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繍雲は大体夫婦の寝室に飾る。そのうち解いて何かに仕立ててもよいものだが、ススキが一度宮に持ち帰って両親に見せた後も気に入った様子で、此処で寝る前にはいつも眺めているから多分そのままだろう。埃と日を除けるのに覆いをかけてもらっているが、それを外すと俺も、ススキが我が家に帰る日が来たというのが実感できて嬉しい。
三月、無事過ぎ。四月目も叶えられた。また三日間は家にいる。その日にと決められたことがあった。
所謂、初夜だ。
普通の夫婦は祝言のその日か次の日、また占い定めた吉日にはもう済ませるものだが、何せ俺たちはずっと同じ家にいるわけではないし先にやるべきことも多かった。それでようやくというわけである。
ではそろそろ……と俺たちがそういう雰囲気になるより先に、婚儀のとき同様宮廷の巫覡たちによって日取りなど占われてしまった。この日にする、と決めて臨むというのは……俺の場合、十五の成人の前に手解きを受けたの以来だ。それにただ日を決めただけではない。部屋の帳の色や灯りの数も縁起のいいように整えられているし――国のものでもある特別な金の尾の身のこと。しくじりがあってからでは遅いとそれはもう丁寧な確認があった。
慣れているか、男同士はどうだ、その巨体で無理は絶対にならん、などと専門の医官の指導と処方があった。ススキだってやり方を教えられあれこれと言われて、以前より明確な目標を持ち体を解す薬の粒でも押し込んで慣らしていたはずだ。今日は食事もあっさりとしたもので済ませていたし、風呂が長かった。
房薬や事後に身を清める一式に加え、気付けまでが用意され準備万端の寝床を多少居心地悪く思いながらも待ち、ススキと入れ違いに風呂に入って隅まで洗う。冷えた日になったので湯に浸かって戻ると寝台に腰掛けていたススキは何やら、いつもより小さく感じられた。繍雲を眺める視線もどことなく落ち着かない。
多少馴染んできた護衛――と呼ぶことにしている、最近会話も増えてきた――オダマキとアザミはいつもどおり部屋の外に控えている。シチも既に一間向こうに追いやられていた。匹偶の二人きりだ。
体を重ねるのは実は初めてというわけではないしと、思っていたがやはり。
「思ったより緊張しているな。俺も緊張しているが。任官や初陣のときくらいに」
「それは嘘でしょう。だって貴方は初めてじゃない……」
横に座りちょっと揶揄いの雰囲気で声をかけてみれば、ようやく顔が上がり目が合った。声が細って口ごもる。
「初めてだ、初夜というのは」
掌で頬を包んで顔を眺めた。表情が硬い。部屋もしっかり暖められているので冷えてはいないが、まだ湯の名残がある俺のほうが熱い。その熱を分けるように触れた。
「色々教えてもらったし、俺ともやったろう。心配するな。確かに勝手を知らぬわけではない、具合が悪いようならすぐに止めるし……」
気遣うつもりで言葉を重ねたのには、むしろ決意した雰囲気が見えた。これはいけない。完遂しようと無理をされるとまずい。
「ススキ、……スス」
ススキ殿、と改まって呼ぶことも本当に公的な場だけでのことになり、人が居ても呼び捨てにするが。
父母や他の金の尾が愛称として呼ぶというのを真似してみるのはまだ少し照れ臭い感じもする。しかし密かに意気込んで口にするとそれだけで機嫌が上向いたのが知れたので慣らすように続けている。最初に呼んだときには揺らいだ尾は、今日はすぐ脱いでしまう一枚の着物に足と共に仕舞いこまれていた。
「何も絶対に今日済ませねばならないわけではない。機会は得た。久々にお前に触れるんだ、あまり気負わずいてくれ」
呼んで改めて伝えればススキは頷き、頬に置いた右手を握った。少し冷えた指で揉みながら口を開く。
「アオギリ……私に会いたかったですか?」
「勿論」
「触れて、抱き合いたかった?」
「そうとも。もっと近くに寄せてくれ」
「……んふふ、もっと言ってください。貴方の言葉を聞かせてください、声を」
言いながら首へと腕が回される。淡く何かいい匂いがして、抱き締められた。甘えて遠慮なくかかる体重が嬉しい。
「会いたかった。今日この夜を待ち望んでいたが――こうして触れられるだけで十分嬉しい、お前の匂いがする」
「そうですね、私も。でも匹偶と交わるのはやはりいいものだと聞きました。……ので、……頑張ったんですよ」
抱き合うだけで満ち足りるが、耳元で小さく告げ啄むように軽く触れていく唇にこの先を欲する熱も入る。纏めずに来た髪を梳き、首元を伝い懐へと滑り込む手が胸を探った。日頃触れるのとは違う、閨での触れ方。
顔を向けさせ口づけながら俺も触れた。服の上から背や尻を撫でまわし、口端に吐息が溢れるのを押し込めて長く接吻を味わう。
着崩れてくる服の緩い帯を解いて露わにした細腰を捉える。下着も身につけぬ、触れる為に差し出された体。奥にやっと、美しい尾も見えた。やはり緊張しているか、足に沿って流れている。
「……なあ、前より一段と手触りがよくないか?」
肉づきの薄い脇腹を撫でているとどうも――顔に触れたときも思ったが、随分とすべらかでしっとりとして気持ちいい。掌に吸いついてくるようだ。行脚の最中は多少疲れていただろうからその差かとも思ったが、瞬いたススキは動く俺の手を気にして常より遅れた調子ながら、思い当たる節があるという声を上げた。
「ああ――じゃあ……ちゃんと手抜かずやった甲斐がありましたかね。色々、医官の方が肌理がよくなる薬だとか……体に塗る水も用意してくれて。日がありましたのでたっぷり準備しました」
「お前はまだ綺麗になれるのか」
気の所為やらではなかったらしい。驚きのままに呟くと笑いに体が揺れる。
「ふふ。そうです。これよりもっと美しくなりますので、くれぐれもお見逃しなく」
「俺も気が抜けんな……せめて、老いてもお前を抱えられるくらいには鍛えておかねば」
「では確かめるのに会うたび抱き上げてもらわねばなりませんねえ」
嫣然たる伴侶が調子を取り戻した愉快そうな口ぶりで言いながら、見せつけるかの動きで帯の端を引く。
ススキも俺を脱がせて、二人で裸になる。細くしなやかな手が今度は腿を這って揉む。それだけで熱が広がるのを感じながら口でも触れた。本当に心地よく、何やら美味そうにも思える肌を楽しみ、尖って色づく胸を吸えば分かりやすくひくと体が打つ。
以前の、行脚の最中などよりはずっと余裕がある。全身を辿り、他にも好きな場所を探すよう、お互いじっくりと様々に触れ合った。揃って昂り息を乱して――血が集まる股座を見ると臆して緊張した気配はあったがもう止めなかった。
すっかり温まった体を布団の上に横たえ、房薬など載った盆をおざなりに引き寄せる。尾があるので仰向けはやりづらい、後ろからがよかろうと二人とも聞いていて自ずとそんな姿勢になる。半分俯せに、布団に縋るようにして不安を覗かせるススキにまた掌で触れ、白い背の中心を辿り垂れる尾を撫でその下を探った。思い出して尾を掻き寄せ抱える所作が本当に、心底愛おしい。
指先が触れて噤むそこも俺が身を清める間に支度されていた。既によく潤され解されている。受け入れ方も教わってきたか、指を埋めてみると覚えているより上手く呑まれた。
熱い。柔くぬるつく肉が締めつけてくる。
一際に興奮が高まり心臓が打って、下腹が疼く。布団へ頬擦る顔を窺いながら慎重に指の根まで挿し込む。微かな声が上がるが無事入った。
様子見に探るにも時間をかけ、慣れたところで指を足す。孔が広がっていくのがはっきりと見えた。
「っふ……」
内側の具合も知るべく抜き差ししながら触れていくと時折、身が震えて締めつけられる。縁や、指先にも感じる経絡の辺りがやはり反応がいい。苦痛ではなく快楽の色が見えるのにほっとした。
「ん――よくしていてくれたな、いけそうだ」
「ぁ……」
医官の指導と彼の努力と、それに時間があったのはよかった。これならと思える程度に広げて指を退けた。
糊をふやかし己の陽物にも滑りを足して宛がう。再度身構え窺うススキに頷き、ようやく腰を寄せた。緩慢に、彼の身を開く。
「あ、あ……っ!」
「っは、」
包み込む体温に、愛した者と体を繋げていることに酷く高揚したが、全て挿れないで堪える。よく広げられているとはいえこんな狭いところ、無理をすれば突き破るのではとの不安は拭えない。医官たちの注意も思い起こされる。徐々に慣らしていかねばならない。
けれど本当に嬉しく、肌が粟立つほどだ。俺の身も芯から熱い。
「……痛まないか」
彼の息遣いまでもそのまま伝わってくる距離。これほどにも寄って結ばれている。
「平、気……」
小さい返事にまた頷き、限界と思えるほど広がって俺を咥えた場所に示すように触れた。尾の根と共に擽ると中が締まって背が揺らいだ。
「ぁ、うぁ」
そうして少しずつ、馴染ませるのに揺するだけでもススキは身悶えた。
手が空いたので前を確かめれば硬く勃っていた。刺激に驚いて震え、腰を引きかけるが後ろには俺が居座っている。窮するのを宥めるよう緩く揉んでみるのにも中がうねり絞ってくる。握ったまま、体内のやや浅いところを突いた。
「っあ……!」
手の内の陰茎もびくと打ってよい反応をする。
尾を握り、布団に大きな皺を寄せて、細い体躯が縮む。気づけば声が止み締めつけがきつくなってきた。腰を引き――弾みでぬるりと抜け出た物に構わず、一度身を寄せる。
「スス。ちゃんと息をしろ」
覆いかぶさり頬に口づける。ふは、と口を解く音がして――吐息が触れる。
「だめ、いれて、入ったでしょう……欲しい、」
「ん――焦るな。俺だって堪えられはせん」
接吻を返しながら絶え絶えに、縋って請う声がする。抱き締めたくもなったが、それでは今日は安心しないだろう。少しだけ休み、指先で弄ってひくつく孔に再び宛がう。俺を待ち、整えて息をするのを確かめて押し込む。
「はっ……っん、ふ、……っううぁ……あっ」
抜き差しに声が大きくなる。閉じぬ口から零れて引っ切りなしに。それにつられるように腰が動いた。蕩ける熱さの内側を擦りたてて、彼の声を引き出した。
久方ぶりの快楽は、知るより深い。
「っっ……!」
奥まで捩じ込みたくなるのを堪えて精を注ぎ、長く息を吐く。つい力の入っていた手に、掴んだ腰や腿に痕でも残していないかと案じて肌を探ったが今は何も見当たらない。後でも確かめねばなるまい。
背を揺らがせ息をするススキの体の中心、その陽物がまだ上向いているのも見つける。
「――っ、アオギリ……」
手で包み、雁首を押し上げてやると声が上がった。房薬か先走りか、既に湿っているのを広げて揉めば多少萎みはじめた物を締めつけて喘ぐ。
「お前も、このまま」
尻に挿れたままに愛撫して促す。己は少し冷静になって彼を見下ろし、その姿を楽しんだ。火照った体がまた美しかった。出会った頃より長くなった金の髪が乱れて光を散らしている。
「ぁ、あ……っん――んん……!」
元のように項垂れたところでなおでかい一物が締めつけられる。抑えてくぐもる声と共に掌に溢れる物を感じて擦るのを止め、搾り、腹の中も落ち着くのを待って彼の内から出てあちこちを拭った。
軽く済んだあたりで腕が絡んできた。手をとり――放された尾がゆらめいて布団や座る俺の足を撫でていく。満足気に笑って見上げる目とかち合った。
「……なんだか確かに、もっとしあわせになった気がします」
んふふといつもの笑い声で喉が鳴る。
「貴方の体を近くに感じられるから好きですね。またしましょう」
「――ああ。俺もこの上なく嬉しい」
寝そべったまま、このまま眠ってしまいたいと零す伴侶は本当に幸せそうだが疲れた様子だ。また溢れるほどの愛しさが湧いてくるが、さすがに今、このまま二回目をするわけにはいかない。まあ彼に言ったとおり次の機会だってある。晴れてそういう関係になったのだから、焦らずとも。
……一度休んで、それかひと眠りして朝ならいいだろうか。明日は予定を空けてある。やりたいことは色々あるが、これもしたい。
ああしかし、これほど大切にしたいものもない。ここは辛抱のしどころかも知れぬ。若いときほど欲が滾っているわけでもなし、じき落ち着く。それに後のことを思うよりまず今のほうが大事だ。
場凌ぎに着物をかけて笑む唇を重ねる。無事済んだとの報告はもう少し後でいいだろう。
三月、無事過ぎ。四月目も叶えられた。また三日間は家にいる。その日にと決められたことがあった。
所謂、初夜だ。
普通の夫婦は祝言のその日か次の日、また占い定めた吉日にはもう済ませるものだが、何せ俺たちはずっと同じ家にいるわけではないし先にやるべきことも多かった。それでようやくというわけである。
ではそろそろ……と俺たちがそういう雰囲気になるより先に、婚儀のとき同様宮廷の巫覡たちによって日取りなど占われてしまった。この日にする、と決めて臨むというのは……俺の場合、十五の成人の前に手解きを受けたの以来だ。それにただ日を決めただけではない。部屋の帳の色や灯りの数も縁起のいいように整えられているし――国のものでもある特別な金の尾の身のこと。しくじりがあってからでは遅いとそれはもう丁寧な確認があった。
慣れているか、男同士はどうだ、その巨体で無理は絶対にならん、などと専門の医官の指導と処方があった。ススキだってやり方を教えられあれこれと言われて、以前より明確な目標を持ち体を解す薬の粒でも押し込んで慣らしていたはずだ。今日は食事もあっさりとしたもので済ませていたし、風呂が長かった。
房薬や事後に身を清める一式に加え、気付けまでが用意され準備万端の寝床を多少居心地悪く思いながらも待ち、ススキと入れ違いに風呂に入って隅まで洗う。冷えた日になったので湯に浸かって戻ると寝台に腰掛けていたススキは何やら、いつもより小さく感じられた。繍雲を眺める視線もどことなく落ち着かない。
多少馴染んできた護衛――と呼ぶことにしている、最近会話も増えてきた――オダマキとアザミはいつもどおり部屋の外に控えている。シチも既に一間向こうに追いやられていた。匹偶の二人きりだ。
体を重ねるのは実は初めてというわけではないしと、思っていたがやはり。
「思ったより緊張しているな。俺も緊張しているが。任官や初陣のときくらいに」
「それは嘘でしょう。だって貴方は初めてじゃない……」
横に座りちょっと揶揄いの雰囲気で声をかけてみれば、ようやく顔が上がり目が合った。声が細って口ごもる。
「初めてだ、初夜というのは」
掌で頬を包んで顔を眺めた。表情が硬い。部屋もしっかり暖められているので冷えてはいないが、まだ湯の名残がある俺のほうが熱い。その熱を分けるように触れた。
「色々教えてもらったし、俺ともやったろう。心配するな。確かに勝手を知らぬわけではない、具合が悪いようならすぐに止めるし……」
気遣うつもりで言葉を重ねたのには、むしろ決意した雰囲気が見えた。これはいけない。完遂しようと無理をされるとまずい。
「ススキ、……スス」
ススキ殿、と改まって呼ぶことも本当に公的な場だけでのことになり、人が居ても呼び捨てにするが。
父母や他の金の尾が愛称として呼ぶというのを真似してみるのはまだ少し照れ臭い感じもする。しかし密かに意気込んで口にするとそれだけで機嫌が上向いたのが知れたので慣らすように続けている。最初に呼んだときには揺らいだ尾は、今日はすぐ脱いでしまう一枚の着物に足と共に仕舞いこまれていた。
「何も絶対に今日済ませねばならないわけではない。機会は得た。久々にお前に触れるんだ、あまり気負わずいてくれ」
呼んで改めて伝えればススキは頷き、頬に置いた右手を握った。少し冷えた指で揉みながら口を開く。
「アオギリ……私に会いたかったですか?」
「勿論」
「触れて、抱き合いたかった?」
「そうとも。もっと近くに寄せてくれ」
「……んふふ、もっと言ってください。貴方の言葉を聞かせてください、声を」
言いながら首へと腕が回される。淡く何かいい匂いがして、抱き締められた。甘えて遠慮なくかかる体重が嬉しい。
「会いたかった。今日この夜を待ち望んでいたが――こうして触れられるだけで十分嬉しい、お前の匂いがする」
「そうですね、私も。でも匹偶と交わるのはやはりいいものだと聞きました。……ので、……頑張ったんですよ」
抱き合うだけで満ち足りるが、耳元で小さく告げ啄むように軽く触れていく唇にこの先を欲する熱も入る。纏めずに来た髪を梳き、首元を伝い懐へと滑り込む手が胸を探った。日頃触れるのとは違う、閨での触れ方。
顔を向けさせ口づけながら俺も触れた。服の上から背や尻を撫でまわし、口端に吐息が溢れるのを押し込めて長く接吻を味わう。
着崩れてくる服の緩い帯を解いて露わにした細腰を捉える。下着も身につけぬ、触れる為に差し出された体。奥にやっと、美しい尾も見えた。やはり緊張しているか、足に沿って流れている。
「……なあ、前より一段と手触りがよくないか?」
肉づきの薄い脇腹を撫でているとどうも――顔に触れたときも思ったが、随分とすべらかでしっとりとして気持ちいい。掌に吸いついてくるようだ。行脚の最中は多少疲れていただろうからその差かとも思ったが、瞬いたススキは動く俺の手を気にして常より遅れた調子ながら、思い当たる節があるという声を上げた。
「ああ――じゃあ……ちゃんと手抜かずやった甲斐がありましたかね。色々、医官の方が肌理がよくなる薬だとか……体に塗る水も用意してくれて。日がありましたのでたっぷり準備しました」
「お前はまだ綺麗になれるのか」
気の所為やらではなかったらしい。驚きのままに呟くと笑いに体が揺れる。
「ふふ。そうです。これよりもっと美しくなりますので、くれぐれもお見逃しなく」
「俺も気が抜けんな……せめて、老いてもお前を抱えられるくらいには鍛えておかねば」
「では確かめるのに会うたび抱き上げてもらわねばなりませんねえ」
嫣然たる伴侶が調子を取り戻した愉快そうな口ぶりで言いながら、見せつけるかの動きで帯の端を引く。
ススキも俺を脱がせて、二人で裸になる。細くしなやかな手が今度は腿を這って揉む。それだけで熱が広がるのを感じながら口でも触れた。本当に心地よく、何やら美味そうにも思える肌を楽しみ、尖って色づく胸を吸えば分かりやすくひくと体が打つ。
以前の、行脚の最中などよりはずっと余裕がある。全身を辿り、他にも好きな場所を探すよう、お互いじっくりと様々に触れ合った。揃って昂り息を乱して――血が集まる股座を見ると臆して緊張した気配はあったがもう止めなかった。
すっかり温まった体を布団の上に横たえ、房薬など載った盆をおざなりに引き寄せる。尾があるので仰向けはやりづらい、後ろからがよかろうと二人とも聞いていて自ずとそんな姿勢になる。半分俯せに、布団に縋るようにして不安を覗かせるススキにまた掌で触れ、白い背の中心を辿り垂れる尾を撫でその下を探った。思い出して尾を掻き寄せ抱える所作が本当に、心底愛おしい。
指先が触れて噤むそこも俺が身を清める間に支度されていた。既によく潤され解されている。受け入れ方も教わってきたか、指を埋めてみると覚えているより上手く呑まれた。
熱い。柔くぬるつく肉が締めつけてくる。
一際に興奮が高まり心臓が打って、下腹が疼く。布団へ頬擦る顔を窺いながら慎重に指の根まで挿し込む。微かな声が上がるが無事入った。
様子見に探るにも時間をかけ、慣れたところで指を足す。孔が広がっていくのがはっきりと見えた。
「っふ……」
内側の具合も知るべく抜き差ししながら触れていくと時折、身が震えて締めつけられる。縁や、指先にも感じる経絡の辺りがやはり反応がいい。苦痛ではなく快楽の色が見えるのにほっとした。
「ん――よくしていてくれたな、いけそうだ」
「ぁ……」
医官の指導と彼の努力と、それに時間があったのはよかった。これならと思える程度に広げて指を退けた。
糊をふやかし己の陽物にも滑りを足して宛がう。再度身構え窺うススキに頷き、ようやく腰を寄せた。緩慢に、彼の身を開く。
「あ、あ……っ!」
「っは、」
包み込む体温に、愛した者と体を繋げていることに酷く高揚したが、全て挿れないで堪える。よく広げられているとはいえこんな狭いところ、無理をすれば突き破るのではとの不安は拭えない。医官たちの注意も思い起こされる。徐々に慣らしていかねばならない。
けれど本当に嬉しく、肌が粟立つほどだ。俺の身も芯から熱い。
「……痛まないか」
彼の息遣いまでもそのまま伝わってくる距離。これほどにも寄って結ばれている。
「平、気……」
小さい返事にまた頷き、限界と思えるほど広がって俺を咥えた場所に示すように触れた。尾の根と共に擽ると中が締まって背が揺らいだ。
「ぁ、うぁ」
そうして少しずつ、馴染ませるのに揺するだけでもススキは身悶えた。
手が空いたので前を確かめれば硬く勃っていた。刺激に驚いて震え、腰を引きかけるが後ろには俺が居座っている。窮するのを宥めるよう緩く揉んでみるのにも中がうねり絞ってくる。握ったまま、体内のやや浅いところを突いた。
「っあ……!」
手の内の陰茎もびくと打ってよい反応をする。
尾を握り、布団に大きな皺を寄せて、細い体躯が縮む。気づけば声が止み締めつけがきつくなってきた。腰を引き――弾みでぬるりと抜け出た物に構わず、一度身を寄せる。
「スス。ちゃんと息をしろ」
覆いかぶさり頬に口づける。ふは、と口を解く音がして――吐息が触れる。
「だめ、いれて、入ったでしょう……欲しい、」
「ん――焦るな。俺だって堪えられはせん」
接吻を返しながら絶え絶えに、縋って請う声がする。抱き締めたくもなったが、それでは今日は安心しないだろう。少しだけ休み、指先で弄ってひくつく孔に再び宛がう。俺を待ち、整えて息をするのを確かめて押し込む。
「はっ……っん、ふ、……っううぁ……あっ」
抜き差しに声が大きくなる。閉じぬ口から零れて引っ切りなしに。それにつられるように腰が動いた。蕩ける熱さの内側を擦りたてて、彼の声を引き出した。
久方ぶりの快楽は、知るより深い。
「っっ……!」
奥まで捩じ込みたくなるのを堪えて精を注ぎ、長く息を吐く。つい力の入っていた手に、掴んだ腰や腿に痕でも残していないかと案じて肌を探ったが今は何も見当たらない。後でも確かめねばなるまい。
背を揺らがせ息をするススキの体の中心、その陽物がまだ上向いているのも見つける。
「――っ、アオギリ……」
手で包み、雁首を押し上げてやると声が上がった。房薬か先走りか、既に湿っているのを広げて揉めば多少萎みはじめた物を締めつけて喘ぐ。
「お前も、このまま」
尻に挿れたままに愛撫して促す。己は少し冷静になって彼を見下ろし、その姿を楽しんだ。火照った体がまた美しかった。出会った頃より長くなった金の髪が乱れて光を散らしている。
「ぁ、あ……っん――んん……!」
元のように項垂れたところでなおでかい一物が締めつけられる。抑えてくぐもる声と共に掌に溢れる物を感じて擦るのを止め、搾り、腹の中も落ち着くのを待って彼の内から出てあちこちを拭った。
軽く済んだあたりで腕が絡んできた。手をとり――放された尾がゆらめいて布団や座る俺の足を撫でていく。満足気に笑って見上げる目とかち合った。
「……なんだか確かに、もっとしあわせになった気がします」
んふふといつもの笑い声で喉が鳴る。
「貴方の体を近くに感じられるから好きですね。またしましょう」
「――ああ。俺もこの上なく嬉しい」
寝そべったまま、このまま眠ってしまいたいと零す伴侶は本当に幸せそうだが疲れた様子だ。また溢れるほどの愛しさが湧いてくるが、さすがに今、このまま二回目をするわけにはいかない。まあ彼に言ったとおり次の機会だってある。晴れてそういう関係になったのだから、焦らずとも。
……一度休んで、それかひと眠りして朝ならいいだろうか。明日は予定を空けてある。やりたいことは色々あるが、これもしたい。
ああしかし、これほど大切にしたいものもない。ここは辛抱のしどころかも知れぬ。若いときほど欲が滾っているわけでもなし、じき落ち着く。それに後のことを思うよりまず今のほうが大事だ。
場凌ぎに着物をかけて笑む唇を重ねる。無事済んだとの報告はもう少し後でいいだろう。
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