翡翠の環−ご主人様の枕ちゃん

綿入しずる

文字の大きさ
45 / 77
Ⅱ‐回青の園

服ⅲ

しおりを挟む
 床からベッドへと連れていかれて座り込み、柔らかい布団が肌に触れると少し安心した。いつもの場所だ。此処ならついたてもあるから、誰か来たとしてもそのまま見られてしまうことはない。
 ほっとすると同時に後悔も募ってきた。折角ちゃんと奉仕したのにまた俺からねだる流れだ。本当は主人が言うまで待つべきなんだろうに。主人が言うとおり若いからなのか――堪えの利かないこの身が恨めしい。
「……俺が欲しがってすみません」
 呟くと、改めて向かい合った主人は眉を上げて怪訝そうな顔をした。
「お前は私をその気にしたんだ。何を気に病む」
 顔を揉んで上を向かせられる。顔が近くに来て、頬に接吻し耳を齧る。ぞくと背が震えた。掌が肩を丸く撫でて滑り落ちる。
「抱かせろと言うより抱いてくれと請われるほうが気分がいい。そういうものだ。やることは変わらずともな」
 ……それはそう、かも。と思うのは主人の言葉だからだろうか。性奴隷の仕事は難しい。その考え方も。主人が呆れていないならいいけど――とりあえず楽しそうではある。
 股間だけじゃなく乳首も立ってる。胸の虫食い痕を辿った指に軽く引っかかれると身が竦んでかくんと腰が揺らいだ。
「っふ」
「ここも繋いでやろうか。天幕で見ただろう」
 主人の指が左右を辿る。ここや、もっと凄いところを宝飾品で飾って鎖で繋いだ奴隷たちの姿が甦る。
「いや、です……そんな、あ……っ」
「揺れる細工が欲を煽ると言う。ここにも」
 示す主人の手は止まらない。場所を変えても治まらず裾を持ち上げている俺の陰茎を握り、皮をずらして先端を擦った。囁く声が腰にじんわりと重く溜まっていくようだ。
「穴を開けて通す趣味のよい主人がいるそうだ。――お前は怖がりだから、そういうところに流れ着かんでよかったな」
 想像するだけで縮みあがる思いだったが、それでも股間は萎えてくれない。主人の手で服を捲られて根元までよく見える。また顔が熱る。そうして何度も体が熱くなるから、部屋をちゃんと冷やせているか自信が無くなってきた。
「私は宝石に穴を空けるのは好かん。光物も……この部屋では控えめなくらいでいい」
 手は離れてしまって、着けられた腕輪と鎖を辿る。ただぶら下がっているだけの、この服と同じで大して意味のない鎖だと思うのに、主人の指がかかると途端に意識する。
 くんと引かれて手を挙げるように示される。つい顔を隠すとより高く。額の上へと持ち上げられて鎖が頭の後ろへと流される。さら、ちゃら、と首輪とぶつかって音を立てた。
「そのまま腕を上げていろ。お前の体をよく見せるんだ。……煽ればそれだけ早く挿れてやれるぞ」
 鎖はどこにも留められはしないのに、その一言で繋がれる。開いた足の間はおろか、晒された胸も、情けない顔も全部見られてしまう。羞恥と興奮にか肌が赤くなっている気がする。
 居た堪れない俺に主人は笑って、膝立ちにした足を開かせた。潤滑剤を掬った指が潜って尻の穴を撫でる。期待して、そこも体の奥もぎゅうとうねる感じがする。
 見せ物にもならない貧相な体を晒して、身を逸らして快感に堪える。煽り方なんて分からないけれど、言うとおりにしないと。
「く、あ……」
 主人の指がぬるりと入ってきたのを締めつけた。物を咥える異物感はあるが、もう痛みなど余程手荒にされないと感じない。
 実のところ主人は容赦はないが、最初に時間をかけて慣らしたようにいつだって丁寧で、乱暴じゃない。血を見たことなど一度もない。鞭も使わないし殴られたこともないから、その手の記憶は気持ちよく心地良いものばかりが増えていく。今のように。
 姿勢のせいかいつもよりはっきりと指を感じる。性器の裏側を押されてどこにも、何にも縋ることができない身が揺れる。紗一枚だけ着て、何も隠していない体。突き出した胸の先端が赤く尖っているのも、勃起した陰茎が揺れるのも丸見えだ。
 鎖が揺れ首筋をくすぐって、それさえ主人が触れるもののように錯覚する。
 ふうふうと息を抑えて耐えていると二本、三本と指が増やされていく。中を掻き回して広げて、溶かすように柔く解される。もう、と思うと動きが止まって引いていってしまう。その繰り返し。すべて見透かされている。
 やがて引き抜かれ離れる手に喉が鳴った。主人はまた大きくなった陰茎を擦りたてて、俺を呼ぶ。
「もうここに受け入れるのも慣れただろう。跨って自分で挿れてみろ」
 腕を下ろすことを許されて、寝そべった主人の上に跨る。尻に擦りつけられて、開かれた場所がもどかしくなる。
 主人は悠然と微笑んで待っている。普通に寝ているときとも変わらず落ち着いて見えたけれど――見上げる金の眼差しに促された。
「ん、く……っう……」
 息んで開きながら腰を下ろして、宛がわれた陰茎を自ら中に入れる。太い物が肉を広げて、指より深く入ってくる。指で触れてもらうのも気持ちいいがこの熱に体を貫かれるのは本当に、体の奥から溶かされてしまうような感じがする。
 苦しさを我慢して最後まで押し込む。中が全部満たされて、熱い。
「……よく出来た。今日は頑張るな」
「っ……」
 腰を掴んで引き寄せ上下に揺すられる。崩れそうな姿勢を必死に保ち、震える足で動きについていく。さっきは手に余った、口に入りきらなかった物がすべて収まって体の中を擦り奥を突いてくる。
「あぅ、ん、んあっ……!」
 苦しい、つらい、気持ちいい。
 意味のない声が押し出されて止まらない。体を貫く熱に突き崩されて、主人に縋るように前へと倒れ込んだ。それでも腰が動かされ、何度も、何度も抉られて頭が真っ白になる。
「んっ……! っ――ふ、ぅ……っ」
 胸に抱きとめられて頭を撫でられるとふわふわして、剥きだしの背中を擦られるとそれだけでもう、軽く達してしまって喘ぐ声が漏れる。
 しばらくはそうしてされるがまま、乱れる息をどうにか整えようと必死だったが、締めつけると感じる大きさに主人のほうはまだ達していないと気づかされた。まだ続きがある。まだ、もっと、頑張らないと。でも体も頭も上手く動かない。
「すみ、ませ……ごしゅじんさま、使って……俺に、出してください」
 せめてと口を動かすと今度は俺が布団に横たえられて――ぐと深く押しつけられて悶える。主人の顔が近くに来た。黒い髪が頬をくすぐる。唇に触れた舌にも舐め溶かされてしまいそうだと思う。
 そこからはまた苦しかった。
 二回目っていうのは最初より時間がかかるのだ。申し出たとおり主人が腹に精液を出すまで、俺は何度も気をやって我慢できずにぐずぐずと泣いてしまった。それでもやっぱり溶けることはなく残って――風呂の支度に呼ばれた使用人が離れに出入りする間は、ベッドの奥で縮こまって隠れているしかなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

処理中です...