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今いる世界

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「ところで今日はどういった御用向きで?」

落ち着いたところでアリスが切り出してくる。

やっと本題にいけそうだ。

「何しに来たのでしたっけ」

とぼけるサチの尻の肉をアリスには見えないようにつまんで引っ張る。

「あっちょっと。大丈夫です、ちゃんと覚えていますから」

なんでちょっとまんざらでもない顔するかな。

俺がアリス達を気にするから構ってほしいんかな。

「今日はソウに色々知ってもらおうと思って」

「詳しくお伺いしても?」

アリスがビシッとした姿勢で聞く体勢をとるのでざっくり俺の経緯を説明する。

「なるほど、それで先ほど駆け出しと仰ってたのですね」

「そゆこと。すまんが頼む」

「お任せください。優秀な者を召喚致しますので少々お待ちください」

その場で直立状態で目を閉じたと思ったらものの数分でメイドが二人入ってくる。

「お呼びでしょうか」

二人ともさっき名付けた子達だ。

確か空色の服がシンディで、濃い紫の服がユーミだったはず。

「シンディさん、ユーミさん。本日の業務は全て別の者に任せてこちらの手伝いをしてください」

よし、合ってた。

「了解です。下の者に指示します」

二人は目を閉じてさっきアリスが二人を呼んだ時と同じように静止する。

サチみたいに念じると意思疎通ができるのかな。いいな、便利そうだ。

「完了。それでアリスさん、何をすれば?」

シンディが先に目を開けてアリスに聞く。クールな感じするな。

「こちらも終わりました、ふぅ」

ユーミも目を開ける。こっちは頑張り屋って感じかな。

「はい。主様の質問に答えるのが私達の今日の仕事です」

「すまんね」

通常業務に割り込んでしまったようで悪い気がしてくる。

「いえ、旦那様のお役にたてるのであれば」

「が、頑張ります!」

ホント見た目が余り変わらないのにコントラストあるな。

「本当は私が全部教えてもいいのですが、ソウは異世界人なので情報集積が得意な貴女達なら正確性が増すかと思いまして」

「なるほど」

サチの言葉にメイドと俺が頷く。

「なんでソウまで一緒に頷いているのですか」

「いや、言われてみればサチでも説明できるのに何でここに来たのかなって思ってて」

「誰でも間違いをしますし、解釈の違いも出来れば避けたいですから」

あー、あの爺さん見てればそういう考えにもなるわな。

「それでは主様、よろしくお願いします」

「うん、よろしく」

正面に机を挟んでメイドが三人。

隣にはサチ。

何かスパルタ家庭教師が付いた気分になってきた。



勉強方法は質疑応答形式。

俺が知りたい事を聞くと四人のうち誰かが答えてくれる。

必要があれば画像を空間投影もしてくれるようだ。ハイテク。

「じゃあ世界についてからかな」

本当に色々わからんからな、とりあえず今生活している空間について知りたいんだよな。

「しょ、少々お待ちください」

ん?メイド三人が離れてコソコソ相談し始めた。

「どどど、どうしましょう」

「アリスさん、これは我々を試しているのではないでしょうか」

「二人とも落ち着いて下さい」

なんだ?どうした?

「はぁ・・・。ソウ、質問の仕方が意地悪です」

「え?」

「そんな抽象的な質問をされても困るのが普通です」

「あ!あぁ、そうか。すまんすまん、三人とも戻って戻って」

手招きすると申し訳なさそうにメイドたちが戻る。

「質問の仕方が悪かった。俺が聞きたいのは今居るこの世界、なんだっけ、なんとか空間」

「上位天使の生活空間」

「それ。概要でいいから教えてくれ。あと上位天使ってのも」

「かしこまりました」

お、これなら大丈夫そうだな。

メイドが正面から退くと下界を見るときと似たような空間投影パネルが出現する。

「では説明します」

「うん」

画面の下部に地面の上に小さい建物や山や森、中部に雲と雲の上に建ってる建物、そして上部に雲と浮遊島。

ただ、中部と上部の間に二本線が入ってて上側が点線になっている。

「俗に下界と呼んでいる部分がこちらになります」

シンディが指先からビームポインタのような光を出して画面の下部と中部を円で囲む。

「下の部分は地上なのはわかるが中央のはなんだ?」

「下界の天界です」

「下界の天界?」

「はい。下界には様々な種族が居ますがその中に天使という種族がいます」

「うん」

「その天使種が生活しているのがこの部分の天界と呼ばれる部分になります」

「う、うん」

ややこしくなってきた。

「今旦那様がいらっしゃるのはこちらになります」

今度は画面上部を円で囲む。

「その二本線は?」

「下界との境界です。ここと下界では次元が違うのです」

「次元・・・」

わけわかんなくなってきた。

「簡単に別世界って思えばいいと思います!」

ユーミがフォローしてくれる。なるほど。

「主様ならご存知だと思いますが、下界が下位、こちらが上位です」

うん、だろうな。時間止めたりしちゃってるもんな。

「ん?でも天使はこっちもいるよね。どうやって行き来してんだ?」

「いえ、していません」

「ん?どういうこと?」

「下界の天使種はこちらで下位天使と呼ばれてます」

「サチは上位?」

「そうです。一緒の天使種と考えない方がいいですよ。嫌悪する人もいるので」

当たり前と言わんばかりの顔をされた。

「わかった、肝に銘じておこう」

怒られそうだし。

「まとめるとだ。俺の今居る空間は俺が神として見ている下界とは別次元にあって、その中にそれぞれ天使がいるってことでいいのか?」

「はい。その認識であっています」

「俺が下界を見てる場所もその上の生活空間にあるのか?」

「いえ、ソウの仕事場はその二重線の間、そこです、ここにあると思ってください」

サチが指差すとそれをシンディが察して二重線の間に光を当ててくれる。

「この上が点線になってるのは?」

「ここには上位天使側の一部の方だけ行き来が可能という意味です。残念ながら私達天機人はいけません」

ユーミが肩を落としながら言う。

「そんな事はありませんよ」

「え?」

「神様の承認があれば可能です」

「そうなのですか!?」

サチの言葉にユーミが食いつく。

アリスやシンディは無反応だな。

「ソウに頼めば行けるようになると思いますが、オススメはしません。無が広がる空間なので」

「あー確かに何もないな」

集中することはできるが好んで居たいとは思わないな。今居る空間の方が好きだ。

「そうなのですか。アリスさんが止める理由がわかりました」

「でしょう。私達の存在意義がありませんからね」

心からメイドなんだな、彼女達は。

しかし、うーん、将来的に俺とサチだけじゃ下界管理厳しい気もするんだよな。

その時はその時で考えるか。

「話の流れついでですまんが天機人についても軽く教えてくれるか?」

「私達ですか?」

「うん、折角だし」

「かしこまりました。では、少し休憩を入れてからにしましょう」

こういうとき茶は出るが茶菓子とか出ないのがこの世界の残念なところだな。

どうにかしたいところだ。
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