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国軍分室園丁官本部(中)
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もう一人伴ってセヴランのところを訪ねるのは、カイとしては仕事らしくできて助かる気もした。あの手の思考は最近やっと落ち着いた――多少慣れてきたようだったが、常々二人きりでは意識をする瞬間がある。
軍の馬車を使って家に着いたのは昼過ぎだった。夜よりは可能性が高いと思ったが在宅だろうか、とのカイの懸念を打ち消すように、玄関に立つと竪琴の音色が聞こえてくる。束の間躊躇う。
エミールや、御者をする兵の目もあった。諦めてノックする。旋律は止んでしまった。惜しみながらもカイは息を吸った。
「カイ・エッカルト、園丁官です。――セヴラン、居るか」
普段よりはっきりと名乗って待つ。やや置いて扉は開いた。
「どーしたの、こんな時間に、……」
出迎えは明るい声で。服はちゃんと着ていたが、朝とも大差はない。竪琴は持っていなかった。カイだけではなく隣にもう一人居るのに気づいて浮かべていた笑みが引っ込む。
「今日は相談で来た。こちらは、」
「覚えてらっしゃるだろうか、園丁官のエミール・カペルです」
「――ああうん、あのときの人だ。初対面ではないかなって思った」
背後の馬車も見え。いつもと違う雰囲気にセヴランはすっかり警戒した。親しんだ男だと思ってのこのこ出てきてしまった自分の迂闊さを呪った。今日こそ居留守のしどきだったのにと思う。
「貴方の庭が豊かなので、色々調べさせてもらいたい。という、相談を、まず。……ちょっと入れてくれ」
カイの手が扉にかかるので逃げられない。そもそも、改まってやってきた軍人たちを前にそうできるほどセヴランも無茶ではなかった。
仕方なく中に入れて廊下での立ち話となる。三人座るような場所が居間にはないことはカイも知っていたので、それ以上押し込みはしなかった。
「本部に同行願いたい、用意する部屋で寝泊まりしてもらって、植物が発現すると思われる日――今回なら明日、付きっきりでデータを取る。都合に合わせるが、できれば二回分ほど」
「ええ、監視つけるってこと?」
「監視ではなく観察の依頼です。庭の植物の採取と共に、より仔細なデータを提供して頂く。貴方には貢献の義務があります。どなたにも年一度ほどは協力頂いています」
先輩園丁官の存在感に急かされる気分で説明したカイに相槌程度、少し不満を見せたセヴランに、空かさずエミールが言い切る。拒否を許すつもりはないのが一瞬で知れる声だった。
セヴランは助けを求めるようにカイを見た。そんな目をされても、カイもこっち側なのだが。が――そんな目をされては。彼は宥めるように言った。
「……義務だが日程は貴方の都合にも応じるし、食事も出るし、あと少し、珍しいものが見せられる」
「なに」
「折角来てもらうので庭園の見学をしてもらってもいいということになった。設備とか、飼育している精霊とかも」
――プレーツ氏は堅苦しいのが苦手で名前で呼んでいます、あとは――恐らくちょっとしたことでいいので、見返りをちらつかせれば返事が引き出せるかと。いえ、金銭の謝礼ではなく……
移動中の打ち合わせは万全だった。エミールが強く出てカイが優しくするお決まりの手口だ。子供っぽい男は精霊や魔法にも興味津々であり、そのへんで釣れるのではないか、本人も一応、多少は前向きになってくれるのでは、ともカイは相談していた。
どうあっても連れていくつもりとはいえ、今後のことを考えれば、カイとしてはセヴランに頷かせたい。国と軍の名の下にと強引にしても角が立ちすぎる。穏便にやりたかった。体裁こそ保っているが、これで済むうちに、と実は頼み込む感覚だった。
セヴランはカイの顔を眺め、時間稼ぎのように頭を掻いて、やがて頷いた。
「……じゃあ行ってもいいよ。君の仕事場にちょっと興味あるしね」
エミールの言ったとおり、どうせ行かなきゃならないんだろうなあ、とは彼にも察せられた。最初の頃に契約書のようなものにサインした覚えもあった。諦めてはいたが、ただカイのそういう物言いを待ってみただけだ。
「ありがとう。ご協力感謝します」
「ありがとうございます」
安心して笑ったカイが見られたので満更でもない。ふんと息を吐いて、上辺の笑みと映るエミールも見遣る。
「たださ、本当に数日にしてよ。この家一人だから、あんまり空けると心配だ」
「ええ。お約束します。今回は一週間以内でやりましょう」
不満を透けさせた声でぼやくとエミールがまたはっきり応じる。さりげなく期間が延ばされたように思えるのと、今回は、という言い方がセヴランには気になったが、それもゴネても仕方がないのだ。
では今から同行してください、という急な展開も無職で用事も無い身では困ることがなかった。ズボンをサスペンダーで吊ってベストを羽織る外出用の服に着替えて、通信機で快諾の知らせを入れた園丁官と共に馬車に乗るのは少し、悪いことでもしたようで居心地が悪かったが。軍の造った立派な建物に招かれるともう逆に面白くなってきた。
一般人ではまず近寄ることもない門を通って、重厚な煉瓦造りへと近づく。築百年ほどが経って場に馴染んだ威容は、セヴランの生活からはまったく縁遠いものだった。
「まず、茶でも用意させます。その間庭をご覧になるといい。貴方がたの貢献が目に見えます」
エミールはそう言って、対応をカイに押しつけ立ち去った。すぐに遠ざかるその背にセヴランだけでなくカイまで息が抜けた。いつもならまずは自分たちの執務室へと向かうところ、横の建物へと靴先を向ける。
「あの人ちょっと怖くない?」
「……熱心な人なんだ。……案内する」
こそと言う声にははぐらかした。カイも然程親しいとは言えない、これからセヴランに会うだろう他の研究者も思い浮かべると皆意欲的な分、大体そういう感想になりそうな気もするのが不安だった。
その不安、セヴラン自身の不安も拭うべく接待する。言われたとおりにまずは庭だ。
「……おー……」
鳥籠こと第四保管庭園。近づけば硝子張りの外観にまず声が上がる。カイには見慣れた職場だが、こうして視察の案内などすると反応がよいのがいつも嬉しかった。
「此処が保管庭園。貴方たちから採取した植物を育てる施設」
ブラシで靴の汚れを落として中へと踏み入ればちょっとした異世界である。町中ではなかなか触れられない濃い緑の気配に自然と息が深くなる。セヴランはぐるりと見渡して、見上げた。大きな木も、広がった蔦もある。自分の身に生えたものから想像していたのとは規模が違った。
「これ全部、誰かが生やしてたやつ?」
「と、増やしたものだな。八十年分くらいか」
「すっご。ええ、庭じゃん……こんなになるんだ……」
眩しさに目を眇める。屋根があるが、日差しを遮るのは葉ばかりで屋根などはない。すべて窓だ。
「そのままじゃなくガラス? で囲ってあるのはなんで?」
「温度とかの調節と、外の影響を受けないように。日当たりがいいように硝子だが、あれも魔法が使われてて、嵐でもびくともしないようになってる」
「ほー……」
説明するうち、見知らぬ部外者の様子を窺いに来た園丁官たちにカイがセヴラン・プレーツと紹介すれば、皆どことなく親しげな顔になった。本人とは初対面だが、採取された植物の世話をする際、彼の名前で呼んでいることも多かったのでもう知り合い気分なのだった。軍服のような威圧感の無い、気安い出で立ちの人々の出迎えでセヴランは随分気が抜けた。
水の鉢の周りには虫の姿の精霊たちがたむろしている。軍の他の兵科でも伝令などで使われる翅のある彼らは、この庭園では小さな体を活かし隅の隅まで見回る仕事をしていた。金色の蜂、銀色の蜻蛉は宝石の細工のようにも見える。
調子を取り戻して気儘に、そうしたものに気を取られながら歩いていくセヴランの腕を、カイが引いた。
「そっちを歩くと濡れる」
それで今度はカイがやや先に行って、のんびりと散歩のように進む。セヴランがまた不安がりそうなので棘の見える薔薇の木は避けて通った。丁度花を摘み終えた時期で目立たないのは幸いだった。大分昔に一人だけが宿したものでそれも大した頻度ではなかったとカイは記憶しているが、回数も種類も多く身に宿しているセヴランには確かなことは言ってやれない。
庭に関して確かなことなど、ほとんど無いのだ。だから今回エミールたちは躍起になっている。
植物に詳しくない男が何か目立つ花や道具など見つけては、あれは何、と聞いてくるのにカイは迷わず答える。セヴランは草花の名前だけは知っており、神話や魔法についてに話が及べば辞書でも引くようにすらすらと関連する神や人の名、あるいは出来事を挙げ返した。
その様子に、カイは思う。
――やっぱり、楽師なんだろうな。
あれほど見事に楽器が弾けて神話にも詳しいとなれば、この男の職業は推測できた。書類上は無職ということにしてあって、実際竪琴が埃を被っていたのも見たが。
――また弾き始めたんだろうか。
来るときに止めてしまった演奏が気になった。
それで少しぼうっとしたところに、おおい、と声がする。二人へ足音が近づく。振り返れば前掛け姿の誰かではなく、詰襟を着込んだデニスだった。
「プレーツさん、お待たせしました」
「デニスさん」
「ようこそ。この度はご協力感謝します。準備ができたのでこちらへ」
「はいはい、よろしくお願いしまぁす」
セヴランは些か暑そうな彼に笑って応じる。デニスとは交代で訪問しているカイが、こうして二人並ぶのを見るのは初めの訪問以来だったが――親しくなり気を許している雰囲気が窺えて頬が緩んだ。ただし、デニスは初めのように彼を呼んで丁寧な口調を崩さなかったので、カイはその点気になった。
連れられて研究棟へと入れば、またぞろぞろと園丁官が出てきて挨拶がある。皆非常に好意的で歓迎の雰囲気ではあったが熱意が凄く、セヴランは気圧され大人しくなる。借りてきた猫のよう、という言葉がカイの頭を過ぎった。
たまに助けてほしそうに自分を見てくるので、庇ってはやれないながらに完全に引き渡しはせず、カイは意識して近くに居た。今はセヴランの庭が最重要であるから、これより大事な仕事もなかった。
三十年ほど前まで庭たちが収容されていた生活施設の一角。セヴランが通された居室は変わったつくりをしていた。形こそ普通の四角い部屋だが、中央に置かれた寝台を挟むようにして大きな窓が向かい合わせになっている。そして、片側は外に面して明るい普通の窓だが、もう片方は建物の内を向いている窓だった。装飾にしてはつまらない一面灰色の色硝子が嵌めてある。隣室からは透明に見えこの部屋が観察できる仕掛けだった。あとはテーブルと椅子が二脚、検査や食事などの為に置かれている。
先程の硝子張りの庭園とも、どこか似ている。こんな奇妙な部屋で寝れるだろうかとセヴランは思ったが、寝台には眠りの魔法が刻まれていて最初の観察時には使用するという説明で、それはそれで不安になった。
今後の大まかな予定を説明されて、カイが居なくなるとまたさらに心細い。また明日出勤してくるとは言われても。
仕事を引き継いだ別の園丁官も一旦離れて一人だ。何処かから見られているように感じるのも今ばかりは気の所為で、知らぬ場所でセヴランは一人きりだった。
寛いでいてくださいと言われたとおり遠慮せず靴を脱いで横になってみても、見慣れぬ天井のシミが気になるばかり。硬いベッドには昨日の売春宿も思い出し――そうするとあの後のことも思い出される。
あれで萎えるかと思いきやそうでもなく、同性と致す気《ケ》は無いはずが、嫌悪が無いことに思い至っていた。改めて今考えても別に嫌ではない。今日は年配の同僚たちに囲まれてより若く見えたあの青年とそうした行為とは、セヴランの中ではもはや隔てられてはいなかった。有りか無しかで言えば有りだった。
昨日、妄想を振り払いきれずなんとなくうっすら意識したまま事を終えてしまったので、予定より早い今日の訪問には結構動揺した。全然それどころではない流れで此処まで連れてこられて、そういう素振りをする隙も無かったが。
――まあ、好きではあるよ、好きでは。
セヴランは己の胸に何度目かの独り言をする。自分に優しい人なんて嫌いようがないだろうと誰かに言い訳する。
彼は自分に構ってくれる人のことは大体好きだ。我儘を聞いてくれればもっとよい。カイは合格だった。我儘はいまいち聞いてくれないが、最後のところで甘いのがセヴランの気をよくする。
話題を厭って変えさせることはあっても、話に付き合ってくれないことはない。いつもの注意でもなげやりではなく丁寧に言い聞かせてくる。くどいと言えばくどいくらいに。怒ってもその後、仕方ないなという顔をする。何より一緒に居てくれる。あとは見た目も悪くない。好みなのだと思う。男ではあるが。
――なるだろ好きに。なったらまあ、……そういうこともアリなんだろ多分。
寂しいところに付けこまれた気分だが。しかし何と理由をつけようが、気持ちのほうには変わりはない。惚れ薬と名高き花が引き起こした事故で気づかされたものが今も胸で主張している。性欲とはまた違う感情の起伏で、彼はさっきも会って、明日また会えるはずの男を思う。こうしてふとしたときに考えてしまうのはきっと、恋だった。
女相手なら口説いてみるかも知れない。男だと、どうしたらよいのか分からない。カイのほうは自身をよく思っているのかどうかも、それさえも。カイがセヴランに会いに来るのはまず仕事だからなのだ。判断が出来なかった。近頃は引き留めなくても家に居てくれるようにはなってきたけれど、こんな場所に呼ばれてしまうとそれはあくまで庭として重要だからなのではという気もしてきた。そんなことを悩むのも恐らく恋だった。
息を吐き出し、セヴランはごろりと寝返りを打った。カーテンのない大窓の外は小さな花壇になっている。此処は神々の園のものが植わっているわけではない、かつて此処で過ごしていた人たちの心を慰めていた、ただの庭だった。暫らく人を入れていなかったゆえに特別観賞用の花などは植えられていないが、勤めている者たちが放ってはおかなかったので荒れてはおらず、緑の中で小さな紫苑の花などが寄り合っている。
石畳が白っぽく照っている。そこも見つめて、眩しさに目を逸らし、瞑って。セヴランはまた一つ息を吐いた。白さが瞼に焼きついていた。
最近、確かに指導されているとおり、日光浴も気持ちよいと思うようになってきたが。
「暑……」
さすがにこれはちょっと燦々としすぎていた。夏には厳しい。ベストを脱ぎ捨ててシャツのボタンも一つ外しながら、外へと声をかける。
「ちょっとー、ねえ、誰かー?」
返事は無いのにむっと唇が尖る。さっきまでは園丁官たちに気圧されていたくせにこうなると、招待したんだからちゃんと構えよな、と構ってほしがりに戻る。
トイレくらいは案内されてもいたので、堪え性なくすぐに廊下に出た。それが実に簡単だったので脱走できるんじゃないかと別の通路を覗いたところで園丁官と出くわし、悲鳴を上げて相手も大いに驚かせた。
セヴランを連れてきた分他の業務が押して生じた少々の残業の後。デニスは給湯室にやってきた男に片手を上げて、淹れたての珈琲のポットを示した。差し出されるカップに一杯注いでやる。
「本当に数日で帰してくれる?」
問いかけに、エミールは熱い珈琲を慎重に啜ってから応じた。
「検査の質問で誓約を一段強めて、捕捉魔法をつけるよう、大佐から命令を受けました。まあ次の機会もすぐあるだろう。ということにしておきます」
「帰してくれるならいい」
カイのような若手はまだ詳しくは知らないが、魔法や精霊に関して最先端の技術を用いる軍は、その活動を円滑に行う為の誓約などの活用も巧みだ。一部署である園丁官たちも同様である。書面で、金銭の受け渡しを通して、他者が逆らえないようにと魔法の絡む約束を重ねる。
庭だと確認した時点で国外には出られないよう制限しているし、セヴランのように重要だと見れば位置を把握する為の魔法も仕込む。今回はその身に不可視の目印を描く準備が既に整っていた。これくらいは一方的に、本当に気軽に行われた。
そうでなくともただの一市民が相手だ。ましてやセヴランは家族もいなければ、定職にも就いていない。このまま軟禁したところで騒ぎにもならないだろうと思われた。やろうと思えばできる、のを命令が無い以上やりはしないというだけだった。
「一度入れてしまえばもうこっちのものだというのに。外勤は手ぬるい」
今後の管理、などと言っても、すべて此処で見ることにすればそれで終わりだとエミールなどは思うが。
物騒な響きのぼやきにデニスは笑う。研究一辺倒の彼の物言いは今に始まったことではなく、聞き慣れていた。
「庭とは言っても人間だよ、結局は。僕たちはそれをよく知ってるわけ。君は研究となるとちょっと怖いよ」
また昔のような体制での仕事になると自分たちはやりづらくなるだろうと思えば、その姿勢は崩せない。資金の面でなかなか実現はしないだろうと踏んでもいるが、細かい軌道修正は大事だ。
「お前はただやる気がないだけ。私は、一つでも多く解き明かす。それが使命です」
エミールの返事はほぼ悪態である。若手はともかく同期の男にはなお手厳しい。
「まあ、確かに君ほどじゃない。僕はついでに一個でも分かればいいなくらいに思ってる。そのくらいにしないと庭の人に引かれるしね。――次もあるなら、あんまり詰めすぎないでくれよ、文句を言われるのは多分僕なんだから」
デニスも、自身の評価については同意だった。彼は家業である軍医になる道を自ら逸れて此処に納まっている。戦地や荒事に関せず、血も見ずに済む、転勤も滅多にないのがよい、という極めて堅実な理由からだった。妻子には好評、父親や親戚からはなかなか不評の進路だった。あまり、この仕事自体への熱意や愛着があるとは言い難い。至って真面目ではあるのだが。
エミールはもう一口珈琲を飲んでカップを掲げた。ご馳走様、の仕草で廊下に出る。
「フォローは任せます。お前の手腕を信じていますので」
「君からも歩み寄れって言うんだよぉ、まったく。焦りはミスに繋がるよ、気をつけな」
一転、そこはお互いの仕事だと委ねてしまうのもいつものことであった。まったく容赦はされないだろうセヴランにここでは心底同情して、デニスもまたポットとカップを手に、自らの執務室へと足を向けた。
軍の馬車を使って家に着いたのは昼過ぎだった。夜よりは可能性が高いと思ったが在宅だろうか、とのカイの懸念を打ち消すように、玄関に立つと竪琴の音色が聞こえてくる。束の間躊躇う。
エミールや、御者をする兵の目もあった。諦めてノックする。旋律は止んでしまった。惜しみながらもカイは息を吸った。
「カイ・エッカルト、園丁官です。――セヴラン、居るか」
普段よりはっきりと名乗って待つ。やや置いて扉は開いた。
「どーしたの、こんな時間に、……」
出迎えは明るい声で。服はちゃんと着ていたが、朝とも大差はない。竪琴は持っていなかった。カイだけではなく隣にもう一人居るのに気づいて浮かべていた笑みが引っ込む。
「今日は相談で来た。こちらは、」
「覚えてらっしゃるだろうか、園丁官のエミール・カペルです」
「――ああうん、あのときの人だ。初対面ではないかなって思った」
背後の馬車も見え。いつもと違う雰囲気にセヴランはすっかり警戒した。親しんだ男だと思ってのこのこ出てきてしまった自分の迂闊さを呪った。今日こそ居留守のしどきだったのにと思う。
「貴方の庭が豊かなので、色々調べさせてもらいたい。という、相談を、まず。……ちょっと入れてくれ」
カイの手が扉にかかるので逃げられない。そもそも、改まってやってきた軍人たちを前にそうできるほどセヴランも無茶ではなかった。
仕方なく中に入れて廊下での立ち話となる。三人座るような場所が居間にはないことはカイも知っていたので、それ以上押し込みはしなかった。
「本部に同行願いたい、用意する部屋で寝泊まりしてもらって、植物が発現すると思われる日――今回なら明日、付きっきりでデータを取る。都合に合わせるが、できれば二回分ほど」
「ええ、監視つけるってこと?」
「監視ではなく観察の依頼です。庭の植物の採取と共に、より仔細なデータを提供して頂く。貴方には貢献の義務があります。どなたにも年一度ほどは協力頂いています」
先輩園丁官の存在感に急かされる気分で説明したカイに相槌程度、少し不満を見せたセヴランに、空かさずエミールが言い切る。拒否を許すつもりはないのが一瞬で知れる声だった。
セヴランは助けを求めるようにカイを見た。そんな目をされても、カイもこっち側なのだが。が――そんな目をされては。彼は宥めるように言った。
「……義務だが日程は貴方の都合にも応じるし、食事も出るし、あと少し、珍しいものが見せられる」
「なに」
「折角来てもらうので庭園の見学をしてもらってもいいということになった。設備とか、飼育している精霊とかも」
――プレーツ氏は堅苦しいのが苦手で名前で呼んでいます、あとは――恐らくちょっとしたことでいいので、見返りをちらつかせれば返事が引き出せるかと。いえ、金銭の謝礼ではなく……
移動中の打ち合わせは万全だった。エミールが強く出てカイが優しくするお決まりの手口だ。子供っぽい男は精霊や魔法にも興味津々であり、そのへんで釣れるのではないか、本人も一応、多少は前向きになってくれるのでは、ともカイは相談していた。
どうあっても連れていくつもりとはいえ、今後のことを考えれば、カイとしてはセヴランに頷かせたい。国と軍の名の下にと強引にしても角が立ちすぎる。穏便にやりたかった。体裁こそ保っているが、これで済むうちに、と実は頼み込む感覚だった。
セヴランはカイの顔を眺め、時間稼ぎのように頭を掻いて、やがて頷いた。
「……じゃあ行ってもいいよ。君の仕事場にちょっと興味あるしね」
エミールの言ったとおり、どうせ行かなきゃならないんだろうなあ、とは彼にも察せられた。最初の頃に契約書のようなものにサインした覚えもあった。諦めてはいたが、ただカイのそういう物言いを待ってみただけだ。
「ありがとう。ご協力感謝します」
「ありがとうございます」
安心して笑ったカイが見られたので満更でもない。ふんと息を吐いて、上辺の笑みと映るエミールも見遣る。
「たださ、本当に数日にしてよ。この家一人だから、あんまり空けると心配だ」
「ええ。お約束します。今回は一週間以内でやりましょう」
不満を透けさせた声でぼやくとエミールがまたはっきり応じる。さりげなく期間が延ばされたように思えるのと、今回は、という言い方がセヴランには気になったが、それもゴネても仕方がないのだ。
では今から同行してください、という急な展開も無職で用事も無い身では困ることがなかった。ズボンをサスペンダーで吊ってベストを羽織る外出用の服に着替えて、通信機で快諾の知らせを入れた園丁官と共に馬車に乗るのは少し、悪いことでもしたようで居心地が悪かったが。軍の造った立派な建物に招かれるともう逆に面白くなってきた。
一般人ではまず近寄ることもない門を通って、重厚な煉瓦造りへと近づく。築百年ほどが経って場に馴染んだ威容は、セヴランの生活からはまったく縁遠いものだった。
「まず、茶でも用意させます。その間庭をご覧になるといい。貴方がたの貢献が目に見えます」
エミールはそう言って、対応をカイに押しつけ立ち去った。すぐに遠ざかるその背にセヴランだけでなくカイまで息が抜けた。いつもならまずは自分たちの執務室へと向かうところ、横の建物へと靴先を向ける。
「あの人ちょっと怖くない?」
「……熱心な人なんだ。……案内する」
こそと言う声にははぐらかした。カイも然程親しいとは言えない、これからセヴランに会うだろう他の研究者も思い浮かべると皆意欲的な分、大体そういう感想になりそうな気もするのが不安だった。
その不安、セヴラン自身の不安も拭うべく接待する。言われたとおりにまずは庭だ。
「……おー……」
鳥籠こと第四保管庭園。近づけば硝子張りの外観にまず声が上がる。カイには見慣れた職場だが、こうして視察の案内などすると反応がよいのがいつも嬉しかった。
「此処が保管庭園。貴方たちから採取した植物を育てる施設」
ブラシで靴の汚れを落として中へと踏み入ればちょっとした異世界である。町中ではなかなか触れられない濃い緑の気配に自然と息が深くなる。セヴランはぐるりと見渡して、見上げた。大きな木も、広がった蔦もある。自分の身に生えたものから想像していたのとは規模が違った。
「これ全部、誰かが生やしてたやつ?」
「と、増やしたものだな。八十年分くらいか」
「すっご。ええ、庭じゃん……こんなになるんだ……」
眩しさに目を眇める。屋根があるが、日差しを遮るのは葉ばかりで屋根などはない。すべて窓だ。
「そのままじゃなくガラス? で囲ってあるのはなんで?」
「温度とかの調節と、外の影響を受けないように。日当たりがいいように硝子だが、あれも魔法が使われてて、嵐でもびくともしないようになってる」
「ほー……」
説明するうち、見知らぬ部外者の様子を窺いに来た園丁官たちにカイがセヴラン・プレーツと紹介すれば、皆どことなく親しげな顔になった。本人とは初対面だが、採取された植物の世話をする際、彼の名前で呼んでいることも多かったのでもう知り合い気分なのだった。軍服のような威圧感の無い、気安い出で立ちの人々の出迎えでセヴランは随分気が抜けた。
水の鉢の周りには虫の姿の精霊たちがたむろしている。軍の他の兵科でも伝令などで使われる翅のある彼らは、この庭園では小さな体を活かし隅の隅まで見回る仕事をしていた。金色の蜂、銀色の蜻蛉は宝石の細工のようにも見える。
調子を取り戻して気儘に、そうしたものに気を取られながら歩いていくセヴランの腕を、カイが引いた。
「そっちを歩くと濡れる」
それで今度はカイがやや先に行って、のんびりと散歩のように進む。セヴランがまた不安がりそうなので棘の見える薔薇の木は避けて通った。丁度花を摘み終えた時期で目立たないのは幸いだった。大分昔に一人だけが宿したものでそれも大した頻度ではなかったとカイは記憶しているが、回数も種類も多く身に宿しているセヴランには確かなことは言ってやれない。
庭に関して確かなことなど、ほとんど無いのだ。だから今回エミールたちは躍起になっている。
植物に詳しくない男が何か目立つ花や道具など見つけては、あれは何、と聞いてくるのにカイは迷わず答える。セヴランは草花の名前だけは知っており、神話や魔法についてに話が及べば辞書でも引くようにすらすらと関連する神や人の名、あるいは出来事を挙げ返した。
その様子に、カイは思う。
――やっぱり、楽師なんだろうな。
あれほど見事に楽器が弾けて神話にも詳しいとなれば、この男の職業は推測できた。書類上は無職ということにしてあって、実際竪琴が埃を被っていたのも見たが。
――また弾き始めたんだろうか。
来るときに止めてしまった演奏が気になった。
それで少しぼうっとしたところに、おおい、と声がする。二人へ足音が近づく。振り返れば前掛け姿の誰かではなく、詰襟を着込んだデニスだった。
「プレーツさん、お待たせしました」
「デニスさん」
「ようこそ。この度はご協力感謝します。準備ができたのでこちらへ」
「はいはい、よろしくお願いしまぁす」
セヴランは些か暑そうな彼に笑って応じる。デニスとは交代で訪問しているカイが、こうして二人並ぶのを見るのは初めの訪問以来だったが――親しくなり気を許している雰囲気が窺えて頬が緩んだ。ただし、デニスは初めのように彼を呼んで丁寧な口調を崩さなかったので、カイはその点気になった。
連れられて研究棟へと入れば、またぞろぞろと園丁官が出てきて挨拶がある。皆非常に好意的で歓迎の雰囲気ではあったが熱意が凄く、セヴランは気圧され大人しくなる。借りてきた猫のよう、という言葉がカイの頭を過ぎった。
たまに助けてほしそうに自分を見てくるので、庇ってはやれないながらに完全に引き渡しはせず、カイは意識して近くに居た。今はセヴランの庭が最重要であるから、これより大事な仕事もなかった。
三十年ほど前まで庭たちが収容されていた生活施設の一角。セヴランが通された居室は変わったつくりをしていた。形こそ普通の四角い部屋だが、中央に置かれた寝台を挟むようにして大きな窓が向かい合わせになっている。そして、片側は外に面して明るい普通の窓だが、もう片方は建物の内を向いている窓だった。装飾にしてはつまらない一面灰色の色硝子が嵌めてある。隣室からは透明に見えこの部屋が観察できる仕掛けだった。あとはテーブルと椅子が二脚、検査や食事などの為に置かれている。
先程の硝子張りの庭園とも、どこか似ている。こんな奇妙な部屋で寝れるだろうかとセヴランは思ったが、寝台には眠りの魔法が刻まれていて最初の観察時には使用するという説明で、それはそれで不安になった。
今後の大まかな予定を説明されて、カイが居なくなるとまたさらに心細い。また明日出勤してくるとは言われても。
仕事を引き継いだ別の園丁官も一旦離れて一人だ。何処かから見られているように感じるのも今ばかりは気の所為で、知らぬ場所でセヴランは一人きりだった。
寛いでいてくださいと言われたとおり遠慮せず靴を脱いで横になってみても、見慣れぬ天井のシミが気になるばかり。硬いベッドには昨日の売春宿も思い出し――そうするとあの後のことも思い出される。
あれで萎えるかと思いきやそうでもなく、同性と致す気《ケ》は無いはずが、嫌悪が無いことに思い至っていた。改めて今考えても別に嫌ではない。今日は年配の同僚たちに囲まれてより若く見えたあの青年とそうした行為とは、セヴランの中ではもはや隔てられてはいなかった。有りか無しかで言えば有りだった。
昨日、妄想を振り払いきれずなんとなくうっすら意識したまま事を終えてしまったので、予定より早い今日の訪問には結構動揺した。全然それどころではない流れで此処まで連れてこられて、そういう素振りをする隙も無かったが。
――まあ、好きではあるよ、好きでは。
セヴランは己の胸に何度目かの独り言をする。自分に優しい人なんて嫌いようがないだろうと誰かに言い訳する。
彼は自分に構ってくれる人のことは大体好きだ。我儘を聞いてくれればもっとよい。カイは合格だった。我儘はいまいち聞いてくれないが、最後のところで甘いのがセヴランの気をよくする。
話題を厭って変えさせることはあっても、話に付き合ってくれないことはない。いつもの注意でもなげやりではなく丁寧に言い聞かせてくる。くどいと言えばくどいくらいに。怒ってもその後、仕方ないなという顔をする。何より一緒に居てくれる。あとは見た目も悪くない。好みなのだと思う。男ではあるが。
――なるだろ好きに。なったらまあ、……そういうこともアリなんだろ多分。
寂しいところに付けこまれた気分だが。しかし何と理由をつけようが、気持ちのほうには変わりはない。惚れ薬と名高き花が引き起こした事故で気づかされたものが今も胸で主張している。性欲とはまた違う感情の起伏で、彼はさっきも会って、明日また会えるはずの男を思う。こうしてふとしたときに考えてしまうのはきっと、恋だった。
女相手なら口説いてみるかも知れない。男だと、どうしたらよいのか分からない。カイのほうは自身をよく思っているのかどうかも、それさえも。カイがセヴランに会いに来るのはまず仕事だからなのだ。判断が出来なかった。近頃は引き留めなくても家に居てくれるようにはなってきたけれど、こんな場所に呼ばれてしまうとそれはあくまで庭として重要だからなのではという気もしてきた。そんなことを悩むのも恐らく恋だった。
息を吐き出し、セヴランはごろりと寝返りを打った。カーテンのない大窓の外は小さな花壇になっている。此処は神々の園のものが植わっているわけではない、かつて此処で過ごしていた人たちの心を慰めていた、ただの庭だった。暫らく人を入れていなかったゆえに特別観賞用の花などは植えられていないが、勤めている者たちが放ってはおかなかったので荒れてはおらず、緑の中で小さな紫苑の花などが寄り合っている。
石畳が白っぽく照っている。そこも見つめて、眩しさに目を逸らし、瞑って。セヴランはまた一つ息を吐いた。白さが瞼に焼きついていた。
最近、確かに指導されているとおり、日光浴も気持ちよいと思うようになってきたが。
「暑……」
さすがにこれはちょっと燦々としすぎていた。夏には厳しい。ベストを脱ぎ捨ててシャツのボタンも一つ外しながら、外へと声をかける。
「ちょっとー、ねえ、誰かー?」
返事は無いのにむっと唇が尖る。さっきまでは園丁官たちに気圧されていたくせにこうなると、招待したんだからちゃんと構えよな、と構ってほしがりに戻る。
トイレくらいは案内されてもいたので、堪え性なくすぐに廊下に出た。それが実に簡単だったので脱走できるんじゃないかと別の通路を覗いたところで園丁官と出くわし、悲鳴を上げて相手も大いに驚かせた。
セヴランを連れてきた分他の業務が押して生じた少々の残業の後。デニスは給湯室にやってきた男に片手を上げて、淹れたての珈琲のポットを示した。差し出されるカップに一杯注いでやる。
「本当に数日で帰してくれる?」
問いかけに、エミールは熱い珈琲を慎重に啜ってから応じた。
「検査の質問で誓約を一段強めて、捕捉魔法をつけるよう、大佐から命令を受けました。まあ次の機会もすぐあるだろう。ということにしておきます」
「帰してくれるならいい」
カイのような若手はまだ詳しくは知らないが、魔法や精霊に関して最先端の技術を用いる軍は、その活動を円滑に行う為の誓約などの活用も巧みだ。一部署である園丁官たちも同様である。書面で、金銭の受け渡しを通して、他者が逆らえないようにと魔法の絡む約束を重ねる。
庭だと確認した時点で国外には出られないよう制限しているし、セヴランのように重要だと見れば位置を把握する為の魔法も仕込む。今回はその身に不可視の目印を描く準備が既に整っていた。これくらいは一方的に、本当に気軽に行われた。
そうでなくともただの一市民が相手だ。ましてやセヴランは家族もいなければ、定職にも就いていない。このまま軟禁したところで騒ぎにもならないだろうと思われた。やろうと思えばできる、のを命令が無い以上やりはしないというだけだった。
「一度入れてしまえばもうこっちのものだというのに。外勤は手ぬるい」
今後の管理、などと言っても、すべて此処で見ることにすればそれで終わりだとエミールなどは思うが。
物騒な響きのぼやきにデニスは笑う。研究一辺倒の彼の物言いは今に始まったことではなく、聞き慣れていた。
「庭とは言っても人間だよ、結局は。僕たちはそれをよく知ってるわけ。君は研究となるとちょっと怖いよ」
また昔のような体制での仕事になると自分たちはやりづらくなるだろうと思えば、その姿勢は崩せない。資金の面でなかなか実現はしないだろうと踏んでもいるが、細かい軌道修正は大事だ。
「お前はただやる気がないだけ。私は、一つでも多く解き明かす。それが使命です」
エミールの返事はほぼ悪態である。若手はともかく同期の男にはなお手厳しい。
「まあ、確かに君ほどじゃない。僕はついでに一個でも分かればいいなくらいに思ってる。そのくらいにしないと庭の人に引かれるしね。――次もあるなら、あんまり詰めすぎないでくれよ、文句を言われるのは多分僕なんだから」
デニスも、自身の評価については同意だった。彼は家業である軍医になる道を自ら逸れて此処に納まっている。戦地や荒事に関せず、血も見ずに済む、転勤も滅多にないのがよい、という極めて堅実な理由からだった。妻子には好評、父親や親戚からはなかなか不評の進路だった。あまり、この仕事自体への熱意や愛着があるとは言い難い。至って真面目ではあるのだが。
エミールはもう一口珈琲を飲んでカップを掲げた。ご馳走様、の仕草で廊下に出る。
「フォローは任せます。お前の手腕を信じていますので」
「君からも歩み寄れって言うんだよぉ、まったく。焦りはミスに繋がるよ、気をつけな」
一転、そこはお互いの仕事だと委ねてしまうのもいつものことであった。まったく容赦はされないだろうセヴランにここでは心底同情して、デニスもまたポットとカップを手に、自らの執務室へと足を向けた。
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