから彼氏とは疎遠になった。4月に1度デートをしたきりで、ほとんど電話をかけていないし、かかってもこない。
このまま自然消滅かな、と思っている。別にそれでもかまわない。
すみれは桜園で充実した高校生活を送りたいと思っている。たくさんの友だちをつくりたいし、新たな彼氏もほしい。
桜園学院高校は中学からエスカレーター式に進学した内進生と高校受験に合格した外進生がいる。すみれは外進生で、優秀な成績で合格した。成績別クラスは文系はアルファ1、理系はアルファ2に所属している。
がんばれば東京大学も狙える学力を持っているが、勉強ばかりしているつもりはない。ほどほどに勉強し、無理せず進める大学へ行ければよいと思っている。親もあまりやかましく勉強しろと言うことはない。
部活はやっていない。運動部できつい練習に明け暮れるなどまっぴらだし、興味の持てる文化部はなかった。
すみれは1年2組の外進生の中で中心的地位を築きつつあった。
成績がよく、そこそこかわいい女の子とそこそこ格好いい男の子5人のグループをつくり、そこでリーダー的存在となっている。ときどきカラオケに行く。松任谷由実の曲をよく歌っている。
5月の中旬にして、すでに楽しい高校生活の基盤ができているが、何か物足りない感じもしている。クラスの中に気になるグループがあり、その生徒たちと交流を持ちたいのだが、うまくいっていない。
クラスで1番綺麗な女子、園田樹子。
背が高いだけであまりぱっとしないと思っていたが、表情がかわいらしくて、どことなく魅力的な少女、高瀬みらい。
樹子の彼氏でまずまず整った容姿を持ち、声が大きく、内進生の中心的存在である淀川与一。
彼女はいないようだが、容姿が校内でもピカイチで、成績もよく、性格もよさそうな男の子、棚田良彦。
この4人からなる個性的なグループがものすごく気になっている。彼らは音楽活動を始めたらしい。
「高瀬さん、バンド始めたの?」と訊いてみた。
「曲づくりを始めたよ! 私が歌詞を書いて、ヨイチくんが作曲するんだ!」
みらいは楽しそうだ。何かに打ち込んでいる人が持つオーラが感じられて、ワンランク魅力がアップしたように見える。
「いいなあ。私もやりたいなあ」
「ドラムスだけ募集中よ」と樹子が言う。この美少女がすみれは苦手だ。自信満々で高慢そうでとっつきにくい。彼女はみらいにだけ妙にやさしいのだ。
「ドラムスを始めたら、参加させてくれるの?」
「それなりの腕がなければお断りよ」
ちっ、とすみれは思った。
彼女は自分のグループで「バンドやらない?」と提案した。
「バンド? すみれ楽器できるの?」と伊藤沙也加が言った。彼女はクラスで3番目にかわいい。
「できない。でもドラムスをやりたいの」
「原田、太鼓叩きたかったのかあ」と八坂太一が言った。彼はクラスで1番背が高い男の子だ。
「ストレス解消になりそうでしょう?」
「私、ピアノ弾けるよ」と長野由美子が言った。彼女はおっとりとしたお嬢様タイプ。
「即戦力じゃん!」
「おれ、ヴォーカルだったらやってもいい。楽器の練習とかだりぃ」と仁科春が言った。彼はなかなか格好いい容姿をしているのだが、いつも気怠げだ。
「仁科くん、音痴だからなあ」
「なんだとお!」
「まあいいや、音痴のヴォーカルでも。ドラムスが叩ければいい」
「本当にバンドやるの?」
「やる! 放課後にマクドナルドで打ち合わせよ!」
すみれはとにかくドラムスがやりたかった。それを会得できさえすれば、このバンドは解散していい。むしろ、解散した方がいい。
すみれの目的は、樹子が中心になってやっているバンドのメンバーになることだった。そのためには練習スタジオに通って、ドラムスを叩かなくてはならない。
彼女はみらいたちが気になって仕方がない。棚田良彦を密かに好きだったりする。
友だちを踏み台にしてでも、すみれはやるつもりだった。
桜園学院高校1年2組には園田樹子という飛び抜けた美少女がいるので、クラスで2番目になってしまうが、衆目を集めるかわいい女の子であるのはまちがいない。
茶髪をポニーテールにしている。少しつり目で強気そうに見える樹子とちがい、すみれは少し垂れ目だ。背の高さは平均的で、スタイルはいい。メリハリのある体型。
中学2年生のときからつきあっている彼氏がいるが、彼は桜園受験に失敗し、滑り止めの公立高校に進学した。別の高校になってしまってから彼氏とは疎遠になった。4月に1度デートをしたきりで、ほとんど電話をかけていないし、かかってもこない。
このまま自然消滅かな、と思っている。別にそれでもかまわない。
すみれは桜園で充実した高校生活を送りたいと思っている。たくさんの友だちをつくりたいし、新たな彼氏もほしい。
桜園学院高校は中学からエスカレーター式に進学した内進生と高校受験に合格した外進生がいる。すみれは外進生で、優秀な成績で合格した。成績別クラスは文系はアルファ1、理系はアルファ2に所属している。
がんばれば東京大学も狙える学力を持っているが、勉強ばかりしているつもりはない。ほどほどに勉強し、無理せず進める大学へ行ければよいと思っている。親もあまりやかましく勉強しろと言うことはない。
部活はやっていない。運動部できつい練習に明け暮れるなどまっぴらだし、興味の持てる文化部はなかった。
すみれは1年2組の外進生の中で中心的地位を築きつつあった。
成績がよく、そこそこかわいい女の子とそこそこ格好いい男の子5人のグループをつくり、そこでリーダー的存在となっている。ときどきカラオケに行く。松任谷由実の曲をよく歌っている。
5月の中旬にして、すでに楽しい高校生活の基盤ができているが、何か物足りない感じもしている。クラスの中に気になるグループがあり、その生徒たちと交流を持ちたいのだが、うまくいっていない。
クラスで1番綺麗な女子、園田樹子。
背が高いだけであまりぱっとしないと思っていたが、表情がかわいらしくて、どことなく魅力的な少女、高瀬みらい。
樹子の彼氏でまずまず整った容姿を持ち、声が大きく、内進生の中心的存在である淀川与一。
彼女はいないようだが、容姿が校内でもピカイチで、成績もよく、性格もよさそうな男の子、棚田良彦。
この4人からなる個性的なグループがものすごく気になっている。彼らは音楽活動を始めたらしい。
「高瀬さん、バンド始めたの?」と訊いてみた。
「曲づくりを始めたよ! 私が歌詞を書いて、ヨイチくんが作曲するんだ!」
みらいは楽しそうだ。何かに打ち込んでいる人が持つオーラが感じられて、ワンランク魅力がアップしたように見える。
「いいなあ。私もやりたいなあ」
「ドラムスだけ募集中よ」と樹子が言う。この美少女がすみれは苦手だ。自信満々で高慢そうでとっつきにくい。彼女はみらいにだけ妙にやさしいのだ。
「ドラムスを始めたら、参加させてくれるの?」
「それなりの腕がなければお断りよ」
ちっ、とすみれは思った。
彼女は自分のグループで「バンドやらない?」と提案した。
「バンド? すみれ楽器できるの?」と伊藤沙也加が言った。彼女はクラスで3番目にかわいい。
「できない。でもドラムスをやりたいの」
「原田、太鼓叩きたかったのかあ」と八坂太一が言った。彼はクラスで1番背が高い男の子だ。
「ストレス解消になりそうでしょう?」
「私、ピアノ弾けるよ」と長野由美子が言った。彼女はおっとりとしたお嬢様タイプ。
「即戦力じゃん!」
「おれ、ヴォーカルだったらやってもいい。楽器の練習とかだりぃ」と仁科春が言った。彼はなかなか格好いい容姿をしているのだが、いつも気怠げだ。
「仁科くん、音痴だからなあ」
「なんだとお!」
「まあいいや、音痴のヴォーカルでも。ドラムスが叩ければいい」
「本当にバンドやるの?」
「やる! 放課後にマクドナルドで打ち合わせよ!」
すみれはとにかくドラムスがやりたかった。それを会得できさえすれば、このバンドは解散していい。むしろ、解散した方がいい。
すみれの目的は、樹子が中心になってやっているバンドのメンバーになることだった。そのためには練習スタジオに通って、ドラムスを叩かなくてはならない。
彼女はみらいたちが気になって仕方がない。棚田良彦を密かに好きだったりする。
友だちを踏み台にしてでも、すみれはやるつもりだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
待つノ木カフェで心と顔にスマイルを
佐々森りろ
キャラ文芸
祖父母の経営する喫茶店「待つノ木」
昔からの常連さんが集まる憩いの場所で、孫の松ノ木そよ葉にとっても小さな頃から毎日通う大好きな場所。
叶おばあちゃんはそよ葉にシュガーミルクを淹れてくれる時に「いつも心と顔にスマイルを」と言って、魔法みたいな一混ぜをしてくれる。
すると、自然と嫌なことも吹き飛んで笑顔になれたのだ。物静かで優しいマスターと元気いっぱいのおばあちゃんを慕って「待つノ木」へ来るお客は後を絶たない。
しかし、ある日突然おばあちゃんが倒れてしまって……
マスターであるおじいちゃんは意気消沈。このままでは「待つノ木」は閉店してしまうかもしれない。そう思っていたそよ葉は、お見舞いに行った病室で「待つノ木」の存続を約束してほしいと頼みこまれる。
しかしそれを懇願してきたのは、昏睡状態のおばあちゃんではなく、編みぐるみのウサギだった!!
人見知りなそよ葉が、大切な場所「待つノ木」の存続をかけて、ゆっくりと人との繋がりを築いていく、優しくて笑顔になれる物語。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
【連載中】は、短時間で読めるように短い文節ごとでの公開になります。
その後、誤字脱字修正や辻褄合わせが行われて、合成された1話分にタイトルをつけ再公開されます。
物語の細部は連載時と変わることが多いので、二度読むのが通です。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
グレープフルーツムーン
青井さかな
恋愛
プロを目指してバンド活動をしている大学生の杉浦、ある日ライブハウスで出会った年上の女性、英理奈は古い洋楽が好きでレコード収集が趣味でおまけに美人でまさに理想の相手だけど、そんな彼女には……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる