生きているから遊びたい。

みらいつりびと

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ソウルフード

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 ソウルフードとは、もともとは米国南部の黒人料理のことを指すらしいです。奴隷だった彼らは、支配者である白人が食べない肉の部位を使った料理を食べていました。
 牛の舌、複胃、尾、豚の小腸、耳、頬、足などです。内蔵料理や豚足で、美味しいものばかりですが、奴隷時代の黒人たちは生きるためにやむなく食べていたのでしょう。
 2000年以降の日本で、ソウルフードという言葉が、主に郷土料理を指す言葉として使われるようになりました。ソウルとは魂、精神という意味で、土地の魂がこもった料理をそう呼ぶようになったのでしょう。
 私の記憶が確かならば、漫画『美味しんぼ』で「私は味噌汁が飲みたくなったな」「我々のソウルフードですか」という台詞があったはずです。
 日本語は柔軟な言語で、次々と和製英語が生まれていきます。ソウルフードという言葉もすでに日本語として定着しています。私の感覚では、地域にソウルフードがあるように、個人にソウルフードがあってもおかしくないと思います。
 私のソウルフードはカレーうどんです。
 私の祖父母はもうだいぶ前に亡くなってしまいましたが、大阪府に住んでいました。私は就学以前から中学時代まで、頻繁に祖父母の家に泊まっていました。小学生の夏休みには、1か月近く滞在していたこともあります。
 祖父母の家のそばに『力餅』といううどん屋さんがあり、何を頼んでも安くて美味しかったのですが、特にカレーうどんが私のお気に入りでした。昼食は来る日も来る日もカレーうどんを食べつづけていました。いくら食べても飽きなかったです。 
 うどんは柔らかく、腰はほとんどなかったのですが、本場の讃岐うどんを知らなかった当時の私は、うどんとはこういうものだと思っていました。
 うどんの汁は出汁だしとカレー粉が効いていて、片栗粉でとろみが付けてありました。この汁の味が、子どもの私にはこの上ないものに感じられていたのです。いまの私はさまざまな極上のラーメンスープを知っていますが、そのときは知りません。カレーうどんの汁を最高のスープだと思って飲み干しつづけました。
 具は長ネギの青い部分と油揚げです。きつねうどんのような甘い味付けはしていない揚げです。汁が揚げに絡んで、絶妙な味わいとなっていました。
 子ども時代に幾度となく味わったカレーうどんは、ソウルフードとなって私の魂に刻み付けられています。
 もう祖父母の家は取り壊され、『力餅』に行くこともありません。
 私は蕎麦屋に入ると、いまでもカレーうどんかカレーそばを注文することが多いです。美味しいカレーうどんをいくつも食べました。
 しかし、『力餅』のカレーうどんは記憶の中で昇華されていて、どんなに旨いカレーうどんを食べても、それを超えることはできないのです。
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