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砂の島
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下界を見ていると災害が発生するところを目撃する事もある。
例えば人的要因による火災や自然発生による落雷、竜巻、洪水など。
ただ、そのような災害が発生しても助けを求める願いは余り来なかった。
大体の災害は魔法で対応できていたからだ。
仮に魔法使いが近くにいない状態でも、冒険者や自警団、場合によっては住民達が協力して対処していた。
「毎度ながら思うが、下界の人達は災害に強いよなぁ」
「そうですね。普段から魔法が飛び交っている世界ですから、ちょっとやそっとじゃ動じないと思います」
そういうもんか。人の慣れってのは凄いものだ。
では何故願いも少ない災害に目を向けているかというと、災害が発生するとで若干数ではあるが信者数が増えるからだ。
さすがに分かりやすい人的災害は別として、解明されていないような自然災害が発生した時、特に被害が少ない場合に増える傾向が分かってきた。
下界の人達が逃げずに何かしら対策や対応をしたから被害が抑えられているだけなのだが、人の心理というのは面白いもので、こういう時に神というものを感じる。
だからといって災害の規模に対して俺が何かする事はない。
確かに人に対して害であるし、信者が増えるのは良いことだが、災害は人以外にも影響があるので迂闊に手は出さないようにしている。
人々が怪我したりする様子を見るのは辛いが、ぐっと我慢して様子を見守っている。
俺も今の世界の生活に少しずつ慣れてきてはいるが、下界の様子を見ても慣れて何も感じないようにはなりたくない。
こういうところが神の仕事の大変で難しいところだと思う。
仕事が終わり、サチが片付け中に何かぼんやり考えるのはいつもの事。
最近妙に精霊と触れ合う機会が増えている気がする。
地の精、水の精、風の精と立て続けに出会ったし。
そういえば光の精は毎日家を明るくしてくれてるんだっけ。ありがたいことだ。
あと確認されているのが火の精、氷の精、雷の精、闇の精。
あ、闇の精はよくわかってないんだっけ。
火と氷はそれぞれ暑い所、寒い所に居そうだが、雷の精は何処に居るのか見当が付かない。
「なぁ、サチ。今日の予定が無いなら暑い島か寒い島に行ってみたい」
「また突然ですね」
「精霊に会えるかなーって思って」
「あぁ、そういう事ですか」
そう言いながら片付ける手は止めずにいる。
「案内してもいいですが、精霊に会えるとは限りませんよ?そもそも最近連続して遭遇した事の方が稀な事なのですから」
「うん。わかってる」
「では暑い方でいいですか?最近視察に行ってなかったので」
「あいよ。じゃあ案内よろしく」
暑い島か。どんなところか楽しみだな。
「見るからに暑そうな島だな」
「えぇ。ですので精霊石を拾いに来る人以外は滅多に来ません」
転移で飛んだ先から更に少し抱えられた飛んだ先にこの島はあった。
明らかに今まで見てきた島とは違い、まるで砂漠のような島だ。
暑い場所でも湿気の有無で景観が変わるが、この島は乾燥している方だな。
島に近付くだけでチリチリとした熱を感じてじんわり汗が出てくる。
島に降りると暑さで全身から汗が吹き出てきた。
「あっついな」
「そうですね」
サチを見ると特に汗をかいている様子は見られない。
「・・・サチは平気そうだな」
「えぇ、念である程度遮断していますので」
「え、ずるくない?」
「ソウがここに来たいと言ったのですから、堪能してもらおうと思いまして」
また悪い笑みを浮かべてるな。
よーし、そういう事ならこの暑さに慣れてやろうじゃないか!
サチが砂に落とした石が瞬く間に砂の中に沈んでいく。
「このようにこの岩の道から外れると砂の中に吸い込まれるので気をつけてくださいね」
「お、おう」
歩きながらこの島の特徴を説明を聞いてるが、思った以上この島は危険な気がする。
この島は大部分が砂や乾燥した土で形成されており、今歩いている岩の道以外に足をつけると見せてくれた石のようにずぶずぶと沈んでしまうので気をつけなくてはいけない。
そして火の精はそうやって沈んできた中の気に入った石を精霊石にするらしい。
つまりこの島の内部には火の精霊石が多くあり、それが稀に地表に現れるのを採取して使っているという事か。
現在俺とサチは島の中央に向かって進んでいる。
この島は中央が窪んだ大きなすり鉢状の形をしており、緩やかな下り坂を歩いているので歩く分には苦労はしていない。
ただ、とにかく暑い。
心なしか中央に近付いていくにつれて次第に暑さが増していっている気がする。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
「大丈夫ですか?結構暑いと思うのですが」
「なんのこれしき」
サチに頼めば俺も念で暑さを軽減できるのだが、まだ頼んでいない。
別にさっきのサチの顔見て負けん気が起きたとか、前に子供達にしもべとか言われたのが気になってるからとかで意地張ってるわけではない。
これは俺なりの修行だ、うん。決して気にしてるわけではない。ないはず。実は少し気にしてる。
なんであれ神という体がどれだけ暑さに耐えられるかというのが気になっていたのもある。
サチから水も貰っているし、体内のバランスが崩れて具合が悪くなるという感じは今のところしない。
問題は暑さで体力の消耗が早く、吸い込む空気が熱いのもあってか精神的に地味にしんどくなってきている。
頑張って耐えながら更に進むと島の中央らしき窪みの底が見えてきた。
良く見ると赤い石がキラキラ光って見える。
ん?・・・赤い光がゆらゆらと揺れて・・・。
「ちょっとソウ!」
一瞬景色がぐにゃっと歪んだところでサチが慌てた様子で俺を掴んだ。
「頑張りすぎです!」
何か良く分からないが叱られてる。
ん、暑さを感じなくなった。念を使ったのか。
「これ飲んでください」
水筒を無理やり口に押し込まれ水を流し込まれる。
体に水が流れ込んでいくと次第にぼんやりした意識が覚醒してくる。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「私の顔分かりますか?」
「うん、サチだろ」
「・・・大丈夫そうですね。はー・・・まったく、倒れるギリギリまで頑張るなんて無茶しすぎです」
「面目ない」
「少し休んでから行きましょう。何か冷たいもの出します」
「頼む」
アイスを出してくれたが、心配させてしまった罪悪感で味がよくわからなかった。
一休みした後、少し歩いて島の中央に到着した。
「この赤いのは火の精霊石か」
「はい。小さいものはよくここに出てくるので採取が容易です」
「いくつか持って帰ってもいいのか?」
「ダメです。精霊石の持ち出しは採掘師本人もしくは採掘師の許諾が必要です」
「へー。結構厳しく取り締まってるんだな」
「えぇ。精霊石は精霊の住処でもあるので、無闇に持ち出して問題になると困るのです」
「なるほど。それでその採掘師ってのが精霊石の管理をしているわけね」
「そうです。その採掘師から造島師や精錬技師などに提供される形です」
「なるほどー」
コンロの精霊石が弱まったら交換しようと思ってたんだが、ちゃんとアストのところに持っていって修理してもらわないといけないみたいだ。
「ちなみに勝手に持ち出すと?」
「警備隊の出動になります」
「おぉ・・・。でもこれだけ転がってるとばれないと思わないのか?」
「甘いですね。えーっと・・・今この周囲には大小合わせて二百三十五個ありますね」
「なっ・・・わかるのか?」
「えぇ。念の応用ですね、精霊石に宿っているマナを感知して、それをこれで計測するんですよ」
サチがパネルを出して見せてくれる。
パネルには周辺の地形と点があちこちに表示されている。
この点が精霊石の位置か。
「さすがに精霊石の大きさまでは計測では分かりませんが、個数が分かっていれば誰かが持ち出したらわかりますから」
「なるほどなぁ」
以前ルミナの農園で地の精霊石を知らずに手に取ってしまったが、もしあれを持ち出してたら警備隊にしょっ引かれるところだったのか。危なかった。
「ソウ、ちょっと飛んで上から測定したいのでここで待っていてもらえますか?」
「あいよ、行ってらっしゃい」
サチを見送り適当な岩に腰掛ける。
・・・だめだ、岩の熱で尻が燃えそうになる。
しょうがないので適当にブラブラ歩く。
この中央の窪地の底は来た道より少し広めの広場になっている。
改めて回りを見回すと流砂に囲まれてて少し薄暗い。
うーん、一人で居ると若干不安になるな。早く戻ってきてほしい。
特に意味も無くうろうろしてたら、ひと際赤く輝く精霊石を見つけた。
これはもしや・・・。
「在宅中?」
そういうとボッと一瞬石から小さな火が出る。
いるのか。姿は見せてくれないようだ。残念。
サチはまだかな、あ、帰ってきた。
「お待たせしました」
「おかえり。そこに中身入りの精霊石が・・・どっかいっちゃった」
空を見上げてサチを見ていた僅かな時間でさっきを見失ってしまった。
「火の精が入った精霊石ですか?」
「うん。入ってる?って聞いたら一瞬火が出たからたぶん」
「それなら間違いないですね。火の精は滅多に姿を見せてくれませんから、反応してくれただけでもいい方ですよ」
「そうなんだ」
「普段なら手に持った時に石から火を出しますから」
「おおぅ。あぶなかった」
危うく火傷するところだった。
「見失ったのは恐らく石を微振動させて地中に埋まったからだと思いますよ」
「そんな事できるのか」
「えぇ。そうやって砂の中を対流しながら石に力を蓄えていくらしいです」
「へー。じゃあ姿見たことがある人はいないのか」
「一応目撃者は居ます。姿は下界のドラゴンの翼が無いような見た目を思い浮かべてもらえば分かりやすいかと思います」
羽のないドラゴンか。爬虫類っぽいって事かな?
「さて、用も終わりましたし、そろそろ帰りませんか?」
「うん。そうしよう。待ってる間結構暇になっちゃって」
「そうでしょうね。すみません」
「いいよ。視察も大事だから」
「ありがとうございます。では帰りましょう」
そういうと俺の腕を掴んで転移した。
はー。砂の島は暑かった。ぬるめの風呂に入りたい。
そう思って家の方に向かって数歩進んだところでサチが付いてこないことに気付く。
「どうした?」
「あの、ソウ。本日はすみませんでした」
「なにが?」
「危うく倒れるギリギリまで気付かなかった事です」
「あぁ、あれは俺の不注意だろう」
「いえ、そもそもソウが暑さに耐えようと思ったのは私が余計なことを言ったのが発端ですし」
むぅ、俺が躍起になった事を見破ってたか。
「仮ににそうだったとしても挑戦する事に決めたのは俺だし。むしろ心配かけてしまった事を反省してるよ」
「そんなことは・・・」
あぁ、俯いてしまった。
どうもこっちの世界の人は許しても納得してもらえない事が多い気がするな。
「んー・・・じゃあお互い様って事で、後はどっちが悪いかは運で決めようか」
「・・・どういうことですか?」
「とりあえず家に帰ろう。準備がいるから」
「わかりました」
腑に落ちない顔をしながらサチは俺に並び、一緒に帰宅した。
「はいこれ」
テーブルの上に一口大の団子を数個並べた皿と水を置く。
「これは?」
「餡入り団子。ただし一個だけ激辛餡が入っている」
「なっ」
作った団子は前の世界でよく見かけた運試しでやるハズレ入りの団子だ。
「これを交互に食べていく。激辛に当たった方が悪いってことで、同時に激辛の罰を受ける感じだ」
「な、なるほど。面白い事を考えますね」
ホントにね。
「もし配置が気になるなら、俺あっち向くから適当に並べ替えていいよ」
「いえ、ソウを信じます。先に頂いてもいいですか?」
お、やる気だ。
「どうぞ」
「では・・・」
サチはど真ん中に置いてあるのを選んで口にする。
なかなか思い切ったところを選ぶねぇ。
「大丈夫です。ソウの番ですよ」
「うん」
俺は逆に端を取る。・・・うん。大丈夫。
そんな感じで交互に食べる事数往復。
残りが三つになってこっちにまわってくる。
まさかここまで当たりを引かないとは・・・。
「これちょっと楽しいですね」
くそぅ、自分は難を逃れたから余裕そうな顔しやがって。
「じゃあこれ」
手に取って口に放り込む。
うん、うん・・・。
・・・。
そっと置いてある水を手にする。
「・・・ソウ?あのもしかして?」
「かっら!!」
そう言ってから直ぐに水を流し込む。
これはきつい!辛くしすぎた!
舌が焼けるように痛い!
とりあえず残ってるもう一個を口に入れて中和を試みる!
ダメだ、少ししか緩和されない。
「サチ、ちょっと念で小さい氷出して!」
「だ、ダメですっ!今集中できませんっ!」
サチはサチで抱腹絶倒してて呼吸困難気味になっている。
しょうがない、水を含んで我慢しよう。神の体なら治るのも早いはずだ。
「ちょ、ソウっ!なんて顔しているのですかっ!」
うるさい、今はそれどころじゃないんだ。変な顔してても気にするな。指差して笑うんじゃない。
「あー酷い目に遭った」
「自分で作ったものではないですか」
「そうなんだけど、分量間違えたみたいで相当きつかった」
そういいながらミルクアイスを口に含む。
笑いすぎて念が使えないというので空間収納からアイスを出してもらった。最初からそう言えばよかった。
「しかしこういう食べ方もなかなか楽しいですね」
「まぁね」
「今度農園でやりましょう」
「別にいいけど、自分もハズレを引く事を考えておけよ?」
「それはもちろんわかっています。ですがあれだけ人数が居ればそうそうハズレを引くことはないでしょう」
俺は知ってる。そういう事を言う奴ほど引くという謎の現象を。
ま、一度そういう事を体験するというのも大事だから黙っておこう。
「農園か。そういえば料理教えにいかないとな」
「そうですね。明日行きますか?」
「特に予定がないならそうしよう。あっちに連絡入れておいてくれ」
「わかりました」
さて、明日は何教えようかな。
例えば人的要因による火災や自然発生による落雷、竜巻、洪水など。
ただ、そのような災害が発生しても助けを求める願いは余り来なかった。
大体の災害は魔法で対応できていたからだ。
仮に魔法使いが近くにいない状態でも、冒険者や自警団、場合によっては住民達が協力して対処していた。
「毎度ながら思うが、下界の人達は災害に強いよなぁ」
「そうですね。普段から魔法が飛び交っている世界ですから、ちょっとやそっとじゃ動じないと思います」
そういうもんか。人の慣れってのは凄いものだ。
では何故願いも少ない災害に目を向けているかというと、災害が発生するとで若干数ではあるが信者数が増えるからだ。
さすがに分かりやすい人的災害は別として、解明されていないような自然災害が発生した時、特に被害が少ない場合に増える傾向が分かってきた。
下界の人達が逃げずに何かしら対策や対応をしたから被害が抑えられているだけなのだが、人の心理というのは面白いもので、こういう時に神というものを感じる。
だからといって災害の規模に対して俺が何かする事はない。
確かに人に対して害であるし、信者が増えるのは良いことだが、災害は人以外にも影響があるので迂闊に手は出さないようにしている。
人々が怪我したりする様子を見るのは辛いが、ぐっと我慢して様子を見守っている。
俺も今の世界の生活に少しずつ慣れてきてはいるが、下界の様子を見ても慣れて何も感じないようにはなりたくない。
こういうところが神の仕事の大変で難しいところだと思う。
仕事が終わり、サチが片付け中に何かぼんやり考えるのはいつもの事。
最近妙に精霊と触れ合う機会が増えている気がする。
地の精、水の精、風の精と立て続けに出会ったし。
そういえば光の精は毎日家を明るくしてくれてるんだっけ。ありがたいことだ。
あと確認されているのが火の精、氷の精、雷の精、闇の精。
あ、闇の精はよくわかってないんだっけ。
火と氷はそれぞれ暑い所、寒い所に居そうだが、雷の精は何処に居るのか見当が付かない。
「なぁ、サチ。今日の予定が無いなら暑い島か寒い島に行ってみたい」
「また突然ですね」
「精霊に会えるかなーって思って」
「あぁ、そういう事ですか」
そう言いながら片付ける手は止めずにいる。
「案内してもいいですが、精霊に会えるとは限りませんよ?そもそも最近連続して遭遇した事の方が稀な事なのですから」
「うん。わかってる」
「では暑い方でいいですか?最近視察に行ってなかったので」
「あいよ。じゃあ案内よろしく」
暑い島か。どんなところか楽しみだな。
「見るからに暑そうな島だな」
「えぇ。ですので精霊石を拾いに来る人以外は滅多に来ません」
転移で飛んだ先から更に少し抱えられた飛んだ先にこの島はあった。
明らかに今まで見てきた島とは違い、まるで砂漠のような島だ。
暑い場所でも湿気の有無で景観が変わるが、この島は乾燥している方だな。
島に近付くだけでチリチリとした熱を感じてじんわり汗が出てくる。
島に降りると暑さで全身から汗が吹き出てきた。
「あっついな」
「そうですね」
サチを見ると特に汗をかいている様子は見られない。
「・・・サチは平気そうだな」
「えぇ、念である程度遮断していますので」
「え、ずるくない?」
「ソウがここに来たいと言ったのですから、堪能してもらおうと思いまして」
また悪い笑みを浮かべてるな。
よーし、そういう事ならこの暑さに慣れてやろうじゃないか!
サチが砂に落とした石が瞬く間に砂の中に沈んでいく。
「このようにこの岩の道から外れると砂の中に吸い込まれるので気をつけてくださいね」
「お、おう」
歩きながらこの島の特徴を説明を聞いてるが、思った以上この島は危険な気がする。
この島は大部分が砂や乾燥した土で形成されており、今歩いている岩の道以外に足をつけると見せてくれた石のようにずぶずぶと沈んでしまうので気をつけなくてはいけない。
そして火の精はそうやって沈んできた中の気に入った石を精霊石にするらしい。
つまりこの島の内部には火の精霊石が多くあり、それが稀に地表に現れるのを採取して使っているという事か。
現在俺とサチは島の中央に向かって進んでいる。
この島は中央が窪んだ大きなすり鉢状の形をしており、緩やかな下り坂を歩いているので歩く分には苦労はしていない。
ただ、とにかく暑い。
心なしか中央に近付いていくにつれて次第に暑さが増していっている気がする。
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
「大丈夫ですか?結構暑いと思うのですが」
「なんのこれしき」
サチに頼めば俺も念で暑さを軽減できるのだが、まだ頼んでいない。
別にさっきのサチの顔見て負けん気が起きたとか、前に子供達にしもべとか言われたのが気になってるからとかで意地張ってるわけではない。
これは俺なりの修行だ、うん。決して気にしてるわけではない。ないはず。実は少し気にしてる。
なんであれ神という体がどれだけ暑さに耐えられるかというのが気になっていたのもある。
サチから水も貰っているし、体内のバランスが崩れて具合が悪くなるという感じは今のところしない。
問題は暑さで体力の消耗が早く、吸い込む空気が熱いのもあってか精神的に地味にしんどくなってきている。
頑張って耐えながら更に進むと島の中央らしき窪みの底が見えてきた。
良く見ると赤い石がキラキラ光って見える。
ん?・・・赤い光がゆらゆらと揺れて・・・。
「ちょっとソウ!」
一瞬景色がぐにゃっと歪んだところでサチが慌てた様子で俺を掴んだ。
「頑張りすぎです!」
何か良く分からないが叱られてる。
ん、暑さを感じなくなった。念を使ったのか。
「これ飲んでください」
水筒を無理やり口に押し込まれ水を流し込まれる。
体に水が流れ込んでいくと次第にぼんやりした意識が覚醒してくる。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「私の顔分かりますか?」
「うん、サチだろ」
「・・・大丈夫そうですね。はー・・・まったく、倒れるギリギリまで頑張るなんて無茶しすぎです」
「面目ない」
「少し休んでから行きましょう。何か冷たいもの出します」
「頼む」
アイスを出してくれたが、心配させてしまった罪悪感で味がよくわからなかった。
一休みした後、少し歩いて島の中央に到着した。
「この赤いのは火の精霊石か」
「はい。小さいものはよくここに出てくるので採取が容易です」
「いくつか持って帰ってもいいのか?」
「ダメです。精霊石の持ち出しは採掘師本人もしくは採掘師の許諾が必要です」
「へー。結構厳しく取り締まってるんだな」
「えぇ。精霊石は精霊の住処でもあるので、無闇に持ち出して問題になると困るのです」
「なるほど。それでその採掘師ってのが精霊石の管理をしているわけね」
「そうです。その採掘師から造島師や精錬技師などに提供される形です」
「なるほどー」
コンロの精霊石が弱まったら交換しようと思ってたんだが、ちゃんとアストのところに持っていって修理してもらわないといけないみたいだ。
「ちなみに勝手に持ち出すと?」
「警備隊の出動になります」
「おぉ・・・。でもこれだけ転がってるとばれないと思わないのか?」
「甘いですね。えーっと・・・今この周囲には大小合わせて二百三十五個ありますね」
「なっ・・・わかるのか?」
「えぇ。念の応用ですね、精霊石に宿っているマナを感知して、それをこれで計測するんですよ」
サチがパネルを出して見せてくれる。
パネルには周辺の地形と点があちこちに表示されている。
この点が精霊石の位置か。
「さすがに精霊石の大きさまでは計測では分かりませんが、個数が分かっていれば誰かが持ち出したらわかりますから」
「なるほどなぁ」
以前ルミナの農園で地の精霊石を知らずに手に取ってしまったが、もしあれを持ち出してたら警備隊にしょっ引かれるところだったのか。危なかった。
「ソウ、ちょっと飛んで上から測定したいのでここで待っていてもらえますか?」
「あいよ、行ってらっしゃい」
サチを見送り適当な岩に腰掛ける。
・・・だめだ、岩の熱で尻が燃えそうになる。
しょうがないので適当にブラブラ歩く。
この中央の窪地の底は来た道より少し広めの広場になっている。
改めて回りを見回すと流砂に囲まれてて少し薄暗い。
うーん、一人で居ると若干不安になるな。早く戻ってきてほしい。
特に意味も無くうろうろしてたら、ひと際赤く輝く精霊石を見つけた。
これはもしや・・・。
「在宅中?」
そういうとボッと一瞬石から小さな火が出る。
いるのか。姿は見せてくれないようだ。残念。
サチはまだかな、あ、帰ってきた。
「お待たせしました」
「おかえり。そこに中身入りの精霊石が・・・どっかいっちゃった」
空を見上げてサチを見ていた僅かな時間でさっきを見失ってしまった。
「火の精が入った精霊石ですか?」
「うん。入ってる?って聞いたら一瞬火が出たからたぶん」
「それなら間違いないですね。火の精は滅多に姿を見せてくれませんから、反応してくれただけでもいい方ですよ」
「そうなんだ」
「普段なら手に持った時に石から火を出しますから」
「おおぅ。あぶなかった」
危うく火傷するところだった。
「見失ったのは恐らく石を微振動させて地中に埋まったからだと思いますよ」
「そんな事できるのか」
「えぇ。そうやって砂の中を対流しながら石に力を蓄えていくらしいです」
「へー。じゃあ姿見たことがある人はいないのか」
「一応目撃者は居ます。姿は下界のドラゴンの翼が無いような見た目を思い浮かべてもらえば分かりやすいかと思います」
羽のないドラゴンか。爬虫類っぽいって事かな?
「さて、用も終わりましたし、そろそろ帰りませんか?」
「うん。そうしよう。待ってる間結構暇になっちゃって」
「そうでしょうね。すみません」
「いいよ。視察も大事だから」
「ありがとうございます。では帰りましょう」
そういうと俺の腕を掴んで転移した。
はー。砂の島は暑かった。ぬるめの風呂に入りたい。
そう思って家の方に向かって数歩進んだところでサチが付いてこないことに気付く。
「どうした?」
「あの、ソウ。本日はすみませんでした」
「なにが?」
「危うく倒れるギリギリまで気付かなかった事です」
「あぁ、あれは俺の不注意だろう」
「いえ、そもそもソウが暑さに耐えようと思ったのは私が余計なことを言ったのが発端ですし」
むぅ、俺が躍起になった事を見破ってたか。
「仮ににそうだったとしても挑戦する事に決めたのは俺だし。むしろ心配かけてしまった事を反省してるよ」
「そんなことは・・・」
あぁ、俯いてしまった。
どうもこっちの世界の人は許しても納得してもらえない事が多い気がするな。
「んー・・・じゃあお互い様って事で、後はどっちが悪いかは運で決めようか」
「・・・どういうことですか?」
「とりあえず家に帰ろう。準備がいるから」
「わかりました」
腑に落ちない顔をしながらサチは俺に並び、一緒に帰宅した。
「はいこれ」
テーブルの上に一口大の団子を数個並べた皿と水を置く。
「これは?」
「餡入り団子。ただし一個だけ激辛餡が入っている」
「なっ」
作った団子は前の世界でよく見かけた運試しでやるハズレ入りの団子だ。
「これを交互に食べていく。激辛に当たった方が悪いってことで、同時に激辛の罰を受ける感じだ」
「な、なるほど。面白い事を考えますね」
ホントにね。
「もし配置が気になるなら、俺あっち向くから適当に並べ替えていいよ」
「いえ、ソウを信じます。先に頂いてもいいですか?」
お、やる気だ。
「どうぞ」
「では・・・」
サチはど真ん中に置いてあるのを選んで口にする。
なかなか思い切ったところを選ぶねぇ。
「大丈夫です。ソウの番ですよ」
「うん」
俺は逆に端を取る。・・・うん。大丈夫。
そんな感じで交互に食べる事数往復。
残りが三つになってこっちにまわってくる。
まさかここまで当たりを引かないとは・・・。
「これちょっと楽しいですね」
くそぅ、自分は難を逃れたから余裕そうな顔しやがって。
「じゃあこれ」
手に取って口に放り込む。
うん、うん・・・。
・・・。
そっと置いてある水を手にする。
「・・・ソウ?あのもしかして?」
「かっら!!」
そう言ってから直ぐに水を流し込む。
これはきつい!辛くしすぎた!
舌が焼けるように痛い!
とりあえず残ってるもう一個を口に入れて中和を試みる!
ダメだ、少ししか緩和されない。
「サチ、ちょっと念で小さい氷出して!」
「だ、ダメですっ!今集中できませんっ!」
サチはサチで抱腹絶倒してて呼吸困難気味になっている。
しょうがない、水を含んで我慢しよう。神の体なら治るのも早いはずだ。
「ちょ、ソウっ!なんて顔しているのですかっ!」
うるさい、今はそれどころじゃないんだ。変な顔してても気にするな。指差して笑うんじゃない。
「あー酷い目に遭った」
「自分で作ったものではないですか」
「そうなんだけど、分量間違えたみたいで相当きつかった」
そういいながらミルクアイスを口に含む。
笑いすぎて念が使えないというので空間収納からアイスを出してもらった。最初からそう言えばよかった。
「しかしこういう食べ方もなかなか楽しいですね」
「まぁね」
「今度農園でやりましょう」
「別にいいけど、自分もハズレを引く事を考えておけよ?」
「それはもちろんわかっています。ですがあれだけ人数が居ればそうそうハズレを引くことはないでしょう」
俺は知ってる。そういう事を言う奴ほど引くという謎の現象を。
ま、一度そういう事を体験するというのも大事だから黙っておこう。
「農園か。そういえば料理教えにいかないとな」
「そうですね。明日行きますか?」
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神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
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タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
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