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Ⅰ‐翡翠の環
洗濯*
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きっちり座って三人乗りほどの小さい馬車だったが、窓に玻璃が嵌っていたし座席はふかふかのクッション張りだし、とんでもなく豪華なのではという気はしていたのだ。馬車でも主人は俺を荷台ではなく隣に――それもぴったり横に座らせて、降りてからまた手を引いた。俺は、屋敷が見えて目を見開いた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。理髪師を呼んでくれ」
「かしこまりました」
「これの服を何か見繕ってくれ。見栄えのしそうなものを」
「はい、何着かお持ちいたします」
屋敷がでかい。見えるところでは三階建ての場所もある。そして広い。芝や木々まできっちりした雰囲気の手入れが行き届いた感じの庭に囲まれている。庭に泉がある。口々に挨拶する使用人が多い。主人の帽子を預かるだけの者、上着を預かるだけの者、言いつけられて消えていく者。
皆俺を見ていたが主人に何も聞かない――聞けないのか、俺にも情報が入ってこない。俺はこんなところで何に使われるのか。この屋敷を冷やすには、俺だけでは不足だろう。
見えるところに奴隷はいなかった。白奴隷も、他の奴隷も。気配も分からない。
すべすべの石造り、広すぎる玄関、広すぎる通路、広すぎる広間を連れられて、ずんずんと奥へと連れてかれた。中も俺にもすぐ分かるくらい豪華なものばかりだったが、それに怯える暇もなかった。
水音。灯りをいくつも点した広い室内。薄青のタイル張りの床と浴槽。
ようやく足が止まった。行き先は風呂だった。
水を冷やすのに俺たちを使うやつもいるが、どうも雰囲気が違う。着くまでに色々脱いでいた主人は此処では靴だけを脱いで、シャツの腕捲りをして、次には俺の腰巻に手をかけた。水風呂にしたいなら普通、逆だ。
「っえ、あの」
「大人しくしろ」
動揺には一睨み。体が固まる。下着同然の一枚きりの服が剥かれて、既に水の溜まった浴槽を示される。
「入れ。――座れ」
着ていた服が床に落ちる音を聞きながら恐る恐る水に足をつけると、両足が入ったところで肩を掴んで座り込まされた。温い水に腰までつかる。手桶で汲まれた水がかけられて、
「目を閉じろ」
頭に何か油のようなものが垂らされた。ぐしゃぐしゃと掻き回されると泡が立ってきて、まだ閉じていなかった目に何か入って痛い。きつく閉じる間に、主人の手が耳へと降りてきた。揉む指先。
「ご、しゅじんさま」
痛みに目を開けられないまま、咄嗟に手を掴んで叫んでしまった。主人の手が止まる。俺ははっとして、そおーっと手を引いてから恐々と口を開いた。目も開いた。痛くて涙が滲む。
「風呂なら、自分で、洗えます、ので」
目はとても痛いが、花のようないい香りがする。これは石鹸みたいなものだろう。そして俺は今どうも、なぜか、主人に手ずから洗われている。
俺たちは売り物なのでけっこう清潔だが、買う側が奴隷が汚いと思うのはよくあることだ。よくあることだが、だからといって部屋に入れる前に自分で洗ったりしない。汚いと思ってるんだから、触れたりしない。洗えと命じられれば自分で洗うし、もし手抜きが心配なら洗わせる手は他にいくらでもあるはずだ。使用人が居ないならともかく、この屋敷でなら洗濯女にでもついでにやらせればいい。
だからなんとなく、察しはついている。その想像を信じられないだけで。
「なんだ、ちゃんと恥ずかしいのか。それはなおさら楽しいな」
この主人は変わり者だ。しかもどうも逆に乗り気にさせてしまった。
「目を閉じていろと言っただろう。綺麗な目が腫れたらどうする」
目元に水をかけて拭われる。柔い場所に伸びてくる指にまたぎゅっと目を閉じて身を固くしたが、目を潰されるようなことはなく、痛みが遠のいた。
――きれいな、目が?
それなら、それなら。
「みどりの目の奴隷が欲しいなら他にもいたでしょう。こんな痩せぎすで虫食いじゃなくて、もっと」
今日は初競りだった。若くて綺麗なのが、女も男もいたはずだ。少なくともこれでいいかと妥協するような品揃えではなかった。そうでなくたって、俺でいいかとは普通ならない。俺はみすぼらしい奴隷だ。
「ろくに反応しないかと思ったが、口も十分利けるな。声も悪くない。……シミだの痣だのは私は気にしない」
「俺にするなんて悪趣味だ……」
「言うな。まあそれくらいのほうが話し相手にもいい」
思わず口をついた言葉も、怒られはしなかった。石鹸で霞んだ目でちらと見た顔が笑っていてひと息を呑む。
再び動き出した指が首輪の間をするりと撫でて、体を硬くする。顔から胸にかけて散った虫食い痕を撫でて辿った手が、そのまま全身を洗い始めた。
俺の体のすべてを、主人の手が辿った。首を掴み胸を撫であばらを辿り、脇をくすぐって身を捩るのも許さず、指先、爪の間まで。そして背、腹、股。
水の中で、急所を掴む手。咄嗟に閉じた膝は無理矢理割られた。
「いや……」
「許さん」
拒否の声が細くしか上げられないのはきっと首輪のせいで。それさえ却下されて、俺は黙って足を開くしかなかった。粗末な物も皮を剥いて洗われる。尻の隙間も、そして足も掴んで裏も爪先もすべて。こんなに人に触られたことなんてない。すべてを暴くような手つきに泣きそうだった。
それだけでも泣きそうだった、のに。
「処女か?」
一瞬、意味が分からなくて、一瞬後に血の気が引いた。俺は声も出せずに、何度も頷いた。経験なんてない。どっちもだ。
そうか、やっぱりそういう、そういうことになるのか。これから俺はそういう使い方をされるのか。今回は白奴隷じゃなくて、性奴隷ってわけか? なおさら他のやつのほうが適役だろうに!
溜息が聞こえて息を呑む。頭から水をかけられて、泡を流される。その水越しにまた声がする。
「……なら加減してやるか、仕方ない。こちらに出ろ。座って足を開け」
俺は震えながら浴槽の縁に腰掛けて言われたとおりに足を開いた。主人が横から取っ手つきの瓶を手に取り傾けるとさっきと同じ油のような石鹸液が垂れてくる。今度は股間に。揉んで、泡立てて――瓶の陰から取りだされた、小さな刃物の光にさらに身が竦んだ。
「切られたくなければ動くなよ」
言って、剃刀で股に生えていた毛を剃り取られた。ざりざりと何か削るような音に鳥肌が立つ。水をかけ子供のようになった股を確認して、主人は剃刀を置いた。
「これは使い物になるか? 勃たせろ」
嫌だ。無理だ。思うのに。
怖くて縮みあがっているはずなのに言われて揉まれるとすぐに勃起してしまって、体のちぐはぐさがまた恐ろしくて涙が出た。俺は声を殺し必死になって姿勢を保ち、その恐怖と恥ずかしさに耐えた。上下に擦られて、腹がぎゅうとなり熱いものが込み上げる。
「っ――」
射精するのはいつぶりだろうか。勢いよく飛んで主人の手にかかった。怖くて嫌なのに気持ちはいいようで、目がちかちかする。
「ああ、ちゃんと精通しているな。細いからどうかと思ったが」
言いながら精液を揉んだその手と、萎えはじめた股を洗い流す。主人の呟く声はどこか遠かったが、次の言葉ははっきりと聞こえた。
「後ろを向いて尻を出せ」
鍵を持った主人の命令は、よく通るのだ。平伏せと言われたら伏せる。靴を舐めろと言われたら舐める。やれと言われたらやる。でも、心までは簡単に頷いてくれない。
「いや……っいやです! 無理です!」
いっそ心まで奴隷にしてくれれば、と思ったことは何度もある。だったらどれだけ楽になれるだろう。何も嫌なことはなくなって、こんなに怖がらなくて済む。
初めてというのは、女でも男でも痛いものだと聞いた。特に尻を使われるのはそれはそれは苦しくて痛いのだとも。見た目のよくない俺には関係ない話だと思っていたが、まさかこんな日が来るなんて。
「挿れんから安心しろ。後ろを向け」
繰り返される命令にもはや拒否の声さえ出なくなった。体が勝手に従う。嫌だと思うのに床に膝をつき、後ろを向く。泡の流れた浴槽が見える。主人の動きが見えないのが怖い。
頭を掴まれて震えまで止まってしまった。
「足を閉じていろ」
手を放して、今度は腿を掴まれる。ぎゅと膝を閉じて――後ろから熱いものが触れる。ぬるりと、足の間を何か滑った。
「具合は悪いな。もっと締めろ」
恐る恐る視線を己の足へとずらすと、太腿の間を出入りする太く大きな男の物が見えた。熱くて硬い。生々しい赤さが俺の太腿を擦っている。濡れた音がして、服を着たままの主人の腰が尻に触れているのが分かる。尻を掴んで声が続く。
「後でこれが入るように広げてやる」
気が遠くなった。そんなのは無理だと思ったが、言葉が詰まって言えなかった。この人は俺を本当にそうやって使うつもりなんだ。他にもっと適役がいただろうに。どうして俺なのか。
音を立てながら腿の間を擦って、どれだけそうしていたか、主人の精液がタイルに飛んだ。俺の足の間にもどろりと垂れた。
主人が離れるとついに、俺は冷たい床の上にへたり込んでしまった。どこも痛くないが、心臓が早くて苦しい。
放心した俺の頬を主人の手が掴む。また目元を拭われた。泡じゃなくて涙だろう。
「先が思いやられるな……こういうのは泣くと逆にそそるぞ」
そんなことを言われて、もう一度股を流され柔らかなタオルで顔と体を拭かれた。服の代わりにそれだけ腰に巻かれて抱え上げられる。
驚いて固まる間に出た先の隣の部屋では、召使たちが待っていた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。理髪師を呼んでくれ」
「かしこまりました」
「これの服を何か見繕ってくれ。見栄えのしそうなものを」
「はい、何着かお持ちいたします」
屋敷がでかい。見えるところでは三階建ての場所もある。そして広い。芝や木々まできっちりした雰囲気の手入れが行き届いた感じの庭に囲まれている。庭に泉がある。口々に挨拶する使用人が多い。主人の帽子を預かるだけの者、上着を預かるだけの者、言いつけられて消えていく者。
皆俺を見ていたが主人に何も聞かない――聞けないのか、俺にも情報が入ってこない。俺はこんなところで何に使われるのか。この屋敷を冷やすには、俺だけでは不足だろう。
見えるところに奴隷はいなかった。白奴隷も、他の奴隷も。気配も分からない。
すべすべの石造り、広すぎる玄関、広すぎる通路、広すぎる広間を連れられて、ずんずんと奥へと連れてかれた。中も俺にもすぐ分かるくらい豪華なものばかりだったが、それに怯える暇もなかった。
水音。灯りをいくつも点した広い室内。薄青のタイル張りの床と浴槽。
ようやく足が止まった。行き先は風呂だった。
水を冷やすのに俺たちを使うやつもいるが、どうも雰囲気が違う。着くまでに色々脱いでいた主人は此処では靴だけを脱いで、シャツの腕捲りをして、次には俺の腰巻に手をかけた。水風呂にしたいなら普通、逆だ。
「っえ、あの」
「大人しくしろ」
動揺には一睨み。体が固まる。下着同然の一枚きりの服が剥かれて、既に水の溜まった浴槽を示される。
「入れ。――座れ」
着ていた服が床に落ちる音を聞きながら恐る恐る水に足をつけると、両足が入ったところで肩を掴んで座り込まされた。温い水に腰までつかる。手桶で汲まれた水がかけられて、
「目を閉じろ」
頭に何か油のようなものが垂らされた。ぐしゃぐしゃと掻き回されると泡が立ってきて、まだ閉じていなかった目に何か入って痛い。きつく閉じる間に、主人の手が耳へと降りてきた。揉む指先。
「ご、しゅじんさま」
痛みに目を開けられないまま、咄嗟に手を掴んで叫んでしまった。主人の手が止まる。俺ははっとして、そおーっと手を引いてから恐々と口を開いた。目も開いた。痛くて涙が滲む。
「風呂なら、自分で、洗えます、ので」
目はとても痛いが、花のようないい香りがする。これは石鹸みたいなものだろう。そして俺は今どうも、なぜか、主人に手ずから洗われている。
俺たちは売り物なのでけっこう清潔だが、買う側が奴隷が汚いと思うのはよくあることだ。よくあることだが、だからといって部屋に入れる前に自分で洗ったりしない。汚いと思ってるんだから、触れたりしない。洗えと命じられれば自分で洗うし、もし手抜きが心配なら洗わせる手は他にいくらでもあるはずだ。使用人が居ないならともかく、この屋敷でなら洗濯女にでもついでにやらせればいい。
だからなんとなく、察しはついている。その想像を信じられないだけで。
「なんだ、ちゃんと恥ずかしいのか。それはなおさら楽しいな」
この主人は変わり者だ。しかもどうも逆に乗り気にさせてしまった。
「目を閉じていろと言っただろう。綺麗な目が腫れたらどうする」
目元に水をかけて拭われる。柔い場所に伸びてくる指にまたぎゅっと目を閉じて身を固くしたが、目を潰されるようなことはなく、痛みが遠のいた。
――きれいな、目が?
それなら、それなら。
「みどりの目の奴隷が欲しいなら他にもいたでしょう。こんな痩せぎすで虫食いじゃなくて、もっと」
今日は初競りだった。若くて綺麗なのが、女も男もいたはずだ。少なくともこれでいいかと妥協するような品揃えではなかった。そうでなくたって、俺でいいかとは普通ならない。俺はみすぼらしい奴隷だ。
「ろくに反応しないかと思ったが、口も十分利けるな。声も悪くない。……シミだの痣だのは私は気にしない」
「俺にするなんて悪趣味だ……」
「言うな。まあそれくらいのほうが話し相手にもいい」
思わず口をついた言葉も、怒られはしなかった。石鹸で霞んだ目でちらと見た顔が笑っていてひと息を呑む。
再び動き出した指が首輪の間をするりと撫でて、体を硬くする。顔から胸にかけて散った虫食い痕を撫でて辿った手が、そのまま全身を洗い始めた。
俺の体のすべてを、主人の手が辿った。首を掴み胸を撫であばらを辿り、脇をくすぐって身を捩るのも許さず、指先、爪の間まで。そして背、腹、股。
水の中で、急所を掴む手。咄嗟に閉じた膝は無理矢理割られた。
「いや……」
「許さん」
拒否の声が細くしか上げられないのはきっと首輪のせいで。それさえ却下されて、俺は黙って足を開くしかなかった。粗末な物も皮を剥いて洗われる。尻の隙間も、そして足も掴んで裏も爪先もすべて。こんなに人に触られたことなんてない。すべてを暴くような手つきに泣きそうだった。
それだけでも泣きそうだった、のに。
「処女か?」
一瞬、意味が分からなくて、一瞬後に血の気が引いた。俺は声も出せずに、何度も頷いた。経験なんてない。どっちもだ。
そうか、やっぱりそういう、そういうことになるのか。これから俺はそういう使い方をされるのか。今回は白奴隷じゃなくて、性奴隷ってわけか? なおさら他のやつのほうが適役だろうに!
溜息が聞こえて息を呑む。頭から水をかけられて、泡を流される。その水越しにまた声がする。
「……なら加減してやるか、仕方ない。こちらに出ろ。座って足を開け」
俺は震えながら浴槽の縁に腰掛けて言われたとおりに足を開いた。主人が横から取っ手つきの瓶を手に取り傾けるとさっきと同じ油のような石鹸液が垂れてくる。今度は股間に。揉んで、泡立てて――瓶の陰から取りだされた、小さな刃物の光にさらに身が竦んだ。
「切られたくなければ動くなよ」
言って、剃刀で股に生えていた毛を剃り取られた。ざりざりと何か削るような音に鳥肌が立つ。水をかけ子供のようになった股を確認して、主人は剃刀を置いた。
「これは使い物になるか? 勃たせろ」
嫌だ。無理だ。思うのに。
怖くて縮みあがっているはずなのに言われて揉まれるとすぐに勃起してしまって、体のちぐはぐさがまた恐ろしくて涙が出た。俺は声を殺し必死になって姿勢を保ち、その恐怖と恥ずかしさに耐えた。上下に擦られて、腹がぎゅうとなり熱いものが込み上げる。
「っ――」
射精するのはいつぶりだろうか。勢いよく飛んで主人の手にかかった。怖くて嫌なのに気持ちはいいようで、目がちかちかする。
「ああ、ちゃんと精通しているな。細いからどうかと思ったが」
言いながら精液を揉んだその手と、萎えはじめた股を洗い流す。主人の呟く声はどこか遠かったが、次の言葉ははっきりと聞こえた。
「後ろを向いて尻を出せ」
鍵を持った主人の命令は、よく通るのだ。平伏せと言われたら伏せる。靴を舐めろと言われたら舐める。やれと言われたらやる。でも、心までは簡単に頷いてくれない。
「いや……っいやです! 無理です!」
いっそ心まで奴隷にしてくれれば、と思ったことは何度もある。だったらどれだけ楽になれるだろう。何も嫌なことはなくなって、こんなに怖がらなくて済む。
初めてというのは、女でも男でも痛いものだと聞いた。特に尻を使われるのはそれはそれは苦しくて痛いのだとも。見た目のよくない俺には関係ない話だと思っていたが、まさかこんな日が来るなんて。
「挿れんから安心しろ。後ろを向け」
繰り返される命令にもはや拒否の声さえ出なくなった。体が勝手に従う。嫌だと思うのに床に膝をつき、後ろを向く。泡の流れた浴槽が見える。主人の動きが見えないのが怖い。
頭を掴まれて震えまで止まってしまった。
「足を閉じていろ」
手を放して、今度は腿を掴まれる。ぎゅと膝を閉じて――後ろから熱いものが触れる。ぬるりと、足の間を何か滑った。
「具合は悪いな。もっと締めろ」
恐る恐る視線を己の足へとずらすと、太腿の間を出入りする太く大きな男の物が見えた。熱くて硬い。生々しい赤さが俺の太腿を擦っている。濡れた音がして、服を着たままの主人の腰が尻に触れているのが分かる。尻を掴んで声が続く。
「後でこれが入るように広げてやる」
気が遠くなった。そんなのは無理だと思ったが、言葉が詰まって言えなかった。この人は俺を本当にそうやって使うつもりなんだ。他にもっと適役がいただろうに。どうして俺なのか。
音を立てながら腿の間を擦って、どれだけそうしていたか、主人の精液がタイルに飛んだ。俺の足の間にもどろりと垂れた。
主人が離れるとついに、俺は冷たい床の上にへたり込んでしまった。どこも痛くないが、心臓が早くて苦しい。
放心した俺の頬を主人の手が掴む。また目元を拭われた。泡じゃなくて涙だろう。
「先が思いやられるな……こういうのは泣くと逆にそそるぞ」
そんなことを言われて、もう一度股を流され柔らかなタオルで顔と体を拭かれた。服の代わりにそれだけ腰に巻かれて抱え上げられる。
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