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第1章 この出会いに感謝する。
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しおりを挟む年だけに無駄に重ねてきた幹部たちとの会議を終えて社長室に戻ると、そこには小野がソファに座って待っていた。挨拶する事もなく隣を通り過ぎてデスクに向かった。
「___これが例の?」
「えぇ、そうです。これで僕も犯罪者の一員ですかね、ははははっ」
小野を無視してデスクに乗った新しいモニターの電源を入れると、四画面に割れたどこかの映像が映し出される。どこかというのはワザとらしいか。己のしている猟奇的な行動には自分でも驚いているのだ。こんな一面が私にもあるとはな・・・。
「ここが事務カウンターです。で、こっちが休憩室。その下が店内を数秒ごとに切り替えたもので、もちろん気になる場所に焦点を当てる事も出来ます。その隣が・・・、よく行くコンビニの前の監視カメラを店長だまくらかして覗いてるやつっす。なかなかスリリングでしたよ」
「__どうせ楽しんでやったのだろう?」
「ははっ、バレました? 大谷さんは、いつも楽しいお仕事をくれて願ったりかなったりです」
モニターに視線を向けると、小野のひょろこい指が一か所を指差した。何も言われなくてもわかる、目的の人物だった。後ろで一つにくくられた髪の毛は、動くたびに左右に揺れている。斜め上からの視点で少し遠いため、表情までは伺い見る事は出来ない。
「これはアップに出来るのか?」
「えぇ、多少画質は荒くなりますが可能です。___いやぁ、愉快ですな。こんな大谷さんを見る機会が訪れるとは「もう用は済んだ。長居は無用」・・・冷たいお方だ。では僕は失礼しますね」
小野はくくっとねずみ小僧の様に笑ながら去っていった。
一人になった室内で、貴臣は一心にモニターを見つめていた。あれから二か月が過ぎた。当初はこんな事までする予定なんて無かった。何をしているんだ。呆れかえりながらも執着している自分が、本当は何をしたいのかわからなくなっていた。
目的は再婚の阻止。それは変わらないはずなのに、この女を見つめる自分の視線が変わってしまっていた。得体のしれない感情はモヤモヤと心臓を包み込み、思考を鈍らせていく。平常でない頭は不可解な思想を生み、時間をかけて成長している。
この執着心は何だ。気になる、この女が気になって仕方がない。
貴臣が誰に相談する事も無く、己の思うままに動くのはもう少し先の事。
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