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番外 祭の合間*
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いけない、こんなのはいけない。そう思いながらも止められなかった。加えて、このままでは仕事に戻れそうにもなかった。
祭の三日目で幾分空気が緩み始めた城の東端。今のところは人気のない城のトイレ、二つ部屋があるうちの片側で、スイは白衣の裾を捲り上げ便器に腰を下ろしていた。排泄の為ではない。
クノギのお陰で一度射精したというのに、スイの陰茎は再び硬くなって上を向き、鈴口を濡らしていた。
いくらスイが若いと言えど、近頃は性欲も旺盛だとしても。さすがにここまで回復力と硬度があるのは普通ではなかった。
なんてものを食べさせてくれたのか! と珍しい物はつい手を出してしまう自分の浅慮は棚上げして、スイは差し入れされた疲労回復の品を恨む。
が、恨んでいる場合でもなかった。このままでは仕事に戻れない。速やかに鎮めて戻らないとそろそろ探される頃合いだ。だというのに――着込んだ官服の内側、文官の体には完全に火がついてしまった。
「ん、っく、ふ」
礼を言ってクノギと別れたはいいが、腹の奥が疼いて燻って我慢ならず、休憩室には戻らずトイレに直行したのは数分前。人が居なかったのを幸いに個室に飛び込んで、先程とは違い素直に扱き始めたけれど。陰茎は硬く張り詰めて先走りを垂らすばかりで、絶頂に届かない。
二度目、焦り。そういう要素もあるだろう。だが一番は、今のスイがこちらよりも後ろの刺激に親しんでいることだった。
中に欲しい。いつものように掻き回したい。
いけない、早く、どうしてこんなことに、との思いの間にそうした欲が挟まって次第に大きくなる。尻に挿れればきっと達することができるとの思いも。
スイは半泣きで足を開き、屹立した陰茎を左手で支えながら、その更に下へと利き手を潜らせた。乾いた襞を揉むと突き抜けるように快感が走った。
我慢できない。指一つでいい。少し奥に触れれば射精できてこれも治まる。期待してぐと、窄まった襞の中心へと指を押し当てた。普段であれば油を使う。自慰の前には洗浄もするので多少解れている。久しぶりにそこはきつかった。
それでもこの緊急事態を脱するべく些か乱暴に肉を揉んで進めた指は、息を合わせた甲斐あって中へと埋まっていく。多少の痛みを無視してすぐに目的の場所まで進めることができたのは勿論、これまでの経験ゆえだろう。
さすがに広げて奥まで挿入するわけにはいかず、己の膝を見つめ声を押し殺して指を前後させ刺激する。前立腺を叩いて快感に集中する。環境も姿勢も普段と違う為かなかなか上手くいかず、もどかしい感じがする。初めてや二度目の挿入を思い出した。
「っん、む……」
陰茎に添えた手を緩慢に動かし擦りながら、同じ調子で内壁へと指を押しつける。先程より強く込み上げる快感にスイは頭振り唇を噛んだ。口を塞ぎたいが手が足りない。押しつける枕もない。
もう少し奥、と指を押し込んで、最早親しんだ場所を指の腹で辿る。感覚を掴んで快感が増し動きが激しくなると同時に、陰茎を擦る手が上へとずれてより感覚の鋭い部分を擦り始める。クノギに咥えられたのを思い出し、その愛撫を再現するように指で輪を作り、滲み出て垂れた物を広げていく。早まる手。体が熱くなって絶頂が近づく。
物音。不意にトイレへと入ってくる足音に、スイは縮みあがった。
「っっ」
同時に後ろも締まり指を食い締めた。城の中で戸を一枚隔てただけのところに、誰かが近くに居るという背徳感が、彼の意識を焼いた。内臓がうねり腰の底から強い快感が這い上がる。
閉じた足で己の腕を挟みながら、スイは肩に乱れる黒髪を擦りつけ、必死に声を押し殺した。
「んん、んっ……」
ぴゅっと白濁が迸り、手と腿を汚す。くぐもった声はそれでも上擦っていたが、不幸中の幸い、もう一人の利用者は急いでいて動きが荒く、足音と戸を開け閉めする音がスイの痴態を隠してくれた。
それを確かめる術はなく、スイはただようやくの射精の快感と疲労感――誰かにこの様を見抜かれたのではという淡い絶望感に打ちひしがれて、ぞくぞくと痺れる体から力を抜いた。
「は、あ、ああ」
脱力した体、硬さを失い始めた陰茎から後を追うように熱い液体が漏れて便器に落ちる。水流がぶつかるトイレでは日常の音が今日はやけに恥ずかしく響くように感じられた。咄嗟に足を開き、挿れたままの指を締めつけるのは自慰の延長のようで、また背や首の後ろが粟立った。
自分とは真逆にさっさと用を足した誰かが来たとき同様急いで立ち去っていく足音を聞きながら、スイはふると身を震わせた。半勃ちの陰茎から流れる小水は勢いが弱くだらだらと出続けて、以前に覚えのある、排泄と性感が合わさった後ろめたい気持ちよさを齎した。
ぽたと雫が落ちる頃になって、スイはやっと我に返った。指を抜いて便所紙を鷲掴みにし、精液と小便に濡れた手や腿、陰茎を拭う。
――バレてませんように、バレてませんように、バレてませんように……!
物凄く祈りながら、二回目でようやく治まった陰茎を下着に押し込み身繕いをして、外を窺いながらそっと戸を開け急いで手を洗いその場を離れる。陰茎に尻に、股に残る違和感をひた隠して元居た部屋へと足早に向かう。
薄く赤が抜けきっていない顔や汗ばんだ体は擦れ違った人には気がつかれたが――その中には友人の衛士が居なかったので、誰も書庫番が城のトイレで何をしていたのかまでは、気がつかなかったようだった。
祭の三日目で幾分空気が緩み始めた城の東端。今のところは人気のない城のトイレ、二つ部屋があるうちの片側で、スイは白衣の裾を捲り上げ便器に腰を下ろしていた。排泄の為ではない。
クノギのお陰で一度射精したというのに、スイの陰茎は再び硬くなって上を向き、鈴口を濡らしていた。
いくらスイが若いと言えど、近頃は性欲も旺盛だとしても。さすがにここまで回復力と硬度があるのは普通ではなかった。
なんてものを食べさせてくれたのか! と珍しい物はつい手を出してしまう自分の浅慮は棚上げして、スイは差し入れされた疲労回復の品を恨む。
が、恨んでいる場合でもなかった。このままでは仕事に戻れない。速やかに鎮めて戻らないとそろそろ探される頃合いだ。だというのに――着込んだ官服の内側、文官の体には完全に火がついてしまった。
「ん、っく、ふ」
礼を言ってクノギと別れたはいいが、腹の奥が疼いて燻って我慢ならず、休憩室には戻らずトイレに直行したのは数分前。人が居なかったのを幸いに個室に飛び込んで、先程とは違い素直に扱き始めたけれど。陰茎は硬く張り詰めて先走りを垂らすばかりで、絶頂に届かない。
二度目、焦り。そういう要素もあるだろう。だが一番は、今のスイがこちらよりも後ろの刺激に親しんでいることだった。
中に欲しい。いつものように掻き回したい。
いけない、早く、どうしてこんなことに、との思いの間にそうした欲が挟まって次第に大きくなる。尻に挿れればきっと達することができるとの思いも。
スイは半泣きで足を開き、屹立した陰茎を左手で支えながら、その更に下へと利き手を潜らせた。乾いた襞を揉むと突き抜けるように快感が走った。
我慢できない。指一つでいい。少し奥に触れれば射精できてこれも治まる。期待してぐと、窄まった襞の中心へと指を押し当てた。普段であれば油を使う。自慰の前には洗浄もするので多少解れている。久しぶりにそこはきつかった。
それでもこの緊急事態を脱するべく些か乱暴に肉を揉んで進めた指は、息を合わせた甲斐あって中へと埋まっていく。多少の痛みを無視してすぐに目的の場所まで進めることができたのは勿論、これまでの経験ゆえだろう。
さすがに広げて奥まで挿入するわけにはいかず、己の膝を見つめ声を押し殺して指を前後させ刺激する。前立腺を叩いて快感に集中する。環境も姿勢も普段と違う為かなかなか上手くいかず、もどかしい感じがする。初めてや二度目の挿入を思い出した。
「っん、む……」
陰茎に添えた手を緩慢に動かし擦りながら、同じ調子で内壁へと指を押しつける。先程より強く込み上げる快感にスイは頭振り唇を噛んだ。口を塞ぎたいが手が足りない。押しつける枕もない。
もう少し奥、と指を押し込んで、最早親しんだ場所を指の腹で辿る。感覚を掴んで快感が増し動きが激しくなると同時に、陰茎を擦る手が上へとずれてより感覚の鋭い部分を擦り始める。クノギに咥えられたのを思い出し、その愛撫を再現するように指で輪を作り、滲み出て垂れた物を広げていく。早まる手。体が熱くなって絶頂が近づく。
物音。不意にトイレへと入ってくる足音に、スイは縮みあがった。
「っっ」
同時に後ろも締まり指を食い締めた。城の中で戸を一枚隔てただけのところに、誰かが近くに居るという背徳感が、彼の意識を焼いた。内臓がうねり腰の底から強い快感が這い上がる。
閉じた足で己の腕を挟みながら、スイは肩に乱れる黒髪を擦りつけ、必死に声を押し殺した。
「んん、んっ……」
ぴゅっと白濁が迸り、手と腿を汚す。くぐもった声はそれでも上擦っていたが、不幸中の幸い、もう一人の利用者は急いでいて動きが荒く、足音と戸を開け閉めする音がスイの痴態を隠してくれた。
それを確かめる術はなく、スイはただようやくの射精の快感と疲労感――誰かにこの様を見抜かれたのではという淡い絶望感に打ちひしがれて、ぞくぞくと痺れる体から力を抜いた。
「は、あ、ああ」
脱力した体、硬さを失い始めた陰茎から後を追うように熱い液体が漏れて便器に落ちる。水流がぶつかるトイレでは日常の音が今日はやけに恥ずかしく響くように感じられた。咄嗟に足を開き、挿れたままの指を締めつけるのは自慰の延長のようで、また背や首の後ろが粟立った。
自分とは真逆にさっさと用を足した誰かが来たとき同様急いで立ち去っていく足音を聞きながら、スイはふると身を震わせた。半勃ちの陰茎から流れる小水は勢いが弱くだらだらと出続けて、以前に覚えのある、排泄と性感が合わさった後ろめたい気持ちよさを齎した。
ぽたと雫が落ちる頃になって、スイはやっと我に返った。指を抜いて便所紙を鷲掴みにし、精液と小便に濡れた手や腿、陰茎を拭う。
――バレてませんように、バレてませんように、バレてませんように……!
物凄く祈りながら、二回目でようやく治まった陰茎を下着に押し込み身繕いをして、外を窺いながらそっと戸を開け急いで手を洗いその場を離れる。陰茎に尻に、股に残る違和感をひた隠して元居た部屋へと足早に向かう。
薄く赤が抜けきっていない顔や汗ばんだ体は擦れ違った人には気がつかれたが――その中には友人の衛士が居なかったので、誰も書庫番が城のトイレで何をしていたのかまでは、気がつかなかったようだった。
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