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第六章 グッバイ、旦那様。

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 私は今、田村さんといる。

「そっか。白石はこれでよかったの?」

「はい。いいんです」

「今更気付くんです。匠くんが私を紹介するときに、妻だとは言ってくれていなかったことに。私、匠くんの隣で心地良い夢を見ていただけだったんだなって」

 匠くんとの事を話せる相手は田村さんしかいないし、やっぱり心配かけた分ちゃんと報告しなきゃいけないと思ったから。だから、全てを打ち明けた。この選択が正しかったかなんてわからないけれど、正しかったと思える人生にしてみせる。匠くんとの日々は無駄ではなかったと、彼に出会えたからこそ知れた世界に私はいい女になって恩返しをしなければならないんだ。

「社長には俺から話しておくよ。たぶん直ぐに戻ってこいって言われると思うよ」

「そうですかね? 私、秒で売られたんですよ?」

「ああ、そうだったな。ははっ」

 軽口を言えるようにもなっているし、ちゃんと笑えている。

「大丈夫」

「___全然大丈夫じゃないぞ。心の声、漏れてる」

「あっ、すいません。妄想癖が重症化したみたいで。働き始めるまでには治しておきます」

「そうだな。カツラの人にカツラじゃんって言ったら、今度こそクビな」

「___不安過ぎて了承出来ません」

 田村さんのくしゃって笑う顔が好き。こっちまで笑顔になる。私、大丈夫。

「田村さん。私、お手洗い行ってきます」

「ああ」

 今。田村さんが困ったように笑ったような気がしたけど・・・気のせいか。そのまま振り返ることなく目的地へと向かった。



「変な顔で笑いやがって。・・・大丈夫なやつは、大丈夫なんて何度も唱えねえよ」
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