Ｓランクの男は如何でしょうか？【R18】※番外編更新中

第７章

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「あの人はどうかしている」

　あの後も口論をしていた様で、車内でも司兄は怒りを露わにしていた。僕は口内に残った血の味と唇の感触に、何故取り乱してしまったのかと後悔していた。

「やっぱり兄さんは俺の事が嫌いなんだ」

「＿＿＿どうして？」

「そんな事わかるだろう？　再婚相手の連れ子の俺に兄さんは笑いかけた事は一度も無い。新しいお母さんの事だって、うちの財産が目当てだとか・・・、いや、あれだ」

「あれ？」


「そうだ。俺に、離婚のときに言ったんだ。自分も十歳のときに母親を亡くしたって。きっと、俺たちにも母親のいない悲しみを味会わせたいんだ。もう、そんな気持ち、ずっと味わってるっていうのに・・・」


　僕は何も言わなかった。

　確信がなかったから。でも、違うという確信はあった。貴兄は僕らにそんな気持ちをさせたいわけじゃない。何か、理由があるんだと。司兄は気付いていないけど、貴兄は優しい。でもその誤解を解かないのは、貴兄を独り占めしたかった僕の醜い心だった。



「司兄は賛成なんだよね？」

「もちろんそうだ。お母さんが出来るとか・・・、そういう事ではなく父さんに幸せになって欲しいんだ。それに＿＿＿兄さんがその人・・・にかまけて居ると泣く人がいるから」

　司兄の瞳には何が映っているのかなんて、司兄を知る人が見れば一瞬でわかる。

　盲目になっている司兄を目覚めさせるお姫様が早く現れますように。


「じゃあ、司兄はとことん邪魔をするつもり？」

「いや・・・、何も言わないという事だけ約束した」

「それって僕と同じって事？」


「兄さんは何でもやりかねない顔をしていた。もしかすると、その、沙也加さんまで傷つけてしまうかもしれない。だから、余計なことは言わないけど、俺はやりたいようにやらせてもらうと言った」

「貴兄は？」



「＿＿＿好きにしろと」

　つまり司兄は敵じゃない、ということか。司兄は悔しそうな表情をしていた。それは今回の事に対する悔しさなのか、藤本さんの事なのかわからなかった。








「じゃあ、始めから匠くんも全てを知った上で私と・・・」

「知っていたけど、僕はありのままでさや姉と一緒にいたよ？一緒に遊んだ事も、３人で寝た事も何もかも、大切な思い出だよ」


　見上げてくる沙也加の瞳は澄んで綺麗だった。こんなに好きになる事は大きな誤算だった。